2021年9月8日水曜日

【第162回】学習ツールとしてのデジタル

 

~ 家庭でどのようにデジタルと付き合ったらいいのか? ~

 

トゥルース・アカデミーは元々進学塾としてスタートしました。しかし、学ぶことそのものが目的ではなく手段になってしまっているのではないかという疑問が徐々に頭をもたげ、受験指導に違和感を覚えるようになり、様々な教育を模索し始めました。そんな中、ある一冊の本と出合いました。富山県内の公立小学校で教諭を勤めていた戸塚滝登氏の『クンクン市のえりちゃんとロゴくん』(ラッセルブックス)という本です。新任教員として赴任した戸塚氏が子供たちになかなか授業が受け入れてもらえず苦悩した末、パソコンを購入してプログラミング教育を始めました。その実践の中で描かれている先生と生徒との交流、生徒の成長の姿に感銘を受け、「プログラミング教育こそ今の教育を変えられるかもしれない!」を思い始めたのです。

これがLOGO(ロゴ)との出会いです。LOGOはマサチューセッツ工科大学の創設者の一人、人工知能の研究者として有名はシーモア・パパート教授(2016没)が子供の学習のために開発したプログラミング言語です。LOGOは、その後パーソナルコンピュータの父アラン・ケイが「Squeak(スクイーク)」に発展させ、続いてパパートの下で助教授を務めていたミッシェル・レズニック(現教授)が今世界的に流行している「Scratch(スクラッチ)」へと発展させました。コンピューターを搭載したレゴブロックが作れないか?というパパートの発想からレゴのロボットキット「Mindstorms(マインドストーム)」(この名は元々パパートの著書の題名)が誕生。しかし当時は、パソコンとロボットが有線でつながっていましたが、タフツ大学が計測系のプログラミング言語「LabView」をベースとしたソフトを開発し、ロボットがパソコンから自由に動けるようになり、「これだ!」と飛びつきました。そして、パパートの唱える「コンストラクショニズム(構築主義学習)」という教育理論に基づいたSTEM教育を実践する「レゴとロボット教室」を2000年にスタートさせました。

その頃、客員研究員としてMITメディアラボを目の当たりにしたNPO法人CANVAS代表の石戸奈々子氏は、教育に関心を持ち始めたそうです。石井氏は今年6月『賢い子はスマホで何をしているのか』(日経プレミアシリーズ) を出版し、「コンストラクショニズム」の考えを紹介し、「新しいものを生み出したいとき、これほど有効な道具はないからです。プログラミングは、論理性を育てるためのものではなく、むしろ創造・表現のためのツールなのです」と、プログラミング教育の必要性を説いています。また、デジタルの強みは「創造・効率・共有」にあると論を展開しています。この本では、学校教育にも触れていますが、家庭や親の関わり方の話にも及んでいます。「これからの時代、『学び合い」「教え合い」が重要になる』ので、学校の先生同様「親もファシリテーターになるとよい」、そして「『スマホに丸投げ』ではなく、ときには親も一緒になって 楽しむ。 面白いコンテンツであれば、親子の会話も自然と増えていきます」と。また、「時間制限をしない家庭の子のほうがスマホにしがみつくことが少ない印象」があり、「適度なバランスをたもつためには親子のコミュニケーションしかない」、フィルタリングは当然必要だが、「ネット上で起きる問題は決して特殊なものではなく、リアルな世界で起きている問題とさほど変わりがありません。大人の知見で解決できるものばかりです」と。

この本では、トゥルースでも使用している「Scratch」や「micro:bit(マイクロビット)」も紹介しています。それだけはなく、もはや「えほん」の世界を飛び越えていますが、『デジタルえほん』アワード受賞作品の中で、「地図エイリアン」や「算数忍者」、「工作生物ゲズンロイド」など、学習に役立つアプリが数多く紹介されています。

家庭でどのようにデジタルと付き合ったらいいか、子供の学習にどう役立てたらいいかのヒントが得られるかと思います。ぜひ、ご一読なさってみてください。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳