2017年12月25日月曜日

トゥルースの視線【第124回】

国際会議RoboRAVE 2017 Global Summitに参加して
~ 世界に広がるロボット教育・プログラミング教育の輪 ~



前回、11月に石川県加賀市で開催された「加賀ロボレーブ国際大会 RoboRAVE Kaga Japan 2017」のご報告を致しました。2日目11/11(土)に行われた「RoboRAVE 2017 Global Summit」も同時開催されました。そこで、2020年にRoboRAVE世界大会開催を決定した加賀市長からは「加賀市をロボット教育のメッカにしたい!」という強い決意が示され、加賀市教育長は「RoboRAVEの活動を通して、シェアリング(共有)・コラボレーション(協働)・インターナショナルコミュニケーション(国際交流)といった新しい教育の形を実現していく」方針を示しました。



RoboRAVE International代表Russ Fisher-Ives氏は、教育者とは、いろいろな物や人をつなげるコネクターの役割を果たす存在であり、子供の視線に立った教育の重要性を説きました。教育はあくまでPassive Learning(受動的な学び)ではなく、Active Learming(能動的な学び)でなければならないと。また、「INPUT-PROCESS-OUTPUT」という身体を使ったアクティビティを紹介。これは、システム設計の時によく聞きます。システムはIPO(input→process→output)の組み合わせで成り立っており、入力されたデータ(input)に処理を加え(process)、所定のフォーマットでアウトプットする(output)。子供たちが学んだもの(input)を、あれこれと考えたり調べたりして(process)、問題解決に応用していく(output)という、まさにPISA型学力を目指す教育にも通じると感じました。

Project Based Schoolの教師であるアメリカ代表は、子供たちの好奇心を刺激し、失敗を恐れない心を育てることの大切さを主張。来年2月にRoboRAVEアジア大会を北京で開催するアジア代表は、STEM(科学・技術・工学・数学)教育の難しさにぶつかり、ロボットコンテストをカリキュラム化したProject Based Learning(プロジェクト型学習・問題解決型授業) 、Future oriented Education(未来志向の教育)で明るい道が開けたと、自らの体験を紹介しました。21世紀の教育に求められる在り方が模索されていることを実感します。

シリコンバレーの技術者でありながら自国の教育に関心をもったインド代表は熱弁をふるった。Activity Based Learning(子供たちの活動をベースにした学習)には、現実的なプロジェクトが必要であり、問題解決力(いかに新しいことを学ぶか?)の育成が重要である。ビッグデータの時代になり、この膨大なデータをどのようなアルゴリズム(問題を解くための手順を定式化した形で表現したもの)で処理するかが人類の課題となる。この力を育てるためには、数学・科学・プログラミングの学習が不可欠である。しかし、自分が学んだ小学校でロボット教育を始めたが、そこにはパソコンが1つしかない。ロボットも1台。それ以上に、教えられる先生がいない。そこで、WEBを利用して、先生を介さずに、“生徒が生徒に教える”オンライン・システムのプラットフォームを構築をしていると。この考えに賛同した中国代表が、先生役となる生徒に与える褒賞システムを付加すると発言。加賀市もこのプロジェクトに参加する意向を表明しました。



 ロボカップジュニアの活動、ロボットサイエンスやブロックサイエンス、リトル・ダヴィンチ理数教室の教育を2000年から実践してきた私共としては、今まさに世界規模で有力な協力者を見出した思いです。これからも、世界のロボット教育のリーダーを意見を交換したり、アイデアを出し合ったり、新しいプロジェクトを興したりすることを通して、Truthの教育をさらに進化させていきたいと存じます。

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2017年11月25日土曜日

トゥルースの視線【第123回】

加賀ロボレーブ国際大会2017に参加して
~ アメリカ発のロボットコンテストに東日本勢、初参加 ~


去る11/10(金)~12(日)石川県加賀市で「加賀ロボレーブ国際大会 RoboRAVE Kaga Japan 2017」が開催されました。この大会は今年で3年目ですが、Truth Academyが所属するNPO法人科学技術教育ネットワーク(NEST)が東日本での普及を依頼され、今年初めて「RoboRAVE東日本大会」を主催。加賀国際大会にチームを送り出しました。今回の大会では、日本112チーム、中国6チーム、台湾18チーム、シンガポール3チーム、インド1チーム、アメリカ2チームの計142チーム、405人の小学生から高校生が参加。日本でも初めて大阪、東海、東日本から参加し、東日本からは6チーム、14名で遠征ツアーを組んで参加しました。


競技は、Line Following(小~高各部門)、a-MAZE-ing(小・中各部門)、Jousting(小・中各部門)、Sumobot(小~高)、プレゼンを行うRobotovat(中・高)の全5競技9部門が行われました。RoboRAVEが他の競技と異なるのは、練習は何度でもできて、自分で申し出て競技に臨むことができる点。Line Followingは10回まで、a-MAZE-ingは何度でも競技ができ、上位成績5回の合計で予選の得点が決まります。決勝は、8チームのトーナメントで競います。“Today’s Play, Tomorrow’s Pay.”をモットーにしているコンテストだけに、国際代表Russ氏の「さあ、遊ぼう!1・2・3・ワオ!」で開幕した競技会では、子供たちは自由(過ぎるくらい?)に楽しみながら取り組んでいる様子が印象的です。結果は、台湾が圧倒的に強く、ほとんどの部門で上位を独占しました。東日本のチームは、Line Followingとa-MAZE-ingに参加しました。Line Followingの予選では2チームが9位で惜しくも決勝進出を逃しましたが、小学生1チームが決勝に進出し5位。同チームは、a-MAZE-ingでも6位入賞を果たしました。



大会2日目に競技とは並行して、ロボット教育について意見を交換することを目的に、「RoboRAVE 2017 Global Summit」という国際会議が行われました。加賀市市長、加賀市教育長、RoboRAVE International代表Russ Fisher-Ives氏、アメリカ・アジア・インド代表や日本を含めた各国の先生が参加。大会でも子供たちに話をしてくれたNASA太陽系探索部長のJoseph Minafra氏も加わりました。また、ロボカップジュニアに参加している西堀栄三郎記念館の方が、南極探検など多方面で活躍した西堀栄三郎の精神を受け継ぎ、「JARE杯」というロボカップジュニアのレスキューLineをベースした、南極での救助活動などストーリー性のある競技を行っていることを紹介しました。


加賀ロボレーブ国際大会は、宮元陸・加賀市長の肝いりで始まり、空港から会場や宿泊施設の送迎もバスをチャーターして行うなど、加賀市が一丸となって運営しています。市長主催の歓迎パーティーも主要人物や海外チームを招待して、ホテルの会場で行われました。2020年には、世界大会を加賀市で行うことが、プレス発表されました。一方で、まだ大会運営の経験が少ないこともあり、相撲をテーマとした新しい競技のSumobotでは運営が混乱し、1位が22チームになったり、ライントレースしながらピンポン玉を運ぶLine Followingでは、数回に分けて2000個を超すピンポン玉を運ぶチームも出て、用意したピンポン玉が不足して競技ができないチームがあったり、と想定外のことが起きたようです。また、ロボカップジュニアとは異なり、指導者や親の助けが多く目立ち、子供たちの自主的かつ自立した活動を実現する仕組みが構築できていない印象も受けました。

ロボカップジュニアの運営を十数年行ってきたNESTですので、今回の参加で感じたことや改善点などを大会側にフィードバックして、今後さらに楽しくも教育的な意義の高い大会に育つよう貢献し、東日本を含め全国に普及していければと思っています。

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2017年10月28日土曜日

トゥルースの視線【第122回】

Truthのロボットサイエンスは何が違うの?
~ 理論・カリキュラム・実践の三位一体による高い実績 ~

当アカデミーは、2000年から教育用レゴブロックを教材とした科学技術教育、2001年からロボットを教材としたロボット製作・プログラミング教育、2008年からScratchなどを使用したプログラミング教育を行ってきたパイオニアとして知られています。いわゆる今はやりの「STEM教育(科学・技術・工学・数学の教育分野の総称)」の先駆けです。当時はロボット製作やプログラミングの教室はほとんど皆無であり、一般世間の大人からはまだまだ玩具、お遊び程度に思われていた時代です。

しかし、昨今はロボット教室やプログラミング教室が全盛の時代。そんな中、今年のロボットサイエンス体験会で初めて次のようなご質問を受けました。「ロボット教室はたくさんありますが、この教室は他と何が違うのですか?」と。そこで、改めて何が違うのかをまとめてみました。

1) 根底として、プログラミング教育・ロボット教育の元祖、マサチューセッツ工科大学メディアラボのシーモア・パパート元名誉教授が唱える「コンストラクショニズム」という教育理論(21世紀教育の最大のテーマ「社会的構成主義」に通じる考え)に基づく教育を実践し、教育関係者からは「理論と実践が完璧に一致している」と高い評価を受けています。

2) 実践に基づいたオリジナルのカリキュラム・授業案に対する信頼が高く、教師用の指導書として出版され、学校の先生を始め多くの指導者が活用していたり、科学館や行政機関、学校での授業提供も15年以上継続して行ったりしています。国立教育政策研究所の論文でも、私共の指導書に基づいた実践事例が紹介されています。

3) 初心者から上級者までが学習できる豊富なカリキュラムを提供しています。ブロックサイエンスでは2・3年生からレゴ社WeDoから始めますが、ロボットサイエンスではレゴマインドストームEV3から始まり、ロボットの自作からセンサー製作、C言語によるプログラミング、Arduino(アルデュイーノ)基盤を使ったロボット製作やプログラミングなど、小学生から高校生まで学べる内容を用意しています。

4) 教室の授業での指導は、当アカデミーの卒業生を中心に、国際的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」でジャパンオープン(全国大会)に何度も出場したり世界大会に出場したりして、現役時代(19歳以下)に活躍したOBが担当しています。彼らのロボット製作やプログラミングの思想や技術、考え方の文化が伝承される環境を用意しています。

5) ロボットコンテストを「これまでの学習の発表の場、広い地域からの人々との交流による学びの場」と捉え、積極的に参加しています。ロボカップジュニアでは、2004年からほぼ毎年日本代表として世界大会に参加し世界チャンピオンも輩出している、最も実績ある団体の一つです。また、宇宙エレベーターロボット競技会でも昨年は小学生部門で1位と3位に入賞。FLLジュニアでも高い技術力が評価され、モデルデザイン賞を受賞。今年から参加を始めた、アメリカ発祥の国際的なロボットコンテスト「ロボレーブ」では、当アカデミーが参加するNPO法人科学技術教育ネットワーク(略称NEST)が東日本大会の運営を依頼され、東日本での普及を図っています。

 また、当アカデミーが全面協力しているNESTでは、現在世界的に科学教育として必要とされる「制御」と「データロギング」をテーマに、「NESTロボコン」や「ロボットの鉄人合宿」「ICTサイエンスキャンプ」などを毎年行い、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」で3年連続CEC奨励賞を受賞。その教育の質の高さが評価されています。

  この17年間パイオニアとして日本のSTEM教育をリードしてきましたが、時代が私たちに追いついた今、さらなる魅力ある先進的な教育を提供していきたいと存じます。Truthの新たなチャレンジをご期待ください。

トゥルース・アカデミー代表
中島晃芳

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2017年9月30日土曜日

トゥルースの視線【121回】


ロボカップ2017名古屋世界大会報告
 ー ジュニアにカメラによる画像解析を求める傾向に ー


去る7/27(木)〜31(月)、ロボカップ2017世界大会が名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)と隣接する武田テバオーシャンアリーナで行われました。約400か国、約3000人の参加者、13万人の来場者となりました。1997年第1回ロボカップが名古屋で行われてから20年、再び名古屋に戻ってきたロボカップは、規模もレベルもはるかに大きく成長しています。


武田テバオーシャンアリーナでは、メジャー(大人部門)とジュニア(19歳以下の部門)が同じ会場で行われ、今年からメジャーとジュニアの懸け橋となる「The Rapidly Manufactured Robot Competition (RMRC)」がスタート。都立産技高専の4年制チーム「TUPAC 」が3位に輝きました。レスキューを同一過剰にすることによって、ジュニア参加者が自分たちの活動が将来どのようなものにつながるかを実感できたように思います。



ジュニアのルールに関して大きな変化があったのは、サッカー・オープン・リーグとレスキュー・メイズではないでしょうか? サッカー・オープン・リーグでは、これまで赤外線を発光するボールからオレンジ色に塗ったボールに変更、レスキュー・メイズでは壁に書いた文字を読み取ることが要求されました。どちらもロボットにカメラを搭載し、画像処理をする必要があります。ジュニア部門が新しい時代に突入したことが痛感されるルール変更です。


世界大会のジュニア部門の目玉の一つは、「スーパーチーム」。複数の国のチームがスーパーチームを編成し、協力して競技に臨むというものです。サッカーのビッグフィールド方式(5台vs5台)はかなり定着してきた感があります。面白いのはレスキューで、毎年前日の夕方にルールが発表され、翌朝から競技スタート。ラインは、緑の交差点の数を1台が数え、もう1台に伝え、その数で決められた被災者の避難場所に運ぶという内容。ボランティアで参加した元世界チャンピオンチームの高校生スタッフの意見が採用されたそうです。メイズは、1台がフィールドにばらまかれた救援物資を集め、もう1台が青色の壁を見つけて相手ロボットに教え、救援物資を1つの部屋に集めるというものです。例年通り、ロボット間通信をどのように行うかがテーマになっていました。




今回の世界大会は残念ながら当アカデミーのチームは参加できませんでしたが、テクニカル・ボランティアとして、サッカー・ライトウェイトやレスキュー・ライン、CoSpaceレスキューに7名が参加。途中からOBも参加し、十数名がボランティアとして活躍しました。今回の大会は、大学の試験と重なっていたため大学生がスタッフ参加できないので運営にはかなりの心配がありましたが、その分高校生ボランティアが活躍し、運営者からとても感謝されたようです。スタッフとして参加したことは、選手としての目とは違った目で競技を見ることができ、また世界トップクラスのロボットを研究する機会にもなったのではないかと思います。



競技が終わった後の最終日にシンポジウムが行われました。そこで、OnStageチーム「三代目Show道」(ジャパンオープン準優勝)の斎藤尊君と樹神清正君が、ダンス競技「TOKYO2020」(2014年世界大会テクニカル・チャンピオン受賞)の体験から、それぞれサッカーとレスキューの道に進み、「三代目Show道」に至った過程を、それぞれの段階で学んだことをどのように活かしてきたか、ということを中心に発表しました。



単に参加者としてだけはなく様々な関わり方で、ロボカップジュニアとは子供を成長する機会を与えてくれる場であることを改めて痛感しました。皆、とても貴重な体験をしたと思います。次は、12月のRoboCup Asia Pacific(タイ・バンコク)です。参加が許可されたチームは、大いに頑張ってほしいものです。

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2017年7月28日金曜日

トゥルースの視線【120回】


1AI・人工知能EXPO
-人工知能との共生-

 

6/28(水)~30(金)東京ビッグサイトで、「第1AI・人工知能EXPO」という展示会が開かれました。ディープラーニング、機械学習、ニューラルネットワーク、自然言語処理、ビッグデータ、AIアプリケーションなどのサービスを提供する企業110社が出展。6/26にプロデビュー以来29連勝を達成した、14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が人工知能を用いた将棋ソフトを使って技の研究を行ってきたことと重なって、テレビのニュースなどでも取り上げられ大きな話題となりました。私も初日に足を運びましたが、まさに立錐の余地もない混雑ぶりで大盛況でした。

 最初に目を引いたのが、ショッピングカートにカメラ付きのロボットを搭載し、カートに入れる際に食材を認識し、その食材を使ったレシピを紹介してくれる「ロボットコンシェルジュカート」。ビデオカメラの映像から、道路を走る車の状況を分析したり、人の動きを分析したり、不審者を割り出したり、性別・年齢・幸福度などを判定したりするものもありました。私の年齢もAIに見事当てられてしまいました。また、4か国語が話せるバーチャルロボットや、インターネットに接続されたスマートフォンやディスプレイ、テレビなど表示デバイスを選らばない、AIと映像によるバーチャルロボットも多くの人の関心を集めていました。受付用や接客用にはとても親しみやすい感じがします。AI搭載ロボットのKibiro(キビロ)や、ロボカップでも使用されているNAO(ナオ)、Pepper(ペッパー)などのリアルなロボットもデモンストレーションしていました。

LINEFacebookなどのSNS上で、テキストや音声を通じてユーザーがまるで生身の人間と話すような感覚でチャットできる自動会話プログラムである「チャットボット」も多く出展されていました。コールセンターなどでの利用を目指しているようです。自然言語処理(人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術)も多数見られました。特に面白いと思ったのは、「テキストマイニング」という技術。通常の文章からなるデータを単語や文節で区切り、それらの出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な情報を取り出す、テキストデータの分析方法だそうです。「見える化エンジン」というのが凄いらしく、この業界でNo1。まず、日報や自由記述のアンケート、コールセンターでの顧客との記録、メーリングリストやSNSのログなど、自然文の蓄積の形で存在する膨大なデータを取り入れ、単語ランキングや主語述語や修飾語の係り受けランキング、出現頻度を分析し、単語同士の関連マップや比較マップ、時系列グラフや急騰グラフなど、様々な出力ができ、レポート作成も自動でできるとのこと。

また、パソコンの作業をAIが自動的にやってくれる「RPARobotic Process Automation)」。ロボットによる業務自動化の取り組みを表す言葉で、「デジタルレイバー(Digital Labor)」や「仮想知的労働者」とも言われます。AIが反復によって学ぶ「機械学習」という技術を用いたソフトウェアが、人が行っているアプリケーションの操作を自動化ツールでマクロ化し、そのマクロファイルが作業を代行するというイメージだそうです。これによって作業時間が大幅に短縮できます。ロボットは自ら辞めることはありませんし、24時間休みなく働き続けることも可能。同じ間違いを繰り返すこともありません。人の手による作業より遥かに正確です。

 今回のAI・人工知能EXPOでは、ロボカップの提唱者である北野宏明氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長・所長)が基調講演を行ったそうですが、残念ながら出席できませんでした。北野氏は、自動運転車などの「都市の拡張としてのAIRobotics」と「人間の拡張としてのAIRobotics」とがあると指摘しています。「2050年までにFIFAワールドカップのチャンピオンに勝利する完全自律型ロボットを開発する」というロボカップは、人間の「物理的能力」を拡張するものです。最近では、AIが音楽を作曲するなど、人間の「創造性」を拡張できる段階に達してきたと。さらに北野氏が新たに提案しているのは、「科学するAI」。科学的な発見は人間よりも膨大な情報や論文を分析できるAIの方がはるかに適していると言う。そして、「2050年までにノーベル(生理学・医学)賞に値する主要な科学的発見をできる人工知能システムを開発する」ことを新たな目標に掲げています。

 まだまだ人工知能は不完全で、人間が行っていることを模倣し代行している段階です。人工知能が人間の能力を凌駕し、人類が人工知能と融合して人類の進化速度が無限大に到達したように見える瞬間に到達する「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年に起こると言われています。人類は、どのように人工知能と共存・共生していったらよいか、いよいよ真剣に考えなければならない時期になったようです。

 


トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳
 
 
 
 

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2017年6月30日金曜日

トゥルースの視線【119回】


World Robot SummitRoboCup Asia Pacificスタート!

-ロボットコンテスト全盛時代に突入?-

 

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「World Robot Summit (WRS:ワールドロボットサミット)が、いよいよ動き出しました。2018年プレ大会が東京ビッグサイト(10/1721)で、2020年本大会は愛知県国際展示場(8月・10月)開催。特別な施設(プラント、トンネル)が必要なインフラ・災害対応分野の一部の競技については、福島ロボットテストフィールドで実施されます。
 

WRSは、人間とロボットが共生し協働する世界の実現を念頭に、世界のロボットの叡智を集めて開催する競演会で、ロボットの競技会「World Robot Challenge」と、最新のロボット技術を展示する「World Robot Expo」を介して、世界中のロボット関係者が一堂に集まり、リアルな日々の生活、社会、産業分野でのロボットの社会実装と研究開発を加速させることを目的としています。競技会は、4つのカテゴリー(ものづくり、サービス、インフラ・災害対応、ジュニア)で計8つのチャレンジを実施予定。ジュニア・カテゴリーでは、学校環境においてニーズのありそうなタスクとそれを実現するプラットフォームロボット(ソフトバンクの人型ロボットPepper(ペパー)が採用)をプログラミングする「スクールロボットチャレンジ」と、サービス分野と同様のタスクを設定しロボットを製作する「ホームロボットチャレンジ」が予定されています。スクールロボットチャレンジで使用する。
 

一方、今年201712/1218、第1回「RoboCup Asia Pacific」(RCAP:ロボカップ・アジアパシフィック)がバンコク(タイ)が開催されます。従来の世界大会では参加国も増え、規模が大きくなってしまったので、地域ごとの交流を目指すものです。日本・中国・タイ・シンガポール・オーストラリア・イラン・中国が中心となって進めています。ロボカップのメジャー(研究者の部門)とジュニア(19歳以下の部門)の全競技が予定され、20ヵ国200チーム3000人の参加者、15000人の来場者を見込んでいるそうです。ジュニアの日本チームは、今年3月に行われたジャパンオープンぎふ・中津川で、準優勝以下の上位チームが出場権を獲得します。また、愛知で行われる2020年のWorld Robot Summitは、RoboCup Asia Pacificも同時開催となるので、子供たちは、WRSとロボカップジュニアのどちらに出場するか、という選択肢が持てるようになりました。挑戦の可能性が広がったように思います。


 ロボカップは、「2050年にロボットのサッカーチームが人間のワールドカップ優勝チームに勝つ」という目標を持ったランドマークプロジェクト。「月に人類が降り立つ」や「人工知能が人間の囲碁の名人を破る」という、だれにも分かり易い高い目標を掲げて、研究開発を加速化させるプロジェクトです。やはり、ロボットコンテストなどがあると、開発のスピードを上げることができるのでしょう。これは、子供の学習も同様です。高い目標を目指して「ロボットコンテストで勝ちたい!」という強い気持ちがあればこそ、メカニズムやセンサー、プログラミングの学習に、またその基礎となる教科の学習に励み、論理的思考やコミュニケーション力やチームワーク形成力、スケジュールを含めた自己管理能力、問題解決力、プレゼンテーション能力の大切さに気付くのです。

 子供たちがさらに活躍してくれることを期待しています。


世界中のエンジエアや研究者が、ロボットの未来に人類の夢を託している。それは、競い合っているように見えて、じつは、連帯している。(中略)それらが目指しているのは、たった一つのこと。人類の幸福。この世界に住む一人ひとりの人間が、ロボットとともに暮らし、かつてない、新しい幸福に出会うこと。

World Robot Summit



トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


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2017年5月31日水曜日

トゥルースの視線【118回】


8回教育ITソリューションEXPO
日本の教育は変われるか? -


5/17()19()3日間、東京ビッグサイトで日本最大の教育分野専門の展示会「教育ITソリューションEXPO」(EDIX)が開催されました。学校業務支援システム、ICT機器、デジタル教材、eラーニング、教材や教育コンテンツ、各種学校向けサービスなどが一堂に展示されます。第8回となる今回は過去最大の800社が出展(昨年来場者数30,422)、東京だけはなく大阪でも今年初の開催となります。また、文科省や東工大、早稲田大、慶応大などの教育専門家による32のセミナーが行われました。いわば、年1回ロンドンで開催される世界最大規模の教育ICT展示会「BETT」(視線4950参照)の日本版です。

また、今年で2回目になる「みらいの学びゾーン『学びNEXT』」は前年比の2倍となる90社が出展。昨年は別会場でしたが今年は本会場で行われました。このゾーンには、プログラミング教材や工作用キット、教材用ロボット、3Dコンピューターなど、STEM教育(Science, Technology, Engineering, Mathematics)ものづくりを通して学ぶFab Learning(ファブ・ラーニング)の教材が集結しています。私共としては最も関心のあるゾーンです。

今年の最大の特徴は、一気にプログラミング教材、ロボット教材、ロボット教室のフランチャイズ募集が増えたことです。プログラミング教材はロボットと組み合わせたものや幼児からプログラミングの考え方を学ぶ教材が目立ちました。また、電子工作系の教材もプログラミングと組み合わせたり、配線することなくタブレット上で配線を行ったりするなどの新しい傾向が見られました。中にはBasicArduino(アルデュイーノ)言語でコーディングするものもありますが、プログラミングソフトは圧倒的にScratch(スクラッチ)系が多く、学習のためのインターフェイスとしては浸透してきた感じがします。中で面白かったのは、電池の電流をタブレットで制御できる電池ボックスです。これを使えば、電池を使って動くもの、光るもの、何でもタブレットから制御できることになります。人工知能を使ったロボット型の英語教材も現れました。逆に昨年と比べて少なくなったものは、半田を使って電子回路を作成する教材です。この1年間で時代が大きく変わったことを痛感しました。 

このプログラミング教育ブームは、201312月に開催されたオバマ前大統領が「Computer Science Education Week」において、プログラミングの重要性を訴える有名な演説を行ったことに端を発しています。また、OECDが行う国際学力調査「PISA」で学力世界一を誇ってきたフィンランドが昨年の4月より9歳以上対象として必修科目としてプログラミング教育を開始したことを受け、日本でも2020年に必修科目化の決定をしたことが大きな要因となっています。

2000年からSTEM教育をリードしてきた当アカデミーとしては、10年後も使い続けることができる教材を見極めて導入し、プログラミング教育・ロボット教育の父シーモア・パパートが提唱する教育理論「コンストラクショニズム」に忠実に則った独自の授業案を作成して、効果の高い教育を子供たちに提供していきたいと思っています。他のプログラミングやロボットの教室と決定的に異なるのが、フィンランドが教育で成功した教育理論「社会的構成主義」と「コンストラクショニズム」とをベースとし、教育プログラムと教材、指導法の三位一体による21世紀教育の実践であると自負しています。

プログラミングを学ぶことは、みなさんの将来にとって重要なだけでなく、アメリカにとっても重要です。 アメリカが最先端であるためには、プログラミングや技術をマスターする若手が必要不可欠です。―アメリカ・オバマ前大統領―


トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


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2017年4月25日火曜日

トゥルースの視線【117回】



生徒同士の友人としての絆
-FC日吉よ、永遠に!-

 
かなり昔の文章になりますが、20086月~093月のトゥルースの視線3642にかけて、ロボカップジュニア(以下、RCJ)の紹介、Truth AcademyRCJの歴史、参加者や支援する大人の関わりについてお話いたしました。その中で、2001年から開講した当アカデミーのロボットサイエンスの生徒たちの中から生まれた「FC日吉」という4人のグループについても触れました(視線第39)

時の経つのは早いものです。メンバーの一人の瀬戸匠君は小学3年生から通い、Truthの講師になって6年間ロボットサイエンスを引っ張ってくれました。2015年には自分が育てたチームをRCJ世界大会に出場させ、引率もしてくれました。その瀬戸君も今年大学院を卒業し、この4月から有名ロボットメーカーの社員として働き始めました。FC日吉の幹事役です。小3から通ったKK君は、都立高専に進学しロボカップ研究部の部長を務め、高専ロボコンにも出場して卒業後就職。この4/16()に結婚式を挙げました。FC日吉の兄貴的な存在です。小2から通っていた、優秀で明晰な頭脳を持つTM君は大学院の博士課程に進学して研究職を目指して現在も研究活動を行っています。FC日吉の番頭役です。レゴのサッカーロボットの様々な機構を考案していました。小2から通った、鉄道好きのHS君は建築学科に進学し、世界中を旅してフランスにも留学し、現在も大学院で研究しています。FC日吉のムードメーカーです。Truthを卒業した後も皆、RCJの大会運営やTruthロボット合同練習会、NESTのロボコンやサイエンスキャンプなど、事あるごとに手伝いに駆けつけてくれていました。

定期的に会っていたFC日吉が、今年1月にKK君の結婚の前祝いに池田と私を4人の集まりに招待してくれました。皆通ってきた当時と変わらず、KK君が出張に向かう電車に乗るまで、皆笑顔で笑いながら語り合い、楽しい時を過ごしました。別れた後、涙がこぼれそうになりました。素直に育ち、立派になって社会に羽ばたいていく4人の姿と彼らの子供のころの姿が重なって脳裏から離れません。その後、KK君の結婚式に流すビデオメッセージやダンスの撮影に日吉校の教室を貸してくれないか?と相談があり、KK君を除く3人の笑い声が夜10時半頃まで教室に響いていまいた。そこにはFC日吉を尊敬していた後輩の卒業生RS君の姿もありました。

FC日吉だけではなく、RCJに参加したチームメンバー同士が固い絆でつながり、Truthを卒業した後も長く友人関係が続いているグループがいくつもあります。長い間ともにチームとして戦略を練り、ロボットを開発した仲間、ジャパンオープン(以下、JO)や世界大会に出場して何日も一緒に過ごした仲間、競技のたびに苦楽を共にした仲間との経験は強烈な思い出を残すのでしょう。また、彼らを支えた保護者の皆様の育て方や支援の仕方、保護者同士の協力の仕方などが上手く機能していた、ということも忘れてはならないと思います。

Truth卒業生では現在、世界大会出場者の持田先生・名村先生・畝本先生が、幼い頃に通っていた高木先生が講師として後輩指導に当たってくれています。今年から、世界大会でダンスの賞を取り、サッカーでもJOに参加した柳澤君、ダンスとサッカーでJOに出場した瀬戸君(FC日吉の瀬戸君の弟)が講師に加わってくれました。卒業生以外では、RCJ-OBの宮下先生、森田先生、戒田先生が世界大会に出場しています。

自分が輝いていた場として、Truthに通っている子供たちがいつまでも思い出してくれる教室づくり、RCJで活躍したOBが後輩に自分の知識や技術、文化を伝えたくなるような教室づくりを肝に銘じ、今後も真剣に子供たちの成長を願い、本気で子供たちと向き合っていきたいと存じます。保護者の皆様にも多々ご協力を仰ぐこともあるかと存じますが、よろしくお願いいたします。


トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


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2017年3月22日水曜日

トゥルースの視線【116回】


トゥルース・アカデミーのプログラミング教育
-すべてのコースで学べるプログラミング-

 
先般お伝えしましたように、「リトル・ダヴィンチ理数教室」ではiPadを導入し、2008年以来小学23年生のみに行っていたプログラミングの授業を、年長以上のすべてにステップに導入することにしました。Code Studio, Scratch Jr(スクラッチジュニア), Scratch(スクラッチ)など発達段階に応じた教材を使用します。Code Studioは、全米の教育カリキュラムにプログラミングを組み込むことをミッションとしたNPO団体Code.org20149月に公開。幼稚園年長から高校までの生徒を対象とした実に豊富なカリキュラムを用意し、ガイド付レッスンを通じてプログラミングの基本概念に興味を持たせるツールとカリキュラムがセットとなっているものです。ロジックのブロックを操作させることによってプログラミングの基本概念が学べます。適切な順番に並べることで、キャラクターを動かしたり、図形を描いたりでき、図形や数量、論理、アルゴリズムが学べ、インターフェースはMITScratchによく似ています。現在までに17万人の子供たちが参加しています。また、教師が個々の生徒の進捗をモニターできるインターフェースがあるのも大きな特長です。当アカデミーでも、全生徒の進捗状況と理解度をリアルタイムに把握して指導していきます。

2001年にスタートした「ロボット・サイエンス」では、リモコンで動くロボットではなく、各種センサーを用いてプログラミングにより、ロボットを思い通りに動かせることを主眼としています。教育版レゴ©マインドストーム©を教材とし、付属のプログラミングソフト(計測系の言語LabViewをベースにしています)を使用するところから始まりますが、C言語、C言語ライクなRobotCArduino(アルデュイーノ)を学んだり、電子回路製作などに取り組んだり、子供たちの興味と関心に応じて学ぶことができます。そして、「宇宙エレベーターロボット競技会」や国際的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」などで、学習の成果を発揮します。昨年は宇宙エレベーターロボット競技会では優勝と3位。ロボカップジュニアでは、2004年からほぼ毎年世界大会に複数チームが出場し、世界チャンピオンを何人も輩出している伝統と実績があります。 

2000年から続いている「ブロック・サイエンス」ではプログラミングを扱わないのでは?と誤解していらっしゃる方もあるようですが、小学23年生を対象とする「キッズクリエーターⅡ」のステップでは、ロボティクス導入教材「WeDo」で、モーターやセンサーの制御の基本、プログラミングの文法の基礎を学びます。最近はWeDoを用いた教室も出てきたようですが、当アカデミーでは基礎理論の実験やモデル研究、問題解決学習(あることに困っている人を助けるためのものをレゴ©ブロックで発明しようという制作課題)を通して、ロボットの身体を動かす仕組みであるメカニズムを学んでいるので、プログラミングの工夫だけでなくモデルの改造もできるようになる点が大きな特長です。その成果が、FLL Jr.での受賞にもつながったのではないでしょうか? また、小学3年生以上の「ジュニアエンジニアⅠ・Ⅱ」では、各単元の最後にマインドストーム©を用いて、センサーを使った自動制御やデータロギング(実験データの収集と分析)を行っています。自動ドアや実際のコインの選別機を作ったり、振り子の等時性を調べてみたりといった活動です。さらに、小学5年生以上の「ジュニアインベンター」では、プログラミングによる制御とデータロギングを同時に行い、データによってプログラミングを修正するといった活動も行います。

ここ数年世界の教育現場で先進的な科学教育にしきりに求められている、プログラミング、ロボット製作、データロギングがここトゥルース・アカデミーには全てあります。また、教室の外に出てSTEM教育を広く普及する活動を行うのが、NESTNPO法人科学技術教育ネットワーク)なのです。

― すべての学校の、すべての生徒が、コンピュータサイエンスを学ぶ機会を得るべきです ―



トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
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トゥルース・アカデミー リトル・ダヴィンチ理数教室

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トゥルース・アカデミー ロボット・サイエンス

2017年2月15日水曜日

トゥルースの視線【115回】


プログラミング教育開花の陰で
-追悼、シーモア・パパート-




マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授、シーモア・パパート氏が昨年7月、88歳で死去しました。

 パパートの功績を視線106でご紹介しましたが、発達心理学者ジャン・ピアジェの共同研究者、人工知能の研究者、MITメディアラボの創設者の一人として知られています。また、教育用プログラミング言語「LOGO」の開発と教育実践、LOGOのプログラミングでLEGO©ブロックのロボットを動かす「LEGO © LOGO」の開発・普及、LEGO©社のロボットキット「Mindstorms(マインドストーム)©」の考案…と、プログラミング教育・ロボット教育は、パパートが源です。これに留まらず、MITメディアラボ初代所長ニコラス・ネグロポンテやパーソナルコンピューターの父と言われたアラン・ケイらとNPO法人「One Laptop Per ChildOLPC)」を設立し、「100ドルPC」と呼ばれたノートPCを開発し、貧しい国の子供達にPCを届ける活動にも尽力しました。

 201312月オバマ演説『全ての人よ、プログラミングを!』(視線86)を機に、米国を始め世界中でプログラミング教育の火がつきました。日本も2020年に小学校で必修化する方針となり、今やプログラミング教室やロボット教室が雨後の筍のようにできています。当アカデミーは、2000年にレゴ©ブロックとロボットを教材とした教育を始めました。当時は理解を得られず、最初の1年半は生徒10数名という状況を振り返ると隔世の感を覚えます。08年にScratch講座を開いた時も受講者は皆無でした。やっと時代がTruthに追いついた感じです。おそらくパパートも60年代から手掛けてきた教育の意義と必要性が、世界に認められ、多くの子供達がプログラミングを学ぶ時代になったことを心底喜んでいるでしょう。パパートがいたからこそ、Mindstormsを初めとするロボット教材で、彼の愛弟子ミッチェル・レズニックがLOGOを現代版に進化させたScratchで学べるのです。

リトル・ダヴィンチ理数教室でも、今春から毎週の授業にプログラミングの思考を育てる活動を始めます。一方、ロボットサイエンスでは今後対象を現在の小3生~を小4生~にする必要性を感じています。パパートは「デバグの効用(視線109)を唱えています。ロボットがうまく動かないとき、ソフト面やハード面、PCとロボットの通信など、バグの特定に数多くの観点から検証を行わなければなりません。正直なところ、小3ではまだ難しいと実感しています。子供は、幼児期との永久の決別である「9歳の危機」を乗り越えた後に、世界を客観的に見る目を持ち始め、抽象的・論理的思考ができるようになります。今年度は、ブロックサイエンス在籍生が両コースを選択する場合のみ、小3生を受け入れます。

 ところで、最近のロボット教室やプログラミング教室を見渡すと、まるで1つの教科のように、ロボットやプログラミングそのものを学ぶことが目的となっている気がします。「コンピューターが人々の考え方や学び方をどのように変えていくか」という疑問から、パパートが提唱したのは、『コンストラクショニズム』という教育理論です。当アカデミーは、ブロックやロボット、プログラミング、算数教材や理科実験をあくまで一つの教育ツールとして、21世紀に必要な学力を実現するのに極めて有効な『コンストラクショニズム』を日本の教育に根差し、普及することを目標にこの17年間、実践をしてきました。教育関係者からは、「理論と実践が完璧に一致している」という高い評価を得ています。パパートの死を悼むと共に、彼が提唱し目指してきた教育をこの日本の地でより効果的に実現すべく、邁進していきたいと存じます。


トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
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トゥルース・アカデミー ロボット・サイエンス

2017年1月18日水曜日

トゥルースの視線【114回】


2017年 新年のご挨拶
-人工知能とロボットの時代に生きる(3)-
 
 
2017年東京は、今年も暖かく穏やかな三が日を迎えました。明けましておめでとうございます。

昨年末2つの国際的な学力調査の結果が発表されました。日本の子どもたちは、理科・算数数学で順調に学力を伸ばしているようです。

一つは、11/29に発表された国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ)が実施する、小学4年と中学2年が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」2015年の結果。主に学校で学んだ内容について、「知識」「技能」「問題解決能力」の習得状況を評価します。日本は全4教科の平均点でいずれも1995年の調査開始以来、過去最高を記録。中2理科の国際順位は前回から2つ上げて2位となるなど、全教科で5位以内に入りました(4算数5位・理科3位、中2数学5位・理科2)。-日経新聞-

理科の結果について、森本信也・横浜国立大教授(理科教育)は、高得点を取った生徒の割合が増えていることから「『理科離れ』が言われて久しいが、観察や実験の機会を増やして深く考えさせる『課題解決型』の授業が定着してきた成果が表れている」と評価。算数・数学について、藤井斉亮・東京学芸大教授(数学教育)は、学習していない内容の問題でも国際平均並みの正答率がみられた点に注目。「課題解決型の授業で学んだ知識をもとに、自分で考え、未知の問題にも挑戦する姿勢がうかがえる」と解説します。-朝日新聞-

もう一つは、3年に1回行われる経済協力開発機構(OECD)の2015学習到達度調査(PISA= Programme for International Student Assessment。義務教育修了段階にあたる15歳を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について知識や技能を実生活の場面でどう活用できるかを評価します。「科学」「数学」の平均点の順位は、現在の調査方法になって以降いずれも過去最高(科学2位、数学5)。しかし、文章や資料などから情報を読み取り、論理立てて自分の考えを記述する「読解力」は前回より22点低く、4位から8位に下がりました。文部科学省は、問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わったことを挙げ、「複数の画面を見て答える問題などで、子どもたちに戸惑いがあった」としつつ、「情報を読み解き、言葉にする力で課題が浮かんだ。スマートフォンでインターネットを利用する時間が増える一方、筋だった長い文章を読む機会が減っている」(同省教育課程課)と分析しています。OECD教育・スキル局のアンドレアス・シュライヒャー局長(下写真)は、コンピューターへの移行について「情報化社会でのものの読み方の進化を反映させた」と説明。「様々な情報を対比させ、批判的な目で見て、見極める能力が必要になっている」と指摘しました。-朝日新聞-
 

理数の学力が伸びた一方で、TIMSSPISAのアンケートでは、「科学の話題について学んでいる時は、たいてい楽しい」「科学についての本を読むのが好きだ」「理科が自分の将来にとって重要と考えているか」「理科は得意だ」「数学は得意だ」と感じている生徒の割合が以前より上がったものの、意欲面ではまだ国際平均を下回っているとのこと。森本教授は、生徒の探求心の向上などに関する研修に参加した教師の割合が国際平均を大きく下回っている点に注目。「教師が教科書の解説にとどまり、生徒に学ぶ楽しさを教える授業ができていない可能性がある」と指摘しています。

元旦の日経新聞では、「当たり前と考えていた常識が崩れ去る。速まる一方の技術の進歩やグローバリゼーションの奔流が、過去の経験則を猛スピードで書き換えているからだ。昨日までの延長線上にない『断絶(Disruption)の時代が私たちに迫っている」「AIなどの『第4次産業革命』が迫り、人口減の衝撃も様々な断絶を生む。私たちはそんな時代に生きているのだ」と論じています。

このような状況下で、世界がより複雑で不安定になり、多様化が進むと予想される2030年に向けて、子どもたちに求められる『知識・スキル・行動』を特定・再定義し、それらの素質や能力を育むために必要な教育についての長期的な議論を促進すること等を目的としている Education 2030と題するプロジェクトをOECDは、日本を含め全加盟国に参加を呼びかけています。

前出のシュライヒャー局長は、2030年に求められる能力として、(1)グローバル化し複雑化する社会において、多様な協力関係を結びそれらを管理する能力(2)問題の細かな要素を結びつけ価値を生み出す能力(3)情報を整理する能力(4)専門家としての深い知識と、ゼネラリストとしての知識の幅広さをあわせ持つことなどを挙げています。また、忍耐力や自信のある生徒ほど数学の成績が良いというデータを示し、「認知能力以上に重要な要素として、社会的スキルや感情的スキルがある」と述べています。そのうえで、これらを総合した21世紀型の教育カリキュラムとして(1)知識(伝統的な数学・言語などの教科、現代的な知識としてのロボット工学・起業など)(2)スキル(創造性、批判的思考能力、コミュニケーション能力、協働等)(3)人格形成(好奇心、勇気、立ち直る力、倫理観、リーダーシップ等)の3要素を網羅した枠組みづくりが必要であると強調します。

新しい時代の教育に向けての小さな実験場としての当アカデミーとNPO法人科学技術教育ネットワークでは、科学技術教育の分野で、Education2030が目指す教育を実践すべく、スタッフ一同全力で邁進していきたく存じます。ご期待ください。

本年もよろしくお願いいたします。

トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳
 
 
 


トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
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