NESTモンゴル高専支援プロジェクト(1)
-モンゴルに日本の高専を創る-
20014年9月8日(月)、眼下に広がる草木もまばらな荒野の起伏を見下ろしながらモンゴルの上空を飛び、ウランバートルのチンギスハーン国際空港に到着したのは、午後7時過ぎ(日本時間午後8時)。まだ夕暮れには時間が早いのか、明るい空が大きく広がっていました。NPO法人科学技術教育ネットワーク(以下、NEST)の理事長である中西佑二・産技高専名誉教授、理事の黒木啓之・産技高専准教授、モンゴル工業技術大学(IET)理事のセルゲイン氏たちが、私たち一行3名―NEST理事の富永一利・産技高専教授、事務局長の池田(Truth Academy統括マネージャー)、私―を迎えてくれました。セルゲイン氏はその後帰国の途に就くまで終始私たちの面倒を看てくれました。
今回モンゴルを訪問した目的は、モンゴル高専の学生にロボットの授業を行い、今後の学習のためにLEGO Mindstorms RCXを寄贈することにありました。モンゴル高専は設立したばかりで、9月1日に第1期生の入学式を迎えたばかりです。中西理事長は、「一般社団法人モンゴルに日本式高専を創る支援の会」代表代行理事も務め、昨年10月から西山明彦・産技高専名誉教授と共にウランバートルに在住し、現在もモンゴル高専開校の準備をしていらっしゃいます。国内からもNEST理事である井上徹・産技高専教授もバックアップし、モンゴル初の高専で初めての入学生を迎えることができたとのことです。学校名も「モンゴル・コウセン」と日本語がそのまま付けられています。
モンゴルは1911年中国清国から独立し、独立の後ろ盾となっていた帝政ロシアがソ連になってからは社会主義国家として親ソ路線を続けていましたが、ペレストロイカの影響下、1992年に民主主義国家に転身し現在に至っています。ロシアと中国に挟まれているという地理的な理由から、その歴史は両大国に大きく左右され翻弄されてきたようです。現在も内モンゴルは中国の自治区となっています(人口は漢民族移入のため80%が漢民族)。モンゴルの基幹産業は、畜産業を中心とした農牧林業、モリブデン、銅、金を中心とした鉱業です。鉱物資源が豊富にあり、石炭や石油(推定埋蔵量5000万バレル )も外国投資家の注目を集めているようです。そのため、バブル景気に沸き建築・不動産ラッシュだそうです。
相撲では身近に感じるようになったものの、モンゴルと言えば広大な草原を馬で駆け巡っているくらいのイメージしかなかったのですが、ウランバートルは大都会です。しかし、道路は荒れて凸凹なところも多く、4泊滞在したホテルのシャワーもお湯が出たのは、1日だけという有り様。大渋滞を起こしている自動車のほとんどは日本製の中古車。大きな橋は中国や日本が作ってくれたとのこと。巨大な壺のような2基の工場は、お湯を沸かし、市内に張り巡らされたパイプでスチームを送っているそうです。社会資本の整備がとても立ち遅れているのを痛切に感じます。石油の採掘も海外資本に任せ、90%は国外に持ち出され、10%程度しか国内に残らない。それでも、「技術」を持っていないから、採掘してもらわないよりもずっといいのです。
モンゴルが国として成長し続け、現在格差の大きい社会を改善し国民全体を豊かにしていくには、技術力を向上させること、技術を持った人材を育成することは、必要不可欠であることは言うまでもありません。日本の高専には過去に多くのモンゴルの青年が留学しています。さらに、現在の文部科学大臣ガントゥムル氏も日本の高専留学生だったことから、モンゴルに日本の高専を創るプロジェクトが始まったのです。実践的技術者養成システムとして国際的に評価の高い日本の高専は、ものをつくることができる人材を必要としているモンゴルにとって実に有益と判断したとのことです。
帰国後の9月15日に、新たに2校の高専が入学式を迎えたそうです。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
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