2015年1月19日月曜日

トゥルースの視線【94回】


2015新年のご挨拶
- 大学入試改革と『21世紀型スキル』 ―


新年あけましておめでとうございます。

東京は、大晦日の暖かさとは打って変わり、雪がハラハラと舞い底冷えする元旦を迎えました。寒々とした冬空を見上げると入試を思い出します。かつて進学塾として多くの受験生を送り出した日々、数十年前自分が受験生だった頃を。昨年末、大学入試改革がマスコミに取り上げられました。

 大学入試改革は、20136月政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)で議論が始まりました。1310月の安倍首相への提言には、従来のセンター試験を廃止し、高校在学中に基本的な学力を測る「基礎レベル」と、センター試験の後継となる「発展レベル」を一体運営して、「能力・意欲・適性を多面的、総合的に評価する大学入学者選抜制度」を目指すことが盛り込まれました。

 そして昨年1222日、中央教育審議会は下村博文文部科学相に、今の小学6年が高校3年になる2020年度実施分から大学入試センター試験を新しくするなどの大学入試改革案を答申。センター試験の後継である「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、暗記した知識の量ではなく、思考や判断など知識の活用力を問うものにする。特徴的なのは、「合教科・科目型」「総合型」と呼ばれる国語や数学など教科ごとの枠にとらわれない問題を導入することです。(12/22朝日新聞)また、昨年1024日に、各大学の個別試験については、筆記試験の点数ではなく、志望理由書や面接、プレゼンテーション能力、集団討論、部活動の実績、資格試験の成績などを組みあわせて選抜するよう提言しています。(10/25朝日新聞)

やっと、日本の大学入試も世界が求める学力、すなわち、OECDが行っている国際的な学習到達度に関する調査 ― PISAProgramme for International Student Assessment)が目標として掲げている学力(PISA型学力)に対応する変革を行う機運がやっと出てきたようです。PISAで言う「リテラシー」(知識や情報の活用力)や「CCCCross-Curricular Competencies」(問題解決力、批判的思考、コミュニケーション能力、忍耐、自信といった教科の枠を横断した能力)が前面に出るようになりました。大学入試が変わらない限り、初等・中等教育も大きな変革ができないことを考えると、方向性としてはとても歓迎すべきことではないでしょうか?


昨年1234日シンガポールで、「Bett Asia Leadership Summit 2014」という、アジア・環太平洋地域の教育のリーダーが一堂に会した国際会議が開催され、これに参加してきました。Bettは毎年1月ロンドンで行われる世界最大の教育イベントで、そのアジア版が初めてシンガポールで開催されたのです。ここで、各国の代表による様々な教育の提言、実践報告、討論、ワークショップが行われました。その中で一番目立った議題は、「テクノロジーを教育でどのように活かすか?」「テクノロジーによってどのような教育が可能なのか?」「テクノロジーを使うことによって、どのような教育が求められるのか?」 ― 要するに、『テクノロジーが教育をいかに変革しうるか?』でした。これは、教育がテクノロジーについていくことだけはなく、『新しい教育を創出するためのツールとしてテクノロジーを有効に活用するにはどうしたらいいか?』というものです。

では、新しい教育とは、何を目指しているのでしょうか?

― それは、最近日本の教育界でも盛んに言われていますが、『21世紀型スキル』がキーワードです。Bett Asia2014でも21世紀型スキルとは何か? 達成するにはどのような方法が考えられるか?様々な意見が出されました。
 

なぜ、新しい教育が必要とされるのでしょう? ―

「今の子供たちが大人になった時には、現在とは全く異なった職場となり、全く異なった仕事をしているだろう」と、PISAを立ち上げたアンドレアス・シュライヒャーOECD 事務総長教育政策特別顧問は述べています。20世紀の工業化社会とコンピューターやインターネットが中心となった現代の情報化社会とは、知識の在り方そのものが変質しています。工業化社会では体系的な知識が有効でしたが、情報化社会においては知識がすぐに陳腐化してしまいます。このような知識観の変化の中で、『教育(Education)から学習(Learning)への変容』が求められているのです。シュライヒャーは、「知識はグーグルの中にある。知識を使って何ができるかが、これからは重要だ」と述べています。要するに、『21世紀型スキルは、PISA型学力を達成するためにテクノロジーを活用するための能力』と言っても過言ではないかもしれません。

当アカデミーは15年に渡って、「社会的構成主義」という、PISA型学力を実現する教育の模範であるフィンランドが採用している教育理論に立脚した、STEM教育(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)を展開しています。Bett Asia2014に参加して、私共が歩んできた道は決して間違っていなかったことを確信しました。ロボットやScracth、データロギングを始めとするプログラミングなど、時代を先駆けて取り組んでまいりましたが、日本でも最近やっとその重要性が認識され、一般に認知されるようになりました。今年はさらにこの路線を強化し、教育のフロンティアとして、時代を先取りした、世界に通用する教育を提供していきたく存じます。

本年もよろしくお願い致します。

あらゆるものがかつては想像できないほど進歩している。でも、まったく変わってないものがある。教育だ。
ビクトリア時代の教師が、21世紀の教室に入ってきても、さほど違和感は抱かないだろう。ほかのジャンルではあり得ないことだ。このモデルは近い将来、滅びるだろう。テクノロジーは教育に深い変化をもたらしている。

-イギリス教育相マイケル・ゴーヴ(Michael Gove)―

 
【参考】フィンランド社会における教育と学習 ― 21 世紀におけるICT とソーシャル・ラーニング ―
松下慶太・実践女子大学人間社会学部准教授
 
 
 
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳
 
 
 
トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
 
トゥルース・アカデミー リトル・ダヴィンチ理数教室
 
トゥルース・アカデミー ロボット・サイエンス
http://truth-academy.co.jp/rs/


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