2019年2月18日月曜日

【第137回】世界の教育をリードする教育展示会「BETT」見聞録①

 ~ロボット教材百花繚乱~

【第137回】トゥルースの視線

まだ午後3時を回ったばかりなのに、辺りは既に薄暗くなりかけ、どんよりとしたヒースロー空港に降り立つと小雪が降っていました。ロンドン市街に向かう電車は数少ない寡黙な乗客を乗せて、次第に強さを増してくる雪の中を時折単調な車内アナウンスを流しながら走っていきます。すっかり暗くなってやっとたどり着いたロンドン塔近くのホテルの窓からは、眼下にライトアップされたブリッジタワーが見えます。翌日から毎年ロンドンで開催される世界最大規模の教育ICT展示会「BETT」(British Educational Training and Technology Show)が始まります。


ExCeL London

今年は1/23~26に例年通りExCeL London(エクセル展覧会センター)で開催されました。新しい教材との出会いを求め、これからの教育の潮流を直接見たいという思いから、前回訪れた2010年以来9年ぶりの参加。まだ正式な数字は発表されていませんが、今年は850社を超えるリーディングカンパニー、100社以上のスタートアップカンパニーが参加し、2017年には34,000人の来場者があったとのこと。ExCeL Londonは巨大な展示会場です。BETTはその左右に分かれた片側10ホールをすべて使用し、ホールの中も外の幅広い廊下も教育関係者で溢れんばかりの賑わいです。ヨーロッパやアメリカ、アフリカ、そしてアジアからも来場し、日本人の方も何名かいらっしゃいました。来場者の中には、先生に引率された地元小学校の生徒たちもグループでいくつか見られ、いろいろな教材を実際に使って興じていました。先生方はその姿を見て、教材の選定や活用方法について思いを巡らせているようです。

MicrosoftやGoogle、DELL、Lenovoなどの世界的なIT企業に加えて富士通やエプソンなど日本の企業も大きなブースを構え、教育業界に本腰を入れている状況がまず目に飛び込みます。また、ロシアやブラジルなど国を挙げて出展しているブースもありました。教材では、アジアの国では日本の企業は少なく、中国や韓国、台湾の企業が多い印象でした。

今回の特徴としてはまず、英国での開催ということもあり、Truthのダヴィンチ・ジュニアⅢのクラスでも使用し春休みサイエンス講座でも行う「micro:bit(マイクロビット)」が目立ったことです。micro:bitはBBCがSTEM教育のために開発し、中学1年生全員に100万台無料配布した、プログラムができるマイコンボード(超小型コンピュータ)です。micro:bitに接続できるモジュールやMicrosoftとBBCが共同開発しているカリキュラム、自社製品をmicro:bitと組み合わせた教材など様々な形で展示やデモが行われていました。電子工作・プログラミングだけではなく、Truthのジュニア・インベンターで行っているように、データロギング(実験データの収集)を行ったり、さらにそのデータを活用して何かを制御したりする活動も紹介されていました。

また、ロボット教材が百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の様相を呈していました。従来のロボットの類似品も当然多くありましたが、特に、Truthの夏休みサイエンス講座で使った「Bee Bot」のように、パソコンやタブレットを使わない、幼児から児童向きの新教材が種類を増やしたようです。カード上のブロックを板の上に並べて、それをカメラで読み取り、そのプログラムをロボットに無線で送って動かすものや、Scratchに似たコマンドブロックをScratchと同じように机の上に置き、直接ロボットに送って動かすもの、「MESH」のようにタブレットで直感的にプログラミングできるアプリを備えたものなど多様性を増しています。なんと、Bee Botも障害物を認識したり、お互いに通信できたりするなど進化していました。汎用性のある教材を求めるよりも、対象年齢や学習目的を明確にして教材を求める時代です。これだけ多様な中から選ぶとなると、サンプルを輸入してその長所や短所を比較検討する必要性があるようです。

トゥルースアカデミー代表 中島晃芳

トゥルースアカデミー
http://truth-academy.co.jp/