ロボカップ世界大会2013オランダ遠征報告
-高き目標に向かって勇気をもって挑んでいこう!-
去る6月26日(水)〜30日(日)、世界的な電気メーカー・フィリップ社の創業者の出身地であり、オランダ南部の工業都市アイントホーフェンで、RoboCup2013世界大会が開催されました。私たちを迎えたのは、広がる田園牧畜風景と25年ぶりの寒波。時折雨が降る寒い曇天の毎日でした。
当アカデミーからは、レスキューAプライマリ「neos(ネオス)」、レスキューBセカンダリ「Amalgamζ(アマルガムゼータ)」、レスキューB「Inertia(イナーシャ)」、ダンス・プライマリ「i-Wedding」の4チームが参加。オランダ遠征ツアーには、NPO法人科学技術教育研究会を一緒に運営しているエレファントアリーのダンス・プライマリ「The Samurai Spirit(居合)」と、都立産技高専サッカーオープンリーグ「Gcraud(ジークラウド)」、Co-spaceレスキュー「Ryuu(リュー)」が加わり、ご家族とスタッフを含め36名の大遠征隊になりました。
初日は受付を済ませると、インタビューと調整。インタビューは英語で行われます。ダンスチームには日本人のジュニアOBが審査員に入っていたのですが、レスキューは通訳がつかないことになりました。ここで、ロボットやプログラムの開発が自分たちの手によるものであることを証明できなければ最悪の場合「失格となります。
2日目からいよいよ本番。ダンスは2日目と3日目にそれぞれ1回予選の舞台演技があります。i-Weddingは1回目失敗、2回目では最後まで演技をすることができ、TOP10入りし決勝進出を果たしました。4日目の決勝ではうまく演技をすることができませんでしたが、有効なセンサーの使用で受賞することができました。
レスキューは2〜4日目の3日間、毎日3回、全9ラウンドの予選競技が行われます。そのすべてが異なったフィールドレイアウトで行われます。しかも、調整に使用できるのは練習用フィールドのみで本番のフィールドは使えません。日を追うごとに難易度は上がっていきます。銀色の缶を被災者に見立てて救済するレスキューAでは、2012年ルールで行う5月GWジャパンオープンまでの国内大会と、2013年ルールで行われる世界大会とではルールが大きく異なる上、昨年より難しいコースだったので、どのチームも苦戦したようです。 Amalgamζはあともう一歩で満点になるラウンドもありましたが、neosと共に8位という結果になりました。ただ、大きなルール改訂で、皆新たなチャレンジ精神を刺激されたようです。一方、迷路を進みながら熱源を被災者と見立てて発見していくレスキューBで、世界大会経験が豊富なInertiaは安定した成績を獲得していき、準優勝に輝きました。
世界大会では国内大会と違って、5日目最終日には他国のチームと組む「スーパーチーム」方式の競技が用意されています。ダンスは審査員の判断によって2~3チームで編成され、i-Weddingは席が隣で仲良くなったオーストリアのチームと、そして来年世界大会が行われるブラジルのチームと共に「i-Loboticajam」というチームを結成しました。英語での意思疎通は難しかったのですが、それでも身振り手振りを交え必死にコミュニケーションを取ろうとしていました。それでも、このチームはテクニカル・ワールド・チャンピオンという賞を獲得しBest3に入ることができました。
レスキューのスーパーチームは2チーム編成。前々日の夕方にスーパーチームのために特別に用意されたルールと、抽選によるチームの組み合わせが発表されました。今回のテーマは、2台のロボットが何らかの通信手段を使って、一方のロボットが調査結果を伝え、もう一方のロボットがその情報に基づいて行動すること。neosはスウェーデンのチームと、Amalgamζはメキシコチーム、Inertiaはブラジルチームと組みました。neosは、なかなかロボットの動きが相手チームとかみ合わず10位。Amalgamζはパーフェクトを出したものの、僅かなタイム差で惜しくも準優勝。Inertiaは、安定した実力と巧みな戦略により準優勝。入賞した2チームは高校生・大学生ということもあって、英語でのコミュニケーションもかなり取れていたようです。
毎日朝早くから夜遅くまで、疾風怒濤のごとく過ぎ去った5日間が終わり、翌日の帰国日には半日の僅かな時間で、慌ただしい観光を楽しみました。アムステルダムの街を巡る運河クルージングを楽しみ、レストランで昼食を取り、国立近代美術館でゴッホやフェルメール、レンブラントの実物の絵画を鑑賞しました。皆の顔には疲れと安堵の色が入り混じっていたように思います。
ほとんどサッカーの試合を見る時間はなかったのですが、大きく競技運営方式が変わりました。これまではスーパーチーム方式が中心だったのですが、個別チームの試合が1日1~2試合、スーパーチームの試合が1日1試合、3日間予選リーグを行って決勝トーナメントを行う形式になりました。試合数は昨年と比べかなり減ったので、多少不満の声も上がったようです。しかし、特筆すべきはスーパーチームの運営です。今までの中で一番大きいサッカーBフィールドの4倍もの大きさのある、とてつもなく大きなフィールドで、なんと5台対5台(これまでは2台対2台)で戦うのです!ロボカップジュニア史上における従来の常識を覆すようなエポックメイキングな出来事です。これまでには考えられなかった環境でとても苦労していたようですが、参加者たちは大盛り上がり。皆心から楽しんだようです。
ロボカップジュアは世界の教育学者がデザインする唯一の世界的なジュニア向けロボットコンテスト。今回の世界大会で最も強く感じたことは、特にサッカーとレスキューでは企画者の世代交代が始まったのか、実に斬新なアイデアに満ち、ロボカップジュニアが本来向かうべき方向に近づこうとする努力を正しく示したのではないか、ということです。一言で言えば、理念の高さを感じました。しかし一方、ロボカップジュニアが「ペンシル型の発展形態(裾野が広がらずレベルだけが高くなっていく発展の仕方)」になっているのではないかという危惧を感じることも否定はできませんが。
参加した生徒たちは皆無事に帰国することができました。日本で彼らを待ち受けていたのは定期試験(試験期間とぶつかった生徒は追試)。現実は厳しいものです。しかし、その厳しさを十分承知しつつも、自らの挑戦に果敢に全身全霊で挑んでいく生徒たちを私は誇りに思っています。ロボットに向かう情熱と同じだけの情熱を勉学にも注ぎ込んでくれていると信じています。そして、選ばれた数少ない日本代表の一人として味わうことができたこの貴重な体験を人生の糧として、大きく飛躍してくれることを期待しています。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
【ロボカップ世界大会2013オランダ 結果報告】
■レスキューチャレンジ
<Aセカンダリ>
Amalgam ζ (川端Y・小林A) 個別競技:第8位 スーパーチーム:準優勝
<Aプライマリ>
neos (浜辺Y・新美S・鈴木Y) 個別競技:第8位 スーパーチーム第10位
<レスキューB>
Inertia (鈴木S・持田S) 個別競技:準優勝 スーパーチーム準優勝
■ダンスチャレンジ
<プライマリ> i-wedding (宮下M・飯山T・戸井田K・末村E・石崎R・高橋R)
ファイナル進出・カテゴリー「センサー賞」 スーパーチームTOP3
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