2019年4月8日月曜日

【第139回】PISAの大人版「国際成人力調査(PIAAC)」①

 ~ 日本人の読解力と数的思考力が危機!? ~

【第139回】トゥルースの視線

OECD(経済協力開発機構)が行う国際的な学力到達度調査「PISA(ピザ/ピサ)」が現在先進国の子供たちに求める学力であることは、既に常識となっています。直近の2015年の結果では、科学的リテラシーが2位、数学的リテラシーが5位、読解力が8位でした。視線132回・133回でご紹介した「東ロボくん」プロジェクトを行った国立情報学研究所教授・新井紀子教授は、読解力について次のように警鐘を鳴らしています。「2000年から6回連続でトップ10入りしています。ただ、この数字を過信しないでください。日本は世界にも稀に移民の少ない国です。日本で生まれた日本語を母語として育つ子どもの割合が極めて高い。移民の多いドイツやフランスなどに比べて読解力が高い、というのは数字のマジックに過ぎないからです」と。そして、全国読解力調査を行い、3人に1人が教科書を読めない(内容理解を伴わない表層的な読解もできない)という結論に達しました。

実は、読解力の危機は子供に限ったことではないのです。

PISAは15歳を対象としていますが、大人版のPISAとも言うべき「国際成人力調査」(PIAAC/ピアック)の第1回調査をOECDは2013年に行いました。OECD加盟国等24か国・地域が参加し、16歳~65歳までの男女個人を対象として、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」及び調査対象者の背景(年齢、性別、学歴、職歴など)について調査。OECD各国では、経済のグローバル化や知識基盤社会への移行に伴い、雇用を確保し経済成長を促すため、国民のスキルを高める必要があるとの認識が広まっています。そのような中でPIAACは、スキルの向上に対する教育訓練制度の効果などを検証し、各国における学校教育や職業訓練など今後の人材育成政策の参考となる知見を得ることを目的としています。

結果は、読解力・数的思考力が1位、ITを活用した問題解決力が10位でした。これを見ると、日本の大人は国際的にも非常に優秀であることは間違いありません。また、読解力ついては、5段階中レベル3・4の者の割合が参加国中最も多く、2以下の者の割合は最も少ない。レベル5の割合も5番目に多い。レベル1以下が10%未満であるのは参加国中日本のみ。数的思考力は、レベル3・4の者の割合が参加国中最も多い一方、レベル2の者の割合も2番目に少なく、レベル1以下の割合は最も少ない。レベル5の割合は7番目に多い。1以下の者の割合が10%未満であるのは、参加国中日本のみ。というように、中間層の厚さが目立ちました。これは世界に誇れる教育水準の高さに起因しているように思います。

しかし一方で、読解力と数的思考力は、ホワイトカラーの仕事(専門職)にはレベル4以上が必要とされています。高度な知的作業ができるスキルをレベル5とするならば、日本におけるその割合は読解力で1.2%(OECD0.7%)、数的思考力で1.5%(OECD1.1%)しかいません。一方、レベル3以下だとオフィスワーカーに必要なスキルに達していないとされます。その割合は76.3%(OECD87%)になります。このことから次のようなショッキングな指摘もあります。

・日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。

・日本人の3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない。

さらに深刻なのは、読解力と数的思考力で確かに1位ですが、年齢別の得点を見ると、16~24歳の数的思考力ではオランダとフィンランドに抜かれて3位に落ちるという事実です。これからの日本を担う若者たちの実情を考えると日本の行く末を案じる気持ちも分からなくありません。

トゥルースアカデミー代表 中島晃芳

トゥルースアカデミー
http://truth-academy.co.jp/

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