― データロガーと科学的リテラシー ―
前回、1月にロンドンで開催された教育展示会BETTで、ICT教育が日本ではるかに進んでいる状況に出合ったことをごく一部ですが取り上げました。今回はその続きになります。
次に目立ったのは、データロガー(データロギング機器)です。理科実験の際に様々なセンサーで記録を取り、そのデータをパソコンに送ってグラフ化し、データの分析や解析を行うためのツール。当アカデミーが所属するRISE科学研究会で毎年夏に開催している「サマーキャンプ」でも、このデータロギングをレゴのロボットキットを利用して行っていますが、それよりもはるかに精密な測定ができ、センサーの種類も豊富なのが特徴です。レゴのNXTに自社製のセンサーを取り付けるアダプターを作っている会社もありました。また、実験のための器材やカリキュラムも用意され、理科教育にとって新しいこの機器を使い易くすると共に、授業のためのヒントを豊富に提供しているようです。
また、実際に社会で活躍している機械や産業システムのモデルをブロックで作り、モーターやセンサーも取り付け、パソコンでプログラムを組んで制御する装置も結構見られました。これはレゴのNXTロボットキットや来年度の教材WeDoでもできますが、接続できるモーターやセンサーの数が多く、レゴのような特定のブロックだけでなく、様々な素材で作ったモデルを制御できるように設計されていたり、パソコン上でモデルのシミュレーションをできるようにしたりと、各社工夫を凝らしていました。
レゴ社もブースを出しており、巨大なNXTロボットのディスプレイで一際目立っていました。展示品はNXTロボットキットとWeDoだけで、ロボットを基軸とした展開を強化していく方針を強く打ち出しているような印象を受けました。それでも、多くの学校の先生たちが集まっており、スタッフは説明や質問で皆てんてこ舞いの様子でした。また、あるレゴ社の代理店は、NXTロボットに金属の部品を組み合わせたセットを展示しロボットを動かしてデモを行っており、日本では考えられないので大変驚きました。
今回BETTを見て感じたことは、教育のICT化が日本よりはるかに進んでおり、「何を教えるか?」ではなく、「どのように教えるか?学ばせるか?」「どんな能力を育てるか?」に重点が置かれていることです。特に理科実験では、予定調和的な結果が出たら正解というやり方ではなく、収集したデータを分析・解析することによって、情報を読み取る・情報を取捨選択していく・情報から法則性を導き出す、といった情報リテラシー(情報活用能力)を育てる目標も含まれています。また、ロボットや機械モデル制御のためのプログラミングを通して、論理構造やアルゴリズム(物事を進めていくための明確な手順、特に問題を解くための手順)を組み立てる能力を育てることができます。
既成の知識を理解し覚えるだけではなく、どのようにしたら新しい知識を獲得し知識体系を組み立てられる能力を育てられるか?そして、それを現実の世界に活用していくか?ということの重要性を改めて感じました。これこそ、今世界が求めているPISA型の学力(視線第12回・23回・2008年新年のご挨拶参照)における「科学的リテラシー」を生み出す教育方法なのです。今回の展示会で得た教訓を教訓としてだけで終わらせるのではなく、目にした教材を近々にも実際の授業に取り入れられるよう、全力で取り組んでいます。ご期待下さい。
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To be continue・・・ |
教育用レゴブロックや算数ブロック、ロボットなどの教材で学ぶ科学教室トゥルース・アカデミー代表の中島晃芳です。 このブログは、当アカデミーが月に1回発行しているお知らせ「Truth通信」に、2004年より掲載している「トゥルースの視線」をまとめたものです。 科学教育や算数教育、ICT教育、ロボット教育、ロボカップジュニアなどについて私の雑感を書き記しています。ぜひご一読いただければ幸いです。