2013年4月24日水曜日

トゥルースの視線【77回】

「リケジョ(理系女子)」の時代到来?②
-なぜリケジョは少数派なのか?(その1)-

十数年前でしょうか、当アカデミーが学習塾だった頃、算数が抜群に得意な女の子がいました。
夏休みに行った特別授業では、小6と中3の受験生全員に同じ図形問題を出題するという恒例行事があり、その年は彼女が一番先に正解し、全員の前で解説授業を行いました。

数年後彼女が大学生になった頃、街でその母親と偶然会い、こんな話を聞きました。「ウチでは小さい頃からテレビゲームを禁止していたせいでしょうか?大学生になってもコンピューターに興味がないみたいで・・・。子供に何を与えるか、与えないか、という判断は親としてはとっても難しいことですね」と。

理数教室としての当アカデミーでは圧倒的に男子が多く、国内のロボットコンテストでもその傾向は変わりません。このような現状を考えるとき、前述の母親の言葉が思い出されます。ひょっとして育て方、教育の仕方にリケジョが生まれることを阻む要因があるのではないか?

河野銀子氏(山形大学地域教育文化学部准教授)は、『女子高校生の「文」「理」選択の実態と課題』という論文で、実に興味深い研究結果を発表しています。

「理系女子の約6割が高校時代に専攻を決定しており、その決定は担任や理数系教科などの教師の影響が強い。理系女子は自分だけで専攻を決めるのを逡巡する傾向があるためだ。『女子は文系向き』という社会通念に逆らって理系の世界に飛び込むには、他者からの助言や励まし、ロールモデルを知ることが重要である」と言うのです。

河野氏は、高校での進路選択は生徒の関心と学力で行われるものの、これらは高校になって急に生じるのではなく累積的に蓄積されるものなので、小中学生の理科の学力や関心について言及しています。

PISA(OECD生徒の学習到達度調査)TIMSS(国際数学・理科教育調査)の国際学力調査を見る限り、日本の中学生の科学的リテラシーにおいて、男女間に学力差はない。

■高得点にもかかわらず、日本の子供たちの理科に対する関心や態度が非常にネガティブであり、ネガティブさは女子により顕著である。

■国内の比較的大規模な調査では、中学入学後に女子のネガティブさが好転せず、中1から中2にかけてますます理科が嫌いになっていくことが明らかになっている。

日本の小中学生の女子の理科の学力は男子と変わらないが、理科への関心は男子より低く、その差は学年進行とともに拡大する実態が明らかになったという。一体なぜなのだろうか?

アメリカ大学女性協会(AAUW) のレポートでは、特に数学と理科の授業で、教師から生徒への働きかけにおいて男子生徒に対する期待度が高く男女差がみられる、と指摘している。

イギリスの理科授業に関する研究と実践のプロジェクト(GIST)では、男子が実際以上に男性的に見えるような行動をとることがあり、教師がそれを強化している、と。

科学そのものがもつジェンダー・ディバイス(西洋近代科学が白人男性の価値や行動と親密であること)が学校での科学でも浸透しているため、女子の興味や話し方、学び方が授業で期待されている科学的態度や価値と異なり、そのため女子は周辺に置かれている、というオーストラリアの研究もあるとのこと。

このように、欧米の研究では、理科授業での教師や男子生徒の態度、そして理科という教科の特性自体も、女子が理科に対してネガティブになっていく要因であることを指摘しています。

では、日本の教育現場では、どうなのでしょうか?
次回、その理由をご紹介したいと思います。


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

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