2016年6月23日木曜日

トゥルースの視線【109回】


ロボット・サイエンスが目指すもの
-ロボット教育の意義を実現するには? -
 
 当アカデミーは、2000年にブロックとロボットを教材としたSTEM教育を始め、2002年からロボカップジュニアに参加、ロボカップ2004ポルトガル・リスボン世界大会以来、ほぼ毎年世界大会に子供たちを送り出し、世界チャンピオンも輩出しています。子供たちの華々しい活躍の舞台裏で、私たちが常々気にしているのは、教育的意義が実現できているかどうかという点です。

 では、ロボット教育の意義とは、どこにあるのでしょうか? ロボット白書2014では、「ロボットを用いた教育は、人間の持つ動きや形に対する認知のメカニズムに強く働きかけることから、学習者に強い印象を与えることができる。結果として、出力されるロボットの動作も、理解しやすいという特長を持つ。また、ロボットは、思った通りではなく作った通りに動作することから、学習成果のリアルな評価を容易に実現できる。さらに、ロボット技術は、コンピュータからモータ制御、センシング技術、機械要素といった横断的、総合的な技術の結晶である。そのため、課題発見能力、自己解決能力を涵養するPBL(問題解決型学習)法等により、複数の要素技術を統合し、統合したシステム全体を最適化する能力を身につけさせる構成論的な教育に適しているといった特長がある。(中略) さらに、ロボットコンテスト活動の多くは、グループで行う製作活動を中心としており、協調作業のスキル獲得やリーダ人材教育にも適用可能である」と記述しています。

 Mindstormsの生みの親シーモア・パパート(視線106)は、『デバグの効用』を唱えます。「学校では間違いは悪いものだと教える。(中略)デバグの哲学は、これと正反対の態度をとるようにと勧める。間違えは、何が起こったのか調べ、何が間違ったのかを理解し、理解することによって修正するように我々を導いてくれるから、有益なものである」(未来社「マインドストーム」)。「デバグ」とは、プログラムのバグ(誤り)を発見し取り除く作業であり、プログラム作成における最も難しい段階である、と言われます。原因を推理して仮説を立て、その証拠を集めて問題の所在を絞り込むデバグの作業は、科学的思考訓練そのものなのです。

 また、ロボット白書2014では、次のような批判にも言及しています。「教育という側面から見ると ロボット教育にどのような教育効果があるかわからない、単に体験して終わりになっていないかとの批判を受けてきている。(中略) さらに、ロボット教育を効果的に使える学習手法であるPBL等の問題解決型教育手法を用いた場合、技術的な問題に対して付け焼き刃的、場当たり的な解決手段をとる習慣がついてしまうという意見がある。抜本的、理論的な解決を探索しようとしない、探索するためのスキルも身に付かないという指摘である」

 ロボットコンテストWROWorld Robot Olympiad2014年世界大会で優勝をした奈良教育大付属中学・科学部を指導する葉山泰三教諭も、「すぐに教えてしまうと、子どもが与えてもらうことが当たり前だと思ってしまうんです。そして、創造する側の楽しさを知らない子どもが多いと感じます。(中略) 生徒が『先生冷たい、先生いじわる』と思わずに、それを楽しめる関係を築けることが大切だと感じています。それは学校だけで構築されるものではなく、家庭教育も重要です。いくら学校で私がそのように伝えても、家で親が『教えてくれないなら辞めたら』と生徒に言ってしまうと、子どもたちもそう思ってしまうんです」と述べています。(東洋経済ONLINE)

 当アカデミーのロボット・サイエンスの講師は、全員がジャパンオープン、世界大会出場経験者の先輩たちで、理工系の大学や大学院に進学し、中にはロボットの研究を続けている者もいます。その講師たちが首を傾げることがあります。それは、自分たちがかつて小中学生だった頃と、今自らが指導する小中学生との取り組み方の違いです。分からないと自分でよく考えもせずにすぐ質問をする、家では何もしていないで授業中しかロボットに触れていない…等々。彼らは言います。「授業ではどんな難しいことでも扱うことはできるが、基本的なことは日々の積み重ねでしか定着することはできない。だから、もっと家でロボットをいじってほしい」

ロボカップジュニアのルールの歴史は、大人の過干渉から子供の自主的な学習をいかに守るか? その闘いの歴史である

-ロボカップジュニア関東ブロック初代委員長 中島晃芳-

 

                               




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2016年6月1日水曜日

トゥルースの視線【108回】


リトル・ダヴィンチ理数教室のカリキュラム再編成について
-より年齢と理解度に合わせたカリキュラムに-
 
 
当アカデミーが根底においている「コンストラクショニズム」に基づく教育を教科の学習に導入することを目的に、2003年から試行錯誤してカリキュラム作成を始めました。そして、2005年にスタートした「ハンズオン算数くらぶ」は、2006年「リトル・ダヴィンチ」に、2011年に現在の「リトル・ダヴィンチ理数教室」へと発展して参りました。その間、カリフォルニア大学バークレー校ローレンスホール科学研究所が開発する直接体験型の理数教育プログラム「GEMSGreat Explorations in Math and Science:ジェムズ)」やアメリカの環境教育プログラム「Project Wild」、データロガーや電子ブロックなどの電子教材、Scratchによるプログラミングなどを積極的に取り入れてきました。

 
2006年「リトル・ダヴィンチ」開講に際して、次のように紹介いたしました。『「人類史上最も偉大な天才」とも「真理を追い求めた知の巨人」とも称され、芸術から科学まで、あらゆる分野に圧倒的に卓越した才能を発揮したダヴィンチ。子供は皆、科学者であり、芸術家として生まれてきます。誰もが皆、知的好奇心や探究心を十分に持った「小さなダヴィンチ」なのです。その資質を十分開花させたいと願い、「リトル・ダヴィンチ」と名づけました』。数学者や科学者が行っている研究行為を、子供たちも実際にやってみる機会を創るという、その理念は全く変わっておりません。

 

この5年間で「リトル・ダヴィンチ理数教室」の受講生が飛躍的に増え、保護者の皆様の関心の高さと期待の大きさをひしひしと感じております。しかし一方で、特に算数において、授業レベルとの不一致から一部問題も起きるようになってきたようです。最終段階では、指導要領の学年をはるかに超えている内容も多く含まれているので、一朝一夕にできるものではありません。それまでに、規則性あるものを美しく感じる心、規則性を発見し、数式で表現できる力を十分に養っておく必要があります。そのゴールを目指して、各ステップのカリキュラムを体系的に組んでおります。

当アカデミーの授業カリキュラムは、「心理学のモーツァルト」と称されたヴィゴツキーが唱える教育理論『発達の最近接領域』と深く関連しています。「子どもは集団活動における模倣(注:教師や仲間とならできること)によって、自主的にすることのできることよりもはるかに多くのことをすることができる。大人の指導や援助のもとで可能な問題解決の水準と、自主的活動において可能な問題解決の水準とのあいだのくいちがいが、子どもの発達の最近接領域を規定する」と述べています。すなわち、『発達の最近接領域』とは、「一人ではできないことでも、仲間との関係において、あることができる、という行為の水準ないしは領域」のことなのです。


これは、課題設定の方法として当アカデミーでも最も重視している考え方です。課題設定が子どもの発達水準よりも低すぎれば意味がありません。また、逆に高すぎれば、自らの活動から自分で知識を獲得し構築することができず、いわゆる「教えてもらわなければ、できない」という困った状態になってしまいます。要するに、自分一人では解決できないけれど、お友達と意見を交換したり刺激を与え合う中で、あるいは先生と一緒に考えたり、ちょっとしたヒントやアドバイスをもらったりしながら、自分の力で到達し得るレベルの課題設定をしなければならない、ということなのです。

その観点から、学年幅を広げ、もう少し緩やかな段階を踏んでコースの最終目標に到達できるよう、カリキュラムを再編成することに致しました。新鮮な発見が学問には不可欠なので、数量は学校より少し先取り、図形は大幅な先取り学習となることには変わりません。それに伴い、最終ステップでは、さらに高学年内容を追加する予定です。また、算数・数学学習の観点から、プログラミング学習をさらに低学年からスタートさせる予定です。さらに強力なカリキュラム体系となりますので、ご期待ください。

 


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳


 

 


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