2021年6月8日火曜日

【第160回】宇宙のロマン ~ 白熱化する火星探査レース ~

 

~ 白熱化する火星探査レース ~

 

去る5/26の夜8時過ぎ、夜空を見上げた人は多かったのではないでしょうか?月面の全体に地球の影が落ちる「皆既月食」と、今年で地球に最も近く大きな満月となる「スーパームーン」とが重なる珍しい機会で、日本では24年ぶり。しかし、東京の空は曇って残念ながら見られませんでした。6/11、日本では見られませんでしたが、日の出と日食が重なり、三日月のように欠けた太陽が水平線に出現したのを北半球では見られたところもありました。5/26、観測史上最古となる124億年前の渦巻き構造を持つ銀河を発見したことを国立天文台などの研究グループが発表したと報じられました。

 
欠けた太陽の日の出

宇宙にロマンを感じる出来事は、天体ショーや新発見ばかりではありません。宇宙に行くことにもロマンを感じます。国際宇宙ステーション(ISS)で5カ月半の滞在を終えた野口聡一さんら4人の飛行士を乗せたスペースX社の宇宙船「クルードラゴン」が5/2地球に無事帰還しました。これに先立ち4/28には星出彰彦さんが日本人2人目のISS船長に就任。ロシアの宇宙機関ロスコスモスは5/13、ZOZOの創業者・前澤友作氏が12/8にソユーズ宇宙船でISSに出発する予定だと発表。アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏は6/7、自らが創業した宇宙開発企業ブルーオリジン初の有人宇宙船「ニューシェパード」に搭乗して7/20に宇宙旅行に出発する計画を発表し、弟のマーク・ベゾス氏も同乗し、5歳からの夢を叶えると言います。

そのような中、火星探査レースが過熱化しています。火星探査レースは1960年代からスタート。2004年に降り立って火星表面を移動しながら探査活動を始めた米国の「スピリット」と「オポチュニティ」というローバー(探査機)はインパクトがあり、当時教室でもレゴのロボットを使った「火星探査ミッション」という活動を行いました。その後、2007年に「フェニックス」、2012年の「キュリオシティ」が着陸し、火星の生命の痕跡や可能性の追求を続けています。

そして、2020年夏には、火星探査機が3機、打ち上げられました。NASAの「マーズ2020」と、アラブ首長国連邦(UAE)の「HOPE」と、中国の「天問1号」 です。マーズ2020は、今年2月に「パーサヴィアランス」ローバーを着陸させました。これには火星初のヘリコプターとなる「インジェニュイティ」が搭載されており、「パーサヴィアランス」が中継するコマンドを受信して自律飛行を行います。日本もJAXAの研究グループが火星探査用ドローンを設計し、2030年代に火星探査での実用化を目指すとのこと。NASA火星ヘリコプターの3倍以上の距離を飛べるそうです。中国「天問1号」は火星を回る軌道に探査機を投入し、火星に着陸させ、さらに今後、探査車で地表を走らせるという三つのミッションに一気に挑むとのこと。NASAですら大気圏突入から着陸までを「恐怖の7分間」と表現していますので、その技術の高さに驚かされます。UAE「HOPE」は昨年7月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた三菱重工業のH2Aロケット42号機に積載されて軌道に投入された後、火星に向かいました。UAEは100年後の2117年までに、火星上に人類が居住できる最初の都市を建設し、国民の60万人を移住させるという壮大な計画を掲げています。日本の計画としては、「火星衛星探査ミッション」があり、2024年9月打ち上げ、2025年に火星周回軌道へ投入して火星衛星の擬周回軌道に入り、火星の月フォボスに於いてサンプルを採取、2029年9月に地球帰還する予定です。また、インドの2機目となる火星探査機MOM-2も2022年に計画されています。


 
パーサヴィアランス
 
インジェニュイティ

宇宙にロマンを感じる一方、軍事利用や鉱物などの資源開発、宇宙ゴミなどの問題が切実さを増しています。地球上で抱える問題を宇宙にまで拡大することのないよう、むしろ地球の問題を有効に解決できるよう、開発の方向性をかじ取りする必要があるようです。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳