続・グローバル化時代の学力(1)
-コミュニケーション・スキル-
昨年12月13日、文部科学省は平成32年から中学校の英語の授業を原則として英語で行うこと、正式な教科ではない「外国語活動」を実施している小学校は、平成30年より開始時期を現在の小学5年から小学3年に前倒しし、小学5・6年では教科に格上げすることを決定しました。
確かに、このグローバル化時代では、英語ができることがもはや優位性を持たない時代になってきています。「何かができて、英語もできる」ことが必須となってきているのです。ロボカップ世界大会の会場では英語が公用語となります。ルールの説明や会場のアナウンスが英語であるばかりではなく、ジュニアでは必ず個室でのインタビューが行われ、それも当然英語です。質問に答えられないと自分たちが自力でロボットを作ったことを証明できていないとみなされ、最悪の場合、失格となることもあります。また、他国のチームと組んで行う「スーパーチーム」の競技でも、英語をコミュニケーション・ツールとして使うしかありません。
当アカデミーの生徒は小・中・高校生で、このような世界の舞台に立つことは現実です。そのため、生徒たちに英語学習の機会を与えられないか?と長い間考えておりました。彼らには、優秀なロボットという技術があります。これに英語力が加われば、これほど強力なものはありません。
しかし、ただ英語力さえ身につけば、いいのでしょうか? 英語圏に留学した日本人学生が一番困るのは、プレゼンテーションとライティング(書くこと)だ、というのです。十分な英語力を持っていても、「自分の言いたいことを論理的に正しく伝える」ことが日本人には少し苦手なようです。その原因として、欧米では学校教育の中で徹底的にコミュニケーション・スキルのトレーニングが行われているのに対して、日本の国語教育ではそれが欠落していることが指摘されています。
中高の4年間をドイツで過ごした、つくば言語学技術研究所所長の三森ゆりか氏は、コミュニケーション・スキルについて次のように述べています。「人間は言葉によって互いに意思疎通を図ります。また、言葉を使って人間は思考します。他人に最もよく自分の感情を理解してもらうための技術、自分の考えを深めていく技術、それがコミュニケーション・スキルです。そして、このコミュニケーション・スキルの鍵になるのが『論理(ロジック)』です。相手に自分の考えや感情を正確に理解してもらうためには、相手が理解できるように、道筋を立てて話が飛躍したり、必要な情報を欠いたりせず伝える必要があるからです。つまり、『論理的』でないと、コミュニケーション・スキルは機能しないのです」。また、コミュニケーション・スキルとして、次のような技術を挙げています。①話す技術
②聴く技術 ③書く技術 ④読む技術 ⑤論理的思考の技術 ⑥論証の技術 ⑦推論の技術 ⑧説明の技術 ⑨描写の技術 ⑩討論・議論・ディベートの技術 ⑪主張の技術 ⑫交渉の技術
⑬説得の技術 ⑭発表の技術 ⑮分析・解釈の技術 ⑯批判の技術(批判的思考/クリティカル・シンキング)。
英語の学習を通じて、このようなコミュニケーション・スキルを育てることはできないか?―そう考えている時に、「対話力(Communication Competence)」を重視した英語教育に出合いました。コミュニケーション・スキルを育てる体系的なプログラムです。現在、まず練馬校と日吉校において今春の開講に向けて準備を鋭意進めております。ご期待ください。
【参考資料】
『論理的に考える力を引き出す』三森ゆりか著(一声社)
※三森氏は、母語である日本語を使ったコミュニケーション・スキルを、英語学習の前に育てるベきであるとの立場をとっています。
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳
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