― 公式を暗記する子どもではなく、公式を創る子どもを ―
算数が嫌いな幼児はいません。乳児でさえ数についての基本概念を持っており、生後5ヶ月の乳児が基本的なたし算とひき算ができるとも言われています(1992Wynnの研究) 。
また、幼児たちが作ったレゴの作品を見ると見事に左右対称になっていることも稀ではありません。なのに、小学校に入り学年が上がるにつれて算数が嫌いになる率が増えていくのは、なぜなのでしょう?
人の学習の認知プロセスを明らかにし教育への応用を研究しており、算数・数学における子供のつまづきに関する研究も行っている慶應義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授は、以下のよう「認知科学的アプローチ」を紹介しています。
○認知的学習観
・学習は主体的な行為である
・学習は知識の変容である(累加または再構造化)
・学習は先行知識によって導かれる
・学習は領域固有である
○人間は知的好奇心から学ぶ
人間は自分及び自分を取り巻く世界について整合性を理解したいという基本的な欲求を持つ存在
・環境内に規則性を見出そうとする
・新しく入ってくる情報を既有の知識に照らして解釈。新しい情報が既有の知識と整合性を持つかを常にチェックする
・抽出した知識を類似の別の場面に積極的に適用
○人間は内発的な興味から学ぶ
では、どのように子供たちの知的好奇心や内発的な興味を刺激し、主体的な学習を実現すればよいのでしょう?
算数に限らず、小学3年生くらいまでは抽象的な思考を押し付けてはいけない時期です。例えば、小学高学年ならば算数の問題として当たり前に取り組める鶴亀算の問題も、小学低学年になると「カメが足を引っ込めたらどうなるなの?」「鶴が1本足で立ってるの見たことあるよ」などと返答することがあります。
これは決してふざけているのではなく、具体的な事物や事象の複雑さに目を奪われ、それを学ばなければならない時期だからです。この時期に具体物を通した学び(ハンズオン・ラーニング)を楽しく豊かに行うことが必要なのです。
リトル・ダ・ヴィンチ算数教室では、パターンブロックやポリドロンなどの算数ブロック教材や日常にある様々な具体物を用い、
●感性を生かす ―感じる心を大切にする
●手を使って考える ― 見る・さわる・あそぶ
●オープンエンドの学び ― 考えるプロセスを重視する
●コンストラクショニズム ― つくる・発見する・広げる
を基本コンセプトとし、
①事象と出会う(問題提起)
②関わりたいと感じる(知的好奇心の刺激)
③手を動かして考える(創作・操作)
④「問い」の質を拡げ、深める(探求)
⑤見えないものが見えてくる(本質の発見)
⑥考えの道筋を振り返る(数学的表現)
⑦現実の世界に目を向ける(現実への応用)
というプロセスで、認知的アプローチに基づいた算数活動を行います。公式を覚えてその運用のトレーニングを行うという従来型の学習では決して得られない、算数の楽しさを感じながら、雑多な現実から法則性をつかみ取り公式を作り出せるような子供をたくさん育てたいと思っています。
【参考文献】
『人が学ぶということ―認知学習論からの視点』(今井むつみ・野島久雄)北樹出版
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教育用レゴブロックや算数ブロック、ロボットなどの教材で学ぶ科学教室トゥルース・アカデミー代表の中島晃芳です。 このブログは、当アカデミーが月に1回発行しているお知らせ「Truth通信」に、2004年より掲載している「トゥルースの視線」をまとめたものです。 科学教育や算数教育、ICT教育、ロボット教育、ロボカップジュニアなどについて私の雑感を書き記しています。ぜひご一読いただければ幸いです。