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2017年2月15日水曜日

トゥルースの視線【115回】


プログラミング教育開花の陰で
-追悼、シーモア・パパート-




マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授、シーモア・パパート氏が昨年7月、88歳で死去しました。

 パパートの功績を視線106でご紹介しましたが、発達心理学者ジャン・ピアジェの共同研究者、人工知能の研究者、MITメディアラボの創設者の一人として知られています。また、教育用プログラミング言語「LOGO」の開発と教育実践、LOGOのプログラミングでLEGO©ブロックのロボットを動かす「LEGO © LOGO」の開発・普及、LEGO©社のロボットキット「Mindstorms(マインドストーム)©」の考案…と、プログラミング教育・ロボット教育は、パパートが源です。これに留まらず、MITメディアラボ初代所長ニコラス・ネグロポンテやパーソナルコンピューターの父と言われたアラン・ケイらとNPO法人「One Laptop Per ChildOLPC)」を設立し、「100ドルPC」と呼ばれたノートPCを開発し、貧しい国の子供達にPCを届ける活動にも尽力しました。

 201312月オバマ演説『全ての人よ、プログラミングを!』(視線86)を機に、米国を始め世界中でプログラミング教育の火がつきました。日本も2020年に小学校で必修化する方針となり、今やプログラミング教室やロボット教室が雨後の筍のようにできています。当アカデミーは、2000年にレゴ©ブロックとロボットを教材とした教育を始めました。当時は理解を得られず、最初の1年半は生徒10数名という状況を振り返ると隔世の感を覚えます。08年にScratch講座を開いた時も受講者は皆無でした。やっと時代がTruthに追いついた感じです。おそらくパパートも60年代から手掛けてきた教育の意義と必要性が、世界に認められ、多くの子供達がプログラミングを学ぶ時代になったことを心底喜んでいるでしょう。パパートがいたからこそ、Mindstormsを初めとするロボット教材で、彼の愛弟子ミッチェル・レズニックがLOGOを現代版に進化させたScratchで学べるのです。

リトル・ダヴィンチ理数教室でも、今春から毎週の授業にプログラミングの思考を育てる活動を始めます。一方、ロボットサイエンスでは今後対象を現在の小3生~を小4生~にする必要性を感じています。パパートは「デバグの効用(視線109)を唱えています。ロボットがうまく動かないとき、ソフト面やハード面、PCとロボットの通信など、バグの特定に数多くの観点から検証を行わなければなりません。正直なところ、小3ではまだ難しいと実感しています。子供は、幼児期との永久の決別である「9歳の危機」を乗り越えた後に、世界を客観的に見る目を持ち始め、抽象的・論理的思考ができるようになります。今年度は、ブロックサイエンス在籍生が両コースを選択する場合のみ、小3生を受け入れます。

 ところで、最近のロボット教室やプログラミング教室を見渡すと、まるで1つの教科のように、ロボットやプログラミングそのものを学ぶことが目的となっている気がします。「コンピューターが人々の考え方や学び方をどのように変えていくか」という疑問から、パパートが提唱したのは、『コンストラクショニズム』という教育理論です。当アカデミーは、ブロックやロボット、プログラミング、算数教材や理科実験をあくまで一つの教育ツールとして、21世紀に必要な学力を実現するのに極めて有効な『コンストラクショニズム』を日本の教育に根差し、普及することを目標にこの17年間、実践をしてきました。教育関係者からは、「理論と実践が完璧に一致している」という高い評価を得ています。パパートの死を悼むと共に、彼が提唱し目指してきた教育をこの日本の地でより効果的に実現すべく、邁進していきたいと存じます。


トゥルース・アカデミー 代表 中島晃芳


トゥルース・アカデミー ブロック・サイエンス
http://truth-academy.co.jp/bs/

トゥルース・アカデミー リトル・ダヴィンチ理数教室

http://truth-academy.co.jp/lv/

トゥルース・アカデミー ロボット・サイエンス

2016年6月23日木曜日

トゥルースの視線【109回】


ロボット・サイエンスが目指すもの
-ロボット教育の意義を実現するには? -
 
 当アカデミーは、2000年にブロックとロボットを教材としたSTEM教育を始め、2002年からロボカップジュニアに参加、ロボカップ2004ポルトガル・リスボン世界大会以来、ほぼ毎年世界大会に子供たちを送り出し、世界チャンピオンも輩出しています。子供たちの華々しい活躍の舞台裏で、私たちが常々気にしているのは、教育的意義が実現できているかどうかという点です。

 では、ロボット教育の意義とは、どこにあるのでしょうか? ロボット白書2014では、「ロボットを用いた教育は、人間の持つ動きや形に対する認知のメカニズムに強く働きかけることから、学習者に強い印象を与えることができる。結果として、出力されるロボットの動作も、理解しやすいという特長を持つ。また、ロボットは、思った通りではなく作った通りに動作することから、学習成果のリアルな評価を容易に実現できる。さらに、ロボット技術は、コンピュータからモータ制御、センシング技術、機械要素といった横断的、総合的な技術の結晶である。そのため、課題発見能力、自己解決能力を涵養するPBL(問題解決型学習)法等により、複数の要素技術を統合し、統合したシステム全体を最適化する能力を身につけさせる構成論的な教育に適しているといった特長がある。(中略) さらに、ロボットコンテスト活動の多くは、グループで行う製作活動を中心としており、協調作業のスキル獲得やリーダ人材教育にも適用可能である」と記述しています。

 Mindstormsの生みの親シーモア・パパート(視線106)は、『デバグの効用』を唱えます。「学校では間違いは悪いものだと教える。(中略)デバグの哲学は、これと正反対の態度をとるようにと勧める。間違えは、何が起こったのか調べ、何が間違ったのかを理解し、理解することによって修正するように我々を導いてくれるから、有益なものである」(未来社「マインドストーム」)。「デバグ」とは、プログラムのバグ(誤り)を発見し取り除く作業であり、プログラム作成における最も難しい段階である、と言われます。原因を推理して仮説を立て、その証拠を集めて問題の所在を絞り込むデバグの作業は、科学的思考訓練そのものなのです。

 また、ロボット白書2014では、次のような批判にも言及しています。「教育という側面から見ると ロボット教育にどのような教育効果があるかわからない、単に体験して終わりになっていないかとの批判を受けてきている。(中略) さらに、ロボット教育を効果的に使える学習手法であるPBL等の問題解決型教育手法を用いた場合、技術的な問題に対して付け焼き刃的、場当たり的な解決手段をとる習慣がついてしまうという意見がある。抜本的、理論的な解決を探索しようとしない、探索するためのスキルも身に付かないという指摘である」

 ロボットコンテストWROWorld Robot Olympiad2014年世界大会で優勝をした奈良教育大付属中学・科学部を指導する葉山泰三教諭も、「すぐに教えてしまうと、子どもが与えてもらうことが当たり前だと思ってしまうんです。そして、創造する側の楽しさを知らない子どもが多いと感じます。(中略) 生徒が『先生冷たい、先生いじわる』と思わずに、それを楽しめる関係を築けることが大切だと感じています。それは学校だけで構築されるものではなく、家庭教育も重要です。いくら学校で私がそのように伝えても、家で親が『教えてくれないなら辞めたら』と生徒に言ってしまうと、子どもたちもそう思ってしまうんです」と述べています。(東洋経済ONLINE)

 当アカデミーのロボット・サイエンスの講師は、全員がジャパンオープン、世界大会出場経験者の先輩たちで、理工系の大学や大学院に進学し、中にはロボットの研究を続けている者もいます。その講師たちが首を傾げることがあります。それは、自分たちがかつて小中学生だった頃と、今自らが指導する小中学生との取り組み方の違いです。分からないと自分でよく考えもせずにすぐ質問をする、家では何もしていないで授業中しかロボットに触れていない…等々。彼らは言います。「授業ではどんな難しいことでも扱うことはできるが、基本的なことは日々の積み重ねでしか定着することはできない。だから、もっと家でロボットをいじってほしい」

ロボカップジュニアのルールの歴史は、大人の過干渉から子供の自主的な学習をいかに守るか? その闘いの歴史である

-ロボカップジュニア関東ブロック初代委員長 中島晃芳-

 

                               




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2016年3月30日水曜日

トゥルースの視線【106回】


プログラミング教育・ロボット教育のルーツ「シーモア・パパート」
『マインドストーム』-子供、コンピューター、そして強力なアイデア -
 
常々お話ししておりますように、当アカデミーでは、マサチューセッツ工科大学メディアラボのシーモア・パパート名誉教授が提唱する教育理論「コンストラクショニズム」に基づいた教育を提唱し、実践しています。教育関係者からは、「問題解決型の授業とは、こういうものなのか!」「理論と実践が完璧に一致している」という評価を頂いております。

ところで、シーモア・パパートとは、どんな人なのでしょうか?

パパートは、192831日に南アフリカで生まれた数学者であり、コンピューター科学者、発達心理学者です。後にMITメディアラボとなるMIT建築機械グループ認識学習研究班の創設者の一人でもあります。

1959年から5年間、スイスのジュネーブ大学で、ジャン・ピアジェの下で研究。ピアジェは発達心理学者として、質問と診断から成る臨床的研究の手法を確立し、『構成主義』を唱えました。これは、「子供は生まれながらにして積極的な知識の建設者である」という言葉に象徴されるように、ある対象について、子供たちが自分自身の力で理解を組み立てられるような形で教育すべきであるという学習・教授理論です。ピアジェはかつて「パパートほど私の考えを理解してくれる者はいない」と言ったそうです。ピアジェとの研究がパパートに大きな影響を与え、独自の教育理論「コンストラクショニズム」の考案につながりました。

1964年にマサチューセッツ工科大学(MIT)に移ります。そこで、「人工知能の父」と呼ばれるマービン・ミンスキーたちと共に、MITの人工知能研究所を創設。ミンスキーはパパートを「生きている内で最も偉大な数学教育者」と呼び、二人で人工知能の歴史の中でも大きな議論を呼んだ『パーセプトロン』を共著。本書は、ニューラルネットワーク解析の基礎を築いた一方、そこで示した結果により1960年代の第1次ニューラルネットワークブームを終わらせ、1970年代の「AIの冬」をもたらす原因のひとつにもなったとのこと。

1967年、ピアジェとの研究成果を生かし、コンピューターの使用を通じた児童の思考能力の訓練を目的とした教育用のプログラミング言語「LOGO」を開発。LOGOの最大の特徴は「タートル・グラフィック」です。画面上の亀(タートル)に動きと線描を命令し、プログラムに基づいて線で描かれた図形ができます。このLOGOを使った教育実践とその成果、教育理念と手法を著したのが、その著書『Mindstorms(マインドストーム)― 子供、コンピューター、そして強力なアイデア』(1980)。子供たちの「心」に「嵐」を吹き起こすという、強烈なインパクトのあるタイトルです。レゴ社のロボットキット「Mindstorms(マインドストーム)」の名前は、このパパートの著書の題名から取られたのです。

子供たちの理解に役立つよう、LOGOで操縦可能な亀のロボットがMITで作られたのは1969年。その後LEGO社との共同プロジェクトが立ち上がり、パパートの「コンピューターを搭載したレゴブロックができないか?」という提案により、MITメディアラボで「マインドストームRCX」が誕生。第2世代NXTを経て、現在のEV3となります。また一方で、「パーソナルコンピュータの父」と言われるアラン・ケイのダイナブック構想にも影響を与えました。アラン・ケイが自ら開発した「Squeak(スクイーク)」は、LOGOの手法を踏襲しています。また、パパートの下でレゴ・マインドストームの開発に携わったMITメディアラボのミッチェル・レズニック教授が、LOGOSqueakの系譜を引き継いだ、「Scratch(スクラッチ)」を開発。現在では、子供のプログラミング教育で大流行となっています。

このように、コンピューター教育、ロボット教育やプログラミング教育の原点にいるのが、シーモア・パパートなのです。

知識は、理解するということのほんの一部に過ぎない。本当の理解というものは実際の体験から生まれるものである。

― シーモア・パパート ―

 


トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

 






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