2017年1月18日水曜日

トゥルースの視線【114回】


2017年 新年のご挨拶
-人工知能とロボットの時代に生きる(3)-
 
 
2017年東京は、今年も暖かく穏やかな三が日を迎えました。明けましておめでとうございます。

昨年末2つの国際的な学力調査の結果が発表されました。日本の子どもたちは、理科・算数数学で順調に学力を伸ばしているようです。

一つは、11/29に発表された国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ)が実施する、小学4年と中学2年が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」2015年の結果。主に学校で学んだ内容について、「知識」「技能」「問題解決能力」の習得状況を評価します。日本は全4教科の平均点でいずれも1995年の調査開始以来、過去最高を記録。中2理科の国際順位は前回から2つ上げて2位となるなど、全教科で5位以内に入りました(4算数5位・理科3位、中2数学5位・理科2)。-日経新聞-

理科の結果について、森本信也・横浜国立大教授(理科教育)は、高得点を取った生徒の割合が増えていることから「『理科離れ』が言われて久しいが、観察や実験の機会を増やして深く考えさせる『課題解決型』の授業が定着してきた成果が表れている」と評価。算数・数学について、藤井斉亮・東京学芸大教授(数学教育)は、学習していない内容の問題でも国際平均並みの正答率がみられた点に注目。「課題解決型の授業で学んだ知識をもとに、自分で考え、未知の問題にも挑戦する姿勢がうかがえる」と解説します。-朝日新聞-

もう一つは、3年に1回行われる経済協力開発機構(OECD)の2015学習到達度調査(PISA= Programme for International Student Assessment。義務教育修了段階にあたる15歳を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について知識や技能を実生活の場面でどう活用できるかを評価します。「科学」「数学」の平均点の順位は、現在の調査方法になって以降いずれも過去最高(科学2位、数学5)。しかし、文章や資料などから情報を読み取り、論理立てて自分の考えを記述する「読解力」は前回より22点低く、4位から8位に下がりました。文部科学省は、問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わったことを挙げ、「複数の画面を見て答える問題などで、子どもたちに戸惑いがあった」としつつ、「情報を読み解き、言葉にする力で課題が浮かんだ。スマートフォンでインターネットを利用する時間が増える一方、筋だった長い文章を読む機会が減っている」(同省教育課程課)と分析しています。OECD教育・スキル局のアンドレアス・シュライヒャー局長(下写真)は、コンピューターへの移行について「情報化社会でのものの読み方の進化を反映させた」と説明。「様々な情報を対比させ、批判的な目で見て、見極める能力が必要になっている」と指摘しました。-朝日新聞-
 

理数の学力が伸びた一方で、TIMSSPISAのアンケートでは、「科学の話題について学んでいる時は、たいてい楽しい」「科学についての本を読むのが好きだ」「理科が自分の将来にとって重要と考えているか」「理科は得意だ」「数学は得意だ」と感じている生徒の割合が以前より上がったものの、意欲面ではまだ国際平均を下回っているとのこと。森本教授は、生徒の探求心の向上などに関する研修に参加した教師の割合が国際平均を大きく下回っている点に注目。「教師が教科書の解説にとどまり、生徒に学ぶ楽しさを教える授業ができていない可能性がある」と指摘しています。

元旦の日経新聞では、「当たり前と考えていた常識が崩れ去る。速まる一方の技術の進歩やグローバリゼーションの奔流が、過去の経験則を猛スピードで書き換えているからだ。昨日までの延長線上にない『断絶(Disruption)の時代が私たちに迫っている」「AIなどの『第4次産業革命』が迫り、人口減の衝撃も様々な断絶を生む。私たちはそんな時代に生きているのだ」と論じています。

このような状況下で、世界がより複雑で不安定になり、多様化が進むと予想される2030年に向けて、子どもたちに求められる『知識・スキル・行動』を特定・再定義し、それらの素質や能力を育むために必要な教育についての長期的な議論を促進すること等を目的としている Education 2030と題するプロジェクトをOECDは、日本を含め全加盟国に参加を呼びかけています。

前出のシュライヒャー局長は、2030年に求められる能力として、(1)グローバル化し複雑化する社会において、多様な協力関係を結びそれらを管理する能力(2)問題の細かな要素を結びつけ価値を生み出す能力(3)情報を整理する能力(4)専門家としての深い知識と、ゼネラリストとしての知識の幅広さをあわせ持つことなどを挙げています。また、忍耐力や自信のある生徒ほど数学の成績が良いというデータを示し、「認知能力以上に重要な要素として、社会的スキルや感情的スキルがある」と述べています。そのうえで、これらを総合した21世紀型の教育カリキュラムとして(1)知識(伝統的な数学・言語などの教科、現代的な知識としてのロボット工学・起業など)(2)スキル(創造性、批判的思考能力、コミュニケーション能力、協働等)(3)人格形成(好奇心、勇気、立ち直る力、倫理観、リーダーシップ等)の3要素を網羅した枠組みづくりが必要であると強調します。

新しい時代の教育に向けての小さな実験場としての当アカデミーとNPO法人科学技術教育ネットワークでは、科学技術教育の分野で、Education2030が目指す教育を実践すべく、スタッフ一同全力で邁進していきたく存じます。ご期待ください。

本年もよろしくお願いいたします。

トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳
 
 
 


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