国際的な学習到達度調査PISA2012
-問題解決能力 日本3位に-
今年の「新年のご挨拶」で、65カ国・地域の15歳約51万人を対象とした『PISA2012』の主要3分野の結果をご紹介いたしました。今回は日本では191校(学科)、約6,400人の生徒が参加。今回の中心分野である「数学的リテラシー」が7位・536点(OECD平均494点)、「読解力」は4位538点(OECD平均496点)、「科学的リテラシー」が4位547点(OECD平均501点)と、日本の順位が急落した2003年の「PISAショック」からかなり回復し、3分野とも過去最高得点となりました。また、全分野で上位層が増え、下位層が減ったという望ましい形になってきました。
(調査問題例は、http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_examples.pdf をご参照ください)
PISA2012では、主要3分野の他にコンピューターを使った、次の3分野の調査が国際オプションとして実施されました。「デジタル数学的リテラシー」が6位539点(OECD平均497点)、「デジタル読解力」は4位545点(OECD平均497点)、「問題解決能力」3位552点(OECD平均500点)。問題解決能力の調査には44カ国・地域が、日本では181校、約6,300の生徒が参加。1位シンガポール、2位韓国に続く順位となりました。PISAでは2003年に問題解決能力の調査を行っていますが、コンピューターを使用したのは初めてであり、枠組みや調査実施形態が異なるため、2003年との直接比較はできません。
(調査問題例は、http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_item_ps.pdf をご参照ください)
PISAでは問題解決能力を、「問題解決の道筋が瞬時には明白でなく、応用可能と思われるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学、科学、または読解のうちの単一の領域だけには存在していない、現実の領域横断的な状況に直面した場合に、認知プロセスを用いて問題に対処し解決することができる能力」と定義しています。PISAでは、「CCC(Cross Curriculum Competance)」として捉えられている問題解決力、批判的思考、コミュニケーション能力、忍耐、自信といった教科の枠を横断した能力こそ大事であり、それを測ることの重要性が提起され、各種の実験が行われてきました。
当アカデミーの『ブロック・サイエンス』は、世界の教育現場で(最近は日本の学校でも)採用されている教育用レゴブロックを使った科学技術教育プログラムを提供しています。「楽しく創造力と問題解決力を育てる」と謳っていますが、具体的にどのようなカリキュラム構成になっているかをご紹介します。カリキュラムの中には単元の最後に必ず「問題解決学習」が用意されています。この問題解決学習とは、「困っている人(または動物)がいるので、その人(または動物)の問題を解決するための物を各ステップで使用しているレゴブロック教材で作ろう」ということが課題になります。①まず、提示された絵の中にどのような問題があるかを発見する ②解決策を考える(解決のための推論を立てる) ③問題解決のためのオリジナルの作品を作る(試行錯誤しながらの創作活動) ④なぜそれを作ったのか、どのような工夫をしたのかを発表する(プレゼンテーション) ⑤実験によって問題が解決したかを検証する(作品の評価)、という流れで行います。制作中の試行錯誤における小さな「推論→実験→検証」のサイクルを、課題達成のための全体の「推論→実験→検証」に結び付けて活動しています。
ここでは、子供たちが自らの活動を通して自分の力で知識を獲得し構築していく学習を実現する「コンストラクショニズム」という教育理論、自分の手を使った直接体験型の学び「ハンズオン学習」、正解のない問題にアプローチすることにより考えるプロセスに働きかけ多様な考えを引き出す「オープンエンド」という、当アカデミーが主軸とする3つの教育コンセプトが生かされています。また、「基礎理論のための実験→それを利用した現実社会に存在するモデルの研究→問題解決学習」という流れで行っています。問題解決学習では調べ学習も行います。ですので、これまで学んだ知識や技術や技能と、調べた情報とを基に問題を解決する、という正にPISAのいう「リテラシー」(知識や情報の活用力)を育成するのには極めて有効であると考えています。おそらく、世界の教育現場で採用されている理由の一つがここにあるのでしょう。
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳
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