強力な学びを引き出す「ハンズ・オン学習」①
-理科教育におけるハンズ・オン学習
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トゥルースの視線で何度か取り上げましたが、当アカデミーの指導理念の一つである『ハンズ・オン(hands-on)学習』の意義について改めて考えたいと思います。直訳すると「直接手を触れる」「実際に参加する」という意味で、教育界では「実践的に学ぶ、参加・体験型の学習活動」を指します。ここでは、教える側が知識を一方的に教えるのではなく、学ぶ側が能動的・主体的に学習することが重視されています。また、本で学ぶよりも実際に行った方が、活動の楽しさや学ぶ意欲につながりやすく、学習効果が高まると考えられています。特に理科の学習では、「科学を行うとは何か?」「科学者がどのように研究をしているのか?」を、ハンズ・オン学習抜きにして子どもたちに理解させることは、考えられません。
理科教育を専門としている千葉大学大学院の藤田剛志教授は、人文社会科学研究第17号で初等理科教育におけるハンズ・オン学習の歴史と定義、あるべき姿について、興味深い考察を行っています(オヤオ・シェラ氏と共著)。この論文では、ハンズ・オン学習の効果について、体験を重視する余り「這い回る経験主義」に陥らないか?という批判があることも紹介されています。また、ハンズ・オン学習の展開の仕方について、下手をすると、問題の言明、実験計画、データの解釈、書き方までが教師の厳格な統制下に行われ、子どもたちが何をどうすればよいか、考えなくても活動できるように具体的な指示が料理本のように与えられる危険性も指摘しています。
まず、ハンズ・オン学習の定義として、「理科のハンズ・オン学習は、人を事物の操作に積極的に関わらせ、知識や理解を得させるあらゆる教育的経験である(Haury and Rillero,)」という考えを紹介しています。しかし、実物を単に眺めたり触ったりするだけでは、科学概念の理解は深まりません。子どもたちが何かを行うとき、ある事物を操作するとき、事物の持つ意味を考えさせることが必要です。そのためには、『探求に基づくハンズ・オン学習』が必要であると、この論文は主張しています。
探求的行為として、次の一連の行為を紹介しています。
① 追求すべき問いを発する
② 探究のための手順を考える
③ 予想する
④ 質的・量的データを収集する
⑤ 観察しデータを記録する
⑥ データを操作しグラフや表を作成する
⑦ データを解釈し予測と結果とを関連づける
こうした探求的行為を含むハンズ・オン学習により、子どもたちが取り組んでいる問題を解決するには、教師の指示に単純に従うよりも、何を行うべきか、どう行うべきかを自分で考えなければならないので、批判的思考力が高められる、というのです。
この論文を読んで、「リトル・ダヴィンチ理数教室」ジュニアⅠ・Ⅱで行っている理科実験の方向性が間違えていなかったことを改めて確信しました。小学低学年が対象のため、1つの活動で探求的行為を網羅することはできませんが、全米の学校教師向けの理数カリキュラム「GEMS(Great Explorations in Math and Science:ジェムズ)」とイギリス製のデータロガー「Easy Sense(センサーを使って実験データを収集しグラフ化する電子機器)」を用い、いくつかの活動を組み合わせることによって、①~⑦の実践はできていると思います。
新しい教育に対する挑戦を続けていく勇気を得た気がします。
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳
【参考文献】
人文社会学研究第17号「初等理科教育におけるハンズ・オン学習」(オヤオ・シェラ、藤田剛志)
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