2007年4月1日日曜日

【第25回】フィンランドの教育③


― 日本の教育とどこが違うか ―

現在、日本の教師像は、現場で真剣に頑張っている先生方がかわいそうになるくらい、惨憺たるものです。確かに一部特殊な教師による犯罪、極端に誤った指導や問題への対応は、うんざりするほどマスコミでも報道されています。一方で、ある小学校では運動会の後に親たちの飲み会に呼び出され、「ウチの子になんであんなレベルの低いことをさせるのか?」とつるし上げられる先生もいる程、教師に対する信頼や期待を端から持っていない親もいるという現状もあるようです。これでは、子供も先生を尊敬する気持ちなど持ちえません。

フィンランドでは古くから「国民のロウソク」と呼ばれ、人々を導く正しい知識やモラルの持ち主として尊敬され、最も魅力的な職業とされています。高校生を対象とする、なりたい職業の調査(2004年)では、教師がトップ(26%)。教育学部大学院の倍率は10倍以上であり、最も優秀な学生が教職についています。なおかつ、初等教育(学級担任教師)と中等教育(教科担当教師)は、最短で5年間を要する大学院レベルであり、教師は全て修士号所得者(ヨーロッパでもフィンランドのみ)。これは、教師教育に関して、「授業者であるだけではなく、子どもの成長を支える意味での教育者を育てる」「教師教育の学問水準を上げる」「理論的学習と実習の統合を図る」「教育学的学習と教科的学習を統合する」といった本質的な視点から本格的な検討が継続的に行われ、改革を着実に実現してきた結果なのです。

また、スクールカウンセラーやスクールサイコロジストを配置しており、ほとんどの親が共働きであるためアフタヌーン・ケア(託児所)が学校に併設されていますが、これは学校とは別の組織が運営しています。教師は授業以外の負担を最小限になるよう配慮されている一方、就職後も自ら研究し、新しい教育思想や教育法を探究し続け、自己研修の能力を身につけることを要求されるのです。
ですから、行政側も教師の能力を信頼し、前回紹介した「⑥全体は中央で調整されるが実行は地域でなされるというように、教育行政が支援の立場に立ち、柔軟であること。」が可能となるのです。これをイギリスの新聞で「自由と自治がフィンランド的なやり方なのだ。抑圧よりも、教育学で言う創造性が奨励されている」と紹介しています(2003年9月16日ガーディアン紙)。

ここでも日本の教育行政が進もうとしている方向性は、これと正反対の方向を向いている気がしてなりません。
【参考】前回資料に加え「教師教育の改革と教師像―2003年の調査と研究交流から」都留文科大学教授・田中孝彦

To be continue・・・