2005年12月1日木曜日

【第13回】人間は「できる」を超えて学ぶ


-レオナルド・ダ・ヴィンチ展を見て-

去る9月15日~11月13日に六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで、「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が行われていました。人類史上最も偉大な天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)。その真理を追い求めた知の巨人が、研究の集大成として遺した直筆ノート「レスター手稿」が日本で初めて公開され、多くの反響を呼びました。

レスター手稿はダ・ヴィンチ晩年の手稿で、彼が生涯をかけて取り組んだ様々な科学的考察の集大成としてまとめられた極めて貴重な研究ノートです。マイクロソフト社会長ビル・ゲイツ氏が現在の所有者。500年前の最先端メディアである「紙」に、月の満ち欠けや天体の運動などの天文学、水の流動体学や治水などの水力学、そして地殻変動や地球の構造についての地球科学などの考察が精密なスケッチと共に、実に細かい文字、しかも「鏡面文字」でぎっしり書き込まれています。鏡面文字とは、鏡に映さないと読めないという裏返しの文字。なぜダ・ヴィンチが鏡面文字を書いたは未だ謎で、解読防止のためとか左利きだったからなどの説があります。
このレスター手稿、特に数多くの水流のスケッチなど=右写真=を見ていると、『規則性・法則性に対する人間の飽くなき追求心』を強烈に感じました。ダ・ヴィンチがいかに傑出した天才であれ、これは人間誰もが持っている欲求、人間の本能として脳に仕組まれたものではないか、と思わざるを得ません。
今夏行った「ROBOLABサマーキャンプ2005」では、夜の冒険でセミの羽化を観察し、その美しさ、自然の神秘さに驚いていました。その際、大きな蜘蛛を気持ち悪がっていた子供達が、夜、暗い中にライトで照らし出された大きな蜘蛛の巣が規則的な幾何学模様を描いているのを発見し、誰もが「あっ、きれいだ!!」と感嘆の声を漏らし、しばらくその美しさに見入っていました。どうやら人間は、黄金比(1:1.618)に代表されるように、ある一定の規則性や法則性を美しいと感じ、それを現実の混沌の中から見出そうとする、ある種の脳の傾向があるようです。 認知学習論においても、人間は自分及び自分を取り巻く世界について整合性を理解したいという基本的な欲求を持つ存在と捉え、・環境内に規則性を見出そうとする・新しく入ってくる情報を既有の知識に照らして解釈する・新しい情報が既有の知識と整合性を持つかを常にチェックする・抽出した知識を類似の別の場面に積極的に適用する、という脳の働きを学習に生かし、知的好奇心や内発的な興味を刺激することの必要性を説いています。

当アカデミーの根幹であるコンストラクショニズムという教育理論、ハンズオン・ラーニング、オープンエンド・アプローチという教育手法は、このような子供たちの自発的・主体的な学びを実現する強力な武器なのです。 子供は単に事実を発見したり問題を解決することに留ま らず、『理論を作る』ことによって世界がどのように機能しているかを発見しようとする存在である。(カーミロフ・スミス 1988)


To be continue・・・