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2022年1月8日土曜日

【第166回】新年のご挨拶

 

~ 高まるデータサイエンス教育の必要性 ~ 

 

2022年の東京は、北風が強く吹く晴天の元旦を迎えました。コロナ禍が発生してから早2年、一見落ち着きを見せていましたが、オミクロン株が猛威を振るう前の、束の間の嵐の静けさに過ぎなかったのかもしれません。ウィルスと人間の科学との戦いはまだ続きそうです。

昨年6/28スロバキアのクライン・ビジョン社が開発した「空飛ぶ車」が35分間の飛行テストに成功しました。「エア・カー」と名付けられた自動車兼飛行機です。スロバキアのニトラ国際空港からブラチスラバ国際空港までの70㎞を35分間で飛行に成功。着陸後、ボタンを押すとエア・カーは3分でスポーツカーに変身し、そのまま空港から市内へ移動しました。テストでは最高で高度2500メートルまで上昇し、速度も時速190キロまで出たということです。その映像は、まるでSF映画を見ているようです。

↓エア・カー飛行の様子


https://www.youtube.com/watch?v=a2tDOYkFCYo

「空飛ぶ車」の定義は様々ですが、経済産業省は、①電動②自動(操縦)③垂直離着陸を条件としています。

経産省の工程表では、2023年に離島の荷物輸送・観光地の遊覧飛行、25年頃に山間部や都市部の荷物輸送・旅客輸送、30年代に自動無人飛行・自家用を目指すとしており、2025年の大阪万博では、会場の遊覧飛行や会場と関西国際空港などを結ぶエアタクシーサービスを計画しています。

今後さらにAI(人工知能)やロボットの技術が進化し、それに携わる人材も当然必要となります。

昨年、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」という文部科学省の認定制度が始まりました。数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行うものを文部科学大臣が認定及び選定して奨励するというものです。昨年は大学・短期大学・高等専門学校から78件の応募があり、11件が認定されました。その中には、ロボカップジュニアにもご協力くださり、Truthの卒業生も通う金沢工業大学の「KIT数理データサイエンス教育プログラム」、長岡工業高等専門学校の「AIR Techエンジニア育成プログラム」も入っています。

データサイエンス」という言葉を最近よく聞きますが、これはデータを用いて新たな科学的および社会に有益な知見を引き出そうとするアプローチのことで、数学・統計学・情報工学・機械学習など多岐に渡る分野と横断的に関係しています。このところ、経営戦略や販売促進にビッグデータや統計学が活用されるようになり、ビジネスシーンでも数学・統計学の必要性が高まっているようです。数学独習法の著者・富島佑允氏(大手外資系生保で資産運用部門に勤務)は、代数・幾何学・微積分学・統計学を「数学四天王」と呼び、その全体像をざっくりつかみ、俯瞰できるようになることの大切さを説いています。

また、教育の分野でも、欧米を中心に30年程前から統計教育の重要性が説かれ、データに基づく実践的な統計的問題解決力、思考力の育成を国家戦略として位置付けています。日本でも、平成20・21年度の学習指導要領では、小中高ともに統計教育が充実し、特に高校の数学や新教科の情報、大学入学共通テストではデータの活用内容に重点が置かれています。こども統計学 なぜ統計学が必要なのかがわかる本の監修者である渡辺美智子氏(理学博士/立正大学データサイエンス学部教授)は、「統計データを『調べる力』、そこから何かを『読み取る力』、その結果から『身の回りの問題を解決し改善する力』など、総合的な探求力が養える統計学では、すべての人に役立つ、生きる上で強力な武器になるのです」とその意義を説き、「日常の些細な事柄においても感情や思い込みではなく、エビデンスに基づき判断する」「統計リテラシーを育てるには、子どものうちからいろいろな文脈でデータを集め、データに基づいた判断を下す練習をしなければなりません」と、幼いころからの教育の重要性を訴えています。

コロナ禍において、様々なデータや統計、シミュレーションが報道されています。しかし、正しく統計を読む力、統計で考える力を持たなければ、正しい理解も正しい判断もできないのです。算数・プログラミングを扱っているリトル・ダヴィンチ理数教室でもデータサイエンス教育の導入を検討したいと考えています。

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

― データは21世紀の刀、データ分析ができる人は21世紀のサムライ ―

Google元CEOエリック・シュミット

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2021年7月8日木曜日

【第161回】コロナから子供の心を守ろう!

 

~ コロナ禍が子供たちの心と夢に与える影響は? ~

 

東京オリンピックの開催が迫る中、東京の感染者数は増加に転じ、ワクチン接種も期待されたほど進んでおらず、東京都は4回目の緊急事態宣言は発出されることになりました。今回は、7/12~8/22と一か月以上に及び、東京オリンピック開催期間だけではなく、子供たちの夏休みのほとんど期間が含まれます。子供たちが楽しみにしている夏休み、そして素敵な思い出が残せるはずの夏休み―その夏休みに行動規制がかかることになります。子供たちの心にどんな影響を与えるのか、不安を感ぜざるを得ません。

新型コロナウイルスの流行が子供たちに及ぼす影響について国立成育医療研究センターがアンケート調査を行っています。今年2/19~3/31に行われた第5回調査報告では、「コロナのことを考えると嫌だ」が42%「すぐにイライラしてしまう」が37%「最近集中できない」が32%などとなり、何らかのストレスを感じているとみられる子供は全体の70%に上ったということです。

 

 

 

 

 

また、日本語版「KINDL-R」尺度(子供のQOL[=quality of life]を評価する尺度)により身体的健康と精神的健康を測定したところ、第1回調査(昨年5月)と比べ、身体的健康は全般的に低下傾向にあり、精神的健康は小1~3は微増、小4~6は横ばい、中高校生は低下傾向にあります。同センターの半谷まゆみ医師は「1回目の調査から子どもたちのストレスの状態は改善していない傾向だ。コロナの影響が思った以上に長引き積もってきた負担が心や体の健康に響いてきている可能性がある。少しのサインも見逃さず子どもが困っていたら一緒に解決する方向に持って行くことが大切だ。」と述べています。しかし、「先生や大人への話しかけやすさ・相談しやすさ」については「減った」との回答が51%に及んでいます。「友達と話す時間」が「減った」との回答も46%に。

一方、「家族と話す時間」は、「減った」が42%、「増えた」が40%とどちらも増えていますが、保護者へのアンケートでは、53%が子供と過ごす時間が増えたと答えています。3/17に発表された第一生命保険の第32回「大人になったらなりたいもの」のアンケート調査結果(https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2020_102.pdf)では興味深い結果が出ました。小学男子は1位会社員・2位ユーチューバー・3位サッカー選手、小学女子は1位パティシエ・2位教師/教員・3位幼稚園の先生/保育士、中高生男子は1位会社員・2位ITエンジニア/プログラマー・3位公務員、中高生女子は1位会社員・2位公務員・3位看護師。小学男子で会社員が1位、女子でパティシエを選んだ理由として、第一生命保険は、男子は「コロナ禍でリモートワークが進む中、自宅で仕事をするお父さん・お母さんの姿を目の当たりにし、会社員という職業を身近に感じた子どもが多かったのかもしれない」、女子は「コロナ禍のステイホーム期間に家族とお菓子作りを楽しんだ子どもたちも多かったのではないか」と推察しています。コロナ禍は子供の夢の変化にも影響を与えているようです。

コロナ禍でストレスを感じているのは日本の子供たちだけではありません。WEBサイト「新型コロナウイルスから子どもの心を守る。WHOから世界中の保護者たちへ」https://covid-19-act.jp/parenting-who/)では、WHO(世界保健機関)が世界の保護者に向けたアドバイスを発信しています『1対1の時間』『肯定的でいましょう』『新しい日課を作る』『悪い行い』『焦らずにストレスマネジメント』『新型コロナウイルスについて話をする』という6項目を分かりやすく解説しています。ご一読なさると何かの参考になるかもしれません。また、前述の国立成育医療研究センターでも、「第5回【コロナ×こどもアンケート】こどもが考えた『気持ちを楽にする23のくふう』」https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/cxc05_coping20210525.pdf)を公開しています。子供たちがどのようにストレスを発散しているのかを知ることも、子供と接するときのヒントになるかもしれません。

 

トゥルース・アカデミーは例年通り、「夏休みサイエンス講座(夏期特別授業)」(http://truth-academy.co.jp/2021summer/)を開催し、科学・算数・工作・レゴ・ロボット・プログラミングと多彩な内容をラインナップして、子供たちが生き生きと楽しく学ぶ場を提供します。周りに興味のあるお友達がいらしたら、ぜひお誘いください。一人でも多くの子供たちに私共の授業を届けられたらと願っております。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2021年2月8日月曜日

【第156回】スマホが脳をハッキングする

 ~  集中力こそ現代社会の貴重品 ~

 

― Facebookの「いいね!」の開発者は、「SNSの依存性の高さはヘロインに匹敵する」と発言し、自らFacebookへのアクセス時間を制限した。スティーブ・ジョブズはiPadをわが子に与えるかを問われて「そばに置くことすらしない」と答えた。ビル・ゲイツは子供が14歳になるまでスマホは持たせなかった。―

コロナ禍にあり、テレワークやオンライン授業が盛んに推奨されている中、こんな衝撃的な事実を紹介したのは、昨年11月に刊行され今世界的ベストセラーになっている『スマホ脳』。著者は、『一流の頭脳』で一躍世界的評価を受けたスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンです。中でも衝撃を受けたのは教育大国として知られるスウェーデンの教育界。学校からの著者への講演依頼が急増、彼の提案する改善メソッドを現場に取り入れる学校が日に日に増えているそうです。

彼は、「大人は1日に4時間を、10代の若者なら4~5時間をスマホに費やす。この10年に起きた行動様式の変化は人類史上最速。現代社会は人類の歴史のほんの一瞬に過ぎず、地上に現れてから99.9%の時間を人間は狩猟と採集で暮らしてきた。人間の『脳』は今でも狩猟採集時代の生活様式に最適化されている。現代社会と人類の歴史のミスマッチが重要な鍵である」と言う。なぜチャットの通知が届くとスマホを見たい衝動にかられるのか?なぜ人はリンクを思わずクリックをしてしまうのか?SNSはお金儲けのためにいかに巧妙に私たちの脳をハッキングしているか?なぜネット社会ではフェイクニュースの方が正しいニュースより多く、拡散速度も速いのか?なぜスマホがポケットに入っているだけで集中力が阻害されるのか?なぜスマホを過剰に使うと、ストレスがたまったり睡眠不足になったり、健康に壊滅的な影響を与えるのか?そして、なぜ周囲の人に関心を持てなくなるのか?…様々な調査結果を基に脳科学の観点からそのメカニズムを解き明かしています。

「基本的にすべての知的能力が、運動によって機能を向上させる。集中できるようになるし、記憶力が高まり、ストレスにも強くなる。長期記憶を作るには集中が必要であり、固定化するプロセスは睡眠中に行われる」という科学的根拠を基に、「睡眠、運動、そして他者との関りが精神的な不調から身を守る3つの重要な要素」「本当の意味で何か深く学ぶためには、集中と熟考の両方が求められる」と述べ、『第7章バカになっていく子供たち』では、衝動に歯止めをかける前頭葉は成熟するのが最も遅く、子供や若者のうちは未発達なためデジタルなテクノロジーをさらに魅力的なものにし、興奮を感じさせるドーパミンの量が多い10代は依存症のリスクが高くなると警告しています。そして、「子供たちが能力を発揮するためには、毎日最低1時間は身体を動かし、9~11時間眠り、スマホの使用は1日 最長2時間まで」と提言します。

また、持論を裏付ける様々な研究成果を紹介しています。2歳児は本物のパズルをすることで指の運動能力を鍛え、形や材質の感覚を身につける。そういった効果はiPadでは失われてしまう。就学前の子供を対象にした研究では、手で、つまり紙とペンで書くという運動能力が、文字を読む能力とも深く関わっているのが示されている。小学校高学年の半数に紙の書籍で短編小説を読ませ、残りの半分にはタブレット端末で読ませた。その結果、紙の書籍で読んだグループの方が内容をよく覚えていた。米国小児科学会は「衝動をコントロールする能力を発達させ、何かに注目を定めて社会的に機能するためには、遊びが必要だ」と指摘している。小児科医の専門誌も、普通に遊ぶ代わりにタブレット端末やスマホを長時間使っている子供は、のちのち算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できないと警告している。…等々

これからますますデジタル機器が生活における存在が増していく中、自分の身は自分で守れるよう、子供たちの健全な体と頭脳を育てられるよう、流れに身を任せるのではなく、一歩立ち止まってデジタル機器との付き合いを考える必要性を痛感しました。ぜひご一読を。

【参考文献】『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン著/久山葉子訳(新潮社)

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳