2011年2月1日火曜日

【第57回】科学的リテラシー①

~ 世界が求める「科学的リテラシー」とは? ~

前月号の新年のご挨拶で「OECDによる国際的学力到達度の調査PISA2009」の結果をご紹介、トゥルースの視線第51~53回では「数学的リテラシー」についてご紹介をしました。今回はPISAの「科学的リテラシー」とは何かをご紹介したいと思います。

PISAは、義務教育修了段階の15歳児が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかをみるものであり、特定の学校カリキュラムをどれだけ習得しているかをみるものではありません。 思考プロセスの習得、概念の理解、及び各分野の様々な状況でそれらを生かす力を重視する学力調査です。現在日本を含む各国ではこのPISA型の学力を向上させるための教育施策に取り組んでいます。

中でも「科学的リテラシー」は次の能力に注目しています。
疑問を認識し、新しい知識を獲得し、科学的な事象を説明し、科学が関連する諸問題について証拠に基づいた結論を導き出すための科学的知識とその活用。
・科学の特徴的な諸側面を人間の知識と探究の一形態として理解すること。
・科学とテクノロジーが我々の物質的、知的、文化的環境をいかに形作っているかを認識すること。
・思慮深い一市民として、科学的な考えを持ち、科学が関連する諸問題に、自ら進んで関わること。

具体的な科学的能力については、次の3つを挙げています。
「科学的な疑問を認識すること」
   与えられた状況において科学的に調査できるような疑問を認識すること、与えられたテーマに関する科学的な情報を検索するためのキーワードを特定すること、科学的な調査の重要な特徴を認識すること。
「現象を科学的に説明すること」
   与えられた状況において科学の知識を適用すること、現象を科学的に記述し、解釈し、変化を予測すること。
「科学的な証拠を用いること」
   科学的根拠を解釈し、結論を導き、伝達すること、科学やテクノロジーの発達の社会的意味について考えること。

では、「科学的リテラシー」を育成するためには、どのような教育が必要なのかでしょうか?
日産科学振興財団特別プロジェクト‘子どもの科学的リテラシー向上を目指した義務教育9ヶ年の授業体系の開発’に携わった森本信也教授は、「子どもは自然現象から情報を収集し、処理し、知識として構築し、記憶させていく。子どもが自覚的に自らの認識プロセスを見つめ、その進捗を目指すという学習の様態は、『メタ認知』に他ならない」と述べています。

次回、『メタ認知』と、理科教育における『メタ認知アプローチ』についてお話ししたいと思います。

【参考文献】
『OECD 生徒の学習到達度調査~PISA2009年調査分析資料集~』(文部科学省国立教育政策研究所)
『子どもの科学的リテラシー形成を目指した生活科・理科授業の開発』(森本信也・横浜国立大学理科教育学研究会 編著)

To be continue・・・