2022年3月28日月曜日

【第168回】加熱する中学受験

~ コロナ禍が浮き彫りにした公私の差? ~

 3回にわたってご紹介した練馬区地域おこしプロジェクトですが、残念ながら最終選考で選に漏れてしまいました。おそらくその理由は、国際的ロボットコンテストは練馬区でしかできないことだろうか?ということだと思います。確かにどこでも開催できます。新宿区でも文京区でも渋谷区でもできるでしょう。しかし、練馬区で開催しない理由も考えられないと思っています。  現在のオミクロン株による第6波では児童の感染者も増え、幼稚園・保育園・学校が学級閉鎖や学年閉鎖など、その影響を受けています。練馬区の公立学校では、GIGAスクール構想によって生徒全員にパソコンやタブレットなどの端末が行き渡ってい ますが、オンライン授業は行わない、端末は勝手に使ってはならず学校と家庭との連絡用としてのみ、といった話が生徒から聞かれます。この現状に一石を投じ、改革する機会を失ったのはとても残念なことです。一方、私立学校ではオンライン授業への対応が速く、2020年の段階で、双方向(先生と生徒がやり取りできる)型オンライン授業については、公立中学が10%に対して私立中学は72%。動画配信などを加えたオンライン学習となると、私立中では90%以上が実施していました。

科学教育については、海城中高がサイエンスセンターを新設し校舎自体を教材とする試みを始め、約90年前から太陽の黒 点観測を続けるなどサイエンス教育で知られる武蔵中高(写真 は同校にある天体望遠鏡)は新校舎「理科・特別教室棟」を新築、創立150周年の開成中高も7月に完成した高校新校舎A棟 と23年に完成予定のB棟をつなぎ最上階を理科専用フロアに、 桜蔭学園も創立100周年事業として、23年度までに新設する校 舎に理科専用フロアやデジタル機器を活用できるコーナーを設置、芝浦工大付は来年の100周年を前に「STEAM教育」を前面 に打ち出す校舎を完成――と、サイエンス教育に力を注ぎ始めています。この波は、山脇学園・恵泉女学園・富士見中高・昭和女子大付・普連土学園・女子美術大付といった首都圏の伝統ある私立女子中高にも見られ、 理科探究やデータサイエンス教育 の重視に乗りだし、人気を集めてい るそうです。「文理問わずサイエン ティストの力を」と改革に取り組む女 性校長たちも出てきているとのこと。 

武蔵高等学校中学校にある天体望遠鏡

これらの背景もあり、2022年度都圏中学入試は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けたにもかかわらず、受験者数は6 万2,400人と前年度より700人増加、2009年につぐ過去2番目の高水準となったとのこと。また、特長的な教育活動等、偏差 値や大学合格実績という数字に表れる成果以外の視点で学 校を選択するという行動様式が近年定着してきているようです。入試問題も、知識の量を問うだけでなく、麻布中では難民問題、開成中はジェンダー問題、女子学院では表現の自由と人権問題など、公立の学校であれば「偏向教育」と攻撃されかね ない社会問題を批判的に考える力を問う問題が見られるよう になってきました。また、首都圏ではプログラミング入試を実施している学校も現れています。

民間のみならず学校教育でも私立を中心にロボット教育・プ ログラミング教育が浸透しつつある昨今ですが、入試のための学習、教科の学習に堕すことなく、ロボット教育・プログラミング 教育が持つ力を発揮できる教育の在り方を死守しなければな らないと思っております。それは、実証的な精神に基づいて、「 推論・実験・検証」という正しい学びのサイクルを繰り返すこと によって、論理的思考力や正しい洞察力、批判的思考、問題 解決力を自らの体験として獲得していく教育です。トゥルースには、3つのコースがありますが、「遊びと学びの融合」をテーマに楽しく実践できるよう綿密なカリキュラムを提供しています 。中学・高校・大学と進んでいく中で、大きな財産となることを期待しています。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳