2013年5月29日水曜日

トゥルースの視線【78回】

「リケジョ(理系女子)」の時代到来?③
-なぜリケジョは少数派なのか?(その2)-


日本の理科教育現場において男女でどのような違いがあるのでしょうか?

小学校から中学1年までの理科実験で「実験で中心的役割をした」と答えた男子は39.9%、女子は20.5%というアンケート結果があります(2004)
また、中学23年生の理科の授業中の行動観察によると、男女混合グループの実験では男子が中心的役割を担い女子は補助的な役割を担っているが、女子だけのグループの場合には女子は積極的である(1997)。生徒自らが課題を設定し実験を計画し遂行する理科における問題解決学習は、生徒の学習意欲を高める効果があるが、男子の場合は挑戦意欲の高まりが顕著なのに対し、女子はグループで協力し学び合うときに学習意欲が高まる (2006)

どうも男女では学ぶモチベーションの源が異なるようです。

では、日常生活での科学的関心や体験に違いがあるのでしょうか?

ノコギリやドライバーを使うなどの工学につながる経験がある女子は男子に比べて少なく、理系志向に影響があるとされている「外遊び」が好きだった女子も少ない(2004)。日常生活の中でのさまざまな科学的な体験の有無をスコア化した結果、「動植物に関する体験」は女子が高かったが、「自然体験」「生活体験」「日常体験」は男子の得点の方が高かった(2004)

河野銀子氏は、こういった体験の乏しさは、女子には危険な行為をさせたくないという周囲の大人の「配慮」によるものと推察されるが、実験器具の扱いに抵抗を感じ、実験で補助的な役割に甘んじ、こうした経験の連鎖が理科に対する消極的態度として習慣化・身体化していくのでないか、と指摘しています。

また、「母親は、将来自分が科学や技術に関わる仕事についたら喜ぶと思う」という男子は28.9%、女子15.8%。父親からの同様の期待に対して、男子31.4%、女子20.7%(2003)。将来子どもが科学技術職に就くことに対する親の期待度にも差があるようです。

しかし、興味深い調査結果もあります。「冷蔵庫やクーラーはなぜ冷えるのか」「CDの音がきこえるしくみ」などの身のまわりの自然や科学に関する事象を16項目挙げ、「詳しく知りたいこと」を選択させた結果、男女差がなかった(2004) 。女子は学校の理科への興味・関心が男子より低いのだが、日常的な科学的事象に対する関心は十分持っているということになります。

これらのことから、女子が理科を好きになり、リケジョに育つにはどうしたらいいかのヒントが得られるような気がします。

・幼いころから道具や工具を使わせ、自然活動などに積極的に参加させる
・女子が安心して学びやすい環境をつくる
・女子が持っている日常に密着した科学的関心を生かす
・協力型の学び合う場をつくる

当アカデミーでも、その方法論を模索し確立していきたいと思っております。ご期待下さい。

【参考文献】
『女子高校生の「文」「理」選択の実態と課題』河野銀子(山形大学地域教育文化学部准教授)


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳