2005年11月1日火曜日

【第12回】オープンエンドアプローチ②


-真の学力とは?CCC(クロス・カリキュラム・コンピタンス)-

OECDの学習到達度調査(PISA)の2003年調査では15歳児の学力を次の4つの観点から調査しています。

(1)数学的リテラシー 
数学が世界で果たす役割を見つけ,理解し,現在及び将来の個人の生活,職業生活,友人・家族・親族との社会生活,建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠に基づき判断を行い,数学に携わる能力

(2)読解力

自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解,利用し,熟考する能力

(3)科学的リテラシー

自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し,意思決定するために,科学的知識を使用し,課題を明確にし,証拠に基づく結論を導き出す能力

(4)問題解決能力

問題解決の道筋が瞬時には明白でなく,応用可能と思われるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学,科学,または読解のうちの単一の領域だけには存在していない,現実の領域横断的な状況に直面した場合に,認知プロセスを用いて,問題に対処し,解決することができる能力
PISAの「リテラシー」とは、従来の読み書き計算能力ではなく、「成人生活のための知識・技術」を意味します。学校の学習に留まらず、生涯を通じ広くコミュニティとの相互関係を通して獲得されるもの、すなわち、生涯学習者としての基礎が身に付いているかを測定しているのです。
これは、94年に欧州評議会などで、「独立的で責任ある個人の形成」すなわち「責任ある市民の養成」を新しい教育の最大目標にすべきと訴えたことにに端を発しています。また、95年OECDのINESプロジェクト総会(国際教育指標開発の大規模プロジェクト) では、教育の認知的側面だけではなく非認知的側面(忍耐・寛容・批判力・総合力・分析力など)の指標開発の必要性が満場一致で承認されました。そして上記(4)のように、PISAではCCC(Cross Curriculum Competance)として捉えられている問題解決力、批判的思考、コミュニケーション能力、忍耐、自信といった教科の枠を横断した能力こそ大事であり、それを測ることの重要性が提起され、各種の実験が行われてきたのです。
日本では、ゆとり教育が槍玉に上がり、従来の知識注入・作業訓練型に回帰しているようです。また、総合学習の時間を減らし授業時間増加の必要性が議論されています。しかし、OECD加盟国で授業時間が最も少なく、総合学習・グループ学習・プロジェクト学習中心のフィンランドが学力世界一であることを考えると、本当に正しい方向に向かっているのか?疑問を感ぜざるを得ません。従来の基礎基本や学力の概念を捉え直し、21世紀に求められる知識を子供たちが身近に感じ、興味を持って楽しく学ぶことができるような教育システムを構築すべきではないでしょうか?
考えるプロセスに働きかけ、多様な考えを引き出す「オープンエンド・アプローチ」は、教師の高い指導力を必要とする教育手法ではありますが、21世紀の新しい学力観を実現する極めて有効な指導法であると確信しています。
【参考】OECD東京センター新春講演会「OECA/PISA、教育大国フィンランドと日本の課題」(早稲田大学名誉教授・フィンランド科学アカデミー外国会員 中嶋博)
To be continue・・・