2011年3月1日火曜日

【第58回】科学的リテラシー②

~ メタ認知アプローチ ~

『メタ認知』というのは、「認知を認知すること。人間が自分自身を認識する場合において、自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識すること。言い換えると、自分の行動や考え方、知識量、特性、長所、短所などを、別の次元から眺めて認識(モニター)すること」です。

和田秀樹氏(精神科医、認知心理学者)は、「これからのビジネスリーダーにとって一番重要な資質は問題解決能力(正しい決断ができること)であり、その高め方は、①幅広く知識を増やし、②それを使って推論し、③メタ認知により自分の状況を的確に把握することである」と述べています。また、メタ認知は単に自分の状態を知るだけではなく、知り得たことから、自分がこれから何をしたらよいのか考え、より良い方向へ自分を変えていこうとする、自己修正能力(自己改造能力)も併せ持っており、これを「メタ認知的行動」と呼んでいます。激動する現代社会の中でリーダーとして生き残るためには、この力が是非とも必要であり、これを繰り返していくことが自己の成長にもつながるのです。

このように、メタ認知は自己の認知活動を評価し制御するはたらきをもつため、人間を対象としたあらゆる学問や研究領域の問題と密接に関与しています。特に、メタ認知を構成している能力をいかに発展させていくかは、「教育の問題」です。また、自己の活動の評価は価値観や倫理観にも影響されるため、人格形成やコミュニケーションの問題とも密接な関係があります。

前回紹介した森本教授はこう続けています。
「メタ認知を基本としながら理科学習を子どもに進めさせるには、『知識の記憶を強いる』授業ではなく、『知識を構築させる』授業が必要である。こうした授業では、単純な知識の記憶ではなく、知識の習得プロセスを理解し、習得した知識を問題解決において自律的に活用する能力の形成が志向される。それは、PISAのいうリテラシーの形成に他ならない

そして、「子どもが自然現象について理解するために、そこに隠された法則を追究すべく問題解決を図ろうとすること、言い換えれば見通しや目的意識意をもって学習に臨むこと、ということが先ず必要である。そして、見通しや目的意識をもって学習に臨むためには、予想や仮説が必要である。予想や仮説としての学習課題を明確にするためには、当然のことながらそのもとになる既有の知識や経験が必要となる。予想や仮説を検証、すなわち証拠となる事実を観察・実験から導き出すことにより、結果的に子どもの既有の知識は明確な根拠のもとで広がる。こうして、年齢に応じてもっている知識や経験に基づき予想や仮説をつくり、これを観察・実験を通して検証し、確かな根拠のもとに科学的知識を構築していく能力が形成されていくのである」と。

次回、具体的な指導法や学習法について述べたいと思います。

【参考資料】
『子どもの科学的リテラシー形成を目指した生活科・理科授業の開発』(森本信也・横浜国立大学理科教育学研究会編著)
『学習活動におけるメタ認知の活用について~小学校での実践例をとおして~』(中村祥一・千葉県総合教育センター)

To be continue・・・