2013年7月10日水曜日

トゥルースの視線【79回】

自然と文化と歴史の町・箱根でサイエンスキャンプ!
-芦ノ湖のミステリー-

私は箱根が大好きです!古来東海道の要衝であり「天下の険」と謳われ、「東京の奥座敷」とも呼ばれた箱根。ちょっと時間が空けばついつい足を運んでしまいます。箱根と言えば、毎年正月に行われる「箱根駅伝」。1920年に始まり来年は第90回になります。観光地も枚挙にいとまがありません。箱根関所跡、旧街道、元箱根石仏群、大涌谷、芦ノ湖、仙石原湿原植物群落、彫刻の森美術館、箱根ガラスの森、ポーラ美術館、星の王子様ミュージアム・・・。乗り物もケーブルカーにロープーウェイ、山の傾面を登るためジグザグに登るスイッチバック方式の箱根登山鉄道(あじさい電車)と、いろいろ楽しめます。そして、なんと言っても温泉。ハイキングの後に温泉に入れるのは最高です。また、道中富士山が見えるとなぜか嬉しくなります。

今年はNPO法人科学技術教育ネットワーク(NEST)主催のサイエンス・キャンプが、なんと芦ノ湖で行われるのです!しかも湖畔の素敵なコテージに泊まって、ガラス張りの多目的ホールで屋内学習活動ができるなんて!(神奈川県立芦ノ湖キャンプ村)

芦ノ湖は箱根火山の中にあるカルデラ湖(火の活動によってできた大きな凹地に雨水がたまってできた湖)で標高724mに位置し、周囲19km、面積6.9㎢、最深部は43.5mもあります。芦ノ湖が誕生したのは、今から約3100年前に起きた神山の水蒸気爆発による土石流が、当時仙石原に流れていた川をせきとめて、その上流に水がたまり、湖になりました。現在は神山や駒ヶ岳、屏風山、三国山などに囲まれています。

実はこの芦ノ湖、とっても興味深いのです。

まず、湖底の地形芦ノ湖は北西-東南方向に細長い形をしていて、水深30m以上ある湖底が深い帯のようにこれに沿って6km近くも続いています。湖岸から湖底まではV型の急斜面です。有名な「逆さ杉」は、地震による地滑りで湖岸の樹木がこの急斜面をそのまま滑り降りて湖底に沈んだもの。1600年もの間湖底に眠り続けた杉が無数にあり、そのうち直立に近いものが「逆さ杉」で、現在は2本だけ。江戸時代までは水面上に頭を出していたそうですが、明治時代になって湖の観光開発が始まり、遊覧船の航行(大正9~)に危険が出たため先端が切り取られ、今では水上からその姿を見ることはできません。また、キャンプ村近くの早川水門の入り江には、根元が二分された、樹皮さえ残っている巨大な二股杉が直立したまま沈んでいるとのこと。専門家にとっても謎だそうです。

次に湧水。芦ノ湖から流れ出す川で有名なのは早川。流れ込む川は多数ありますが、どれも沢程度で水量に影響していません。芦ノ湖の水量を支えているのが湧水なのです。現在は透明度4~5mですが、明治時代までは16mもあって青く澄んでいたそうです。水がきれい過ぎて、バクテリアやプランクトンが極端に少なく、ほとんど魚が生息する環境になかったとのこと。この湧水が芦ノ湖の自然に今でも大きな影響を与えているのです。

特徴の一つは水温が低く、一年を通して夏冬かかわらず4℃であること。芦ノ湖の湖面が冬でも凍結しないのはこのためです。逆に湖面の水温が27℃になる夏でも湖底では4℃なので、かなりの温度差があり泳ぐには危険です。もう一つの特徴は、湧き出す水量が一定していないこと。湖面と湖底の中間(水深15m付近)には「温度躍層(やくそう)」という温度の境界ができるという珍しい現象が起き、水量が不安定なため境界は絶えず上下あるいは左右に揺れているそうです。このことにより、温水性のブラックバスやコイなどと、冷水性のヒメマスやニジマスが同じ湖に共存するという不思議なことが起きているのです。

遊覧船が渡る華やかな観光の湖・芦ノ湖に、こんなミステリーがあるなんて、とっても素敵ではありませんか?

残念ながらキャンプ期間中に観ることはできませんが、731日~85日は「芦ノ湖夏まつりウィーク」。箱根神社が万巻上人により開かれてから今年で1255年。芦ノ湖の守り神である九頭龍を奉る7/31「湖水祭」を皮切りに、8/1「例大祭」・8/2「御神幸祭」・8/4「龍神祭」・8/5「鳥居焼祭」まで様々な祭事が執り行われます。1000個を超える灯籠が湖上に浮かび、花火も打ち上げられます。お時間があったら、足を運んでみてはいかがでしょうか?

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


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