2010年5月1日土曜日

【第52回】数学的リテラシー②


― 世界が求める「数学的リテラシー」とは ―

数学教育の分野で「数学的リテラシー」という用語が国際的に本格的な議論の対象になったのは、OECDによるPISA「生徒の学習到達度国際調査」(視線第12回・23回・2008年ご挨拶参照)で、この概念が用いられてからです。調査問題の斬新さに加え、国際的指標を通して浮き彫りになった生徒の実態が、新しい時代の数学教育のあるべき姿を改めて問い直す機会を与えました。

「思慮深く、身の回りの諸問題に関心をもった建設的な市民」として生活するために必要な能力は何か?新しい時代に必要なのは、学校のなかで閉じた算数・数学ではなく、社会と将来につながりがある、世界にひらかれた算数・数学なのです。実生活の状況を含む多様な問題場面で、生徒が情報を的確に読みとって、それを数学的に解釈・表現し、判断を下す力を評価することに主眼がおかれています。ですから、生徒が身につけている「生きてはたらく知識や技能」を多元的に評価していることがPISAの特徴になります。

その際カギとなるのが、『数学化(mathmatisatin)の過程』です。
①現実性に根ざした問題から始める。
②数学的概念によってその問題を組織し、問題に関連する数学を同定する。
③仮定をおいたり一般化・形式化したりする過程を通して、徐々に問題の現実性を取り除いていく。このことによって状況の数学的特徴づけが進み、現実世界の問題を、状況を忠実に数学の問題に変換する。
④数学の問題を解決する。
⑤現実的状況から見て、数学的な解の限界を特定することを含め、その解の意味を考える
(OECD,2003)
これまでの伝統的な数学教育は、④のみに焦点を当てて行われてきたと言えます。

また、数学化の過程に用いられる能力は、以下のように挙げられています。
①思考と推論
②論証
③コミュニケーション
④モデル化
⑤問題設定と問題解決
⑥表象
⑦記号的・形式的・技術的な言語や操作の使用
⑧道具や補助器具の使用
(OECD,2003)

では、「数学的リテラシー」を育てるためには、どのような教育が必要なのでしょうか?
次回ご紹介したいと存じます。


To be continue・・・