アメリカで開発された環境教育プログラム「プロジェクトワイルド」の幼児向けカリキュラムが、平成25年度から日本に導入されることになりました。それに先駆け、10月に行われた指導者養成講習会に参加してきました。東京会場はすでに満員となっており、大阪会場の方に出向かなければならないほど人気だったようです。
「プロジェクトワイルド」は、当アカデミーの夏期特別授業や、NEST主催サイエンス・キャンプのプログラムの中でもたびたび導入しています。「自然や環境のために行動できる人」の育成を目的としていますが、アクティビティはそんな堅苦しいものではなく、子供たちにとっては「楽しい!」とまず印象が残る内容に仕上がっています。幼児から大人までを対象とした、100以上ものアクティビティがあります。その中から幼児向けのものを抽出し、さらに幼児に実施するうえでの工夫の仕方や追加アクティビティの紹介などでまとめられたのが、今回のテキスト「Wild About Early Learners」です。同テキストの著者であり、米国アイダホ州プロジェクトワイルドのコーディネーター、ロリ・アダムス氏が来日しての講習会という貴重な機会でした。
アクティビティに入る前にロリ先生が語ったのは「家庭での学習」の重要性でした。復習や宿題ではなく、どんな活動でも、その日経験したことを家庭で親に話し、親と共有する時間を持つということです。幼児には、活動内容を記憶しておくことや、文字で記録するのが難しいので、絵で描いたり、見つけた植物を貼りつけたり自由に使える「ジャーナル(活動日誌)」を用意します。その作り方を、不要となったチラシや紙で制作することから始めました。
様々な活動をロリ先生の指導のもとで体験していきましたが、いずれのアクティビティにも楽しげなグッズや、ビジュアルの効いた絵や写真、ポスターなどが豊富に準備されていることが印象的でした。幼児は「感覚」で吸収し、また「感じる」ことが重要な時期であるということでしょう。
生きているもの、生きていないものを分けることから始めて、野生と家畜を考える「野生ってなんだろう?」、様々な色をしたカエルのおもちゃをかくれんぼさせて擬態(カモフラージュ)を体験する「ジャングルゲーム」、鳥のえさに見立てた数種類のものをくちばし代わりのどの道具で食べるのがふさわしいかを考える「すばらしき適応」…などなど、全部で約20種類のアクティビティのうち5~6本を体験できました。1日がかりの講習会でしたが、大人でもいずれも楽しく夢中になってしまうので、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
活動の中で指導者が大切にすることは、①子どもの答えはすべて受け入れる、②子どもの発言を待つ、③答えを教えない、の3点であることをロリ先生は繰り返されていました。「わかったか、わからないか」ではなく、「発見する」「体験する」ことこそ幼児の環境教育なのです。また、幼児向けのテキストには、工作や絵を描く活動、歌を歌ったり音楽を聴いたりすることも組み込まれています。子どもたちが創作しやすいような準備の方法、歌っているだけで植物や動物の特徴を感じられる歌の披露など、著者だからこそ知る苦労や体験を聞くことができました。カリキュラムを生む苦しみ、届ける喜びを共感できました。
この素晴らしい環境教育プログラムをいち早く子どもたちに届けていきたいと思いますが、アメリカと日本という環境の違い、教室での活動などの制限を、どうクリアしてくか、ここから私たちのカリキュラム開発が始まります。今年のダヴィンチ・キッズ科学の活動では、昨年当アカデミーオリジナルで開発し、区立の保育園で実施したプログラム「四季のお天気観察」の内容を抜粋して行っています。一度実施したアクティビティをブラッシュアップして子どもたちに届けられる一方、園庭など環境的に教室ではできない活動もあります。その部分はご父母様にご協力いただき、ご家庭での活動でサポートしていただいていること、心より感謝申し上げます。ご家庭での協力をいただいてこそ、幼児の科学教育が実践できます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
池田Y
To be continue・・・