―レッジョ・エミリア ―
前回紹介した「Multiple Intelligence(多元的知能)理論」を展開するハワード・ガードナー教授は、知能向上の方法としてRich Class Environmentが必須であり、それが強い知能を引き出すとしています。そして、その例として、「レッジョ・エミリア」を挙げています。 レッジョ・エミリア(Reggio Emilia)とは、イタリア北部に位置するエミリア・ロマーニャ州の一都市です。この市によって運営される乳幼児センターと幼児学校で実践されている幼児教育プログラムは、『創造性の教育』として「レッジョ・エミリア・アプローチ(レッジョ実践)」と呼ばれ、1991年に米国Newsweek誌で紹介されて以来、欧米や日本でその制度や教育内容について注目されています。また、子供たちの驚きと発見を絵や言葉で記録した『子どもたちの100の言葉』と題した作品展が世界各地で催され、日本でも2001年(東京)以来各地で開催されています。 その特徴は、「プロジェクト活動」と呼ばれるテーマ発展型の保育にあります。あるテーマに興味を持った幼児が小グループを構成し(通常2~5 人程度)、その集団活動を通して数日から数カ月に渡って時間の経過と共に遊び(探求)を展開する。互いに聞き合い、質問し合い、応答し合う対話を通してテーマに対する興味を発展させるとともに、線画・粘土・立体などの多様な表象メディアを用いて様々な表現活動を行う(これらはGraphic Language:図形的言葉と称されます)。つまり、テーマをめぐる対話と表現の双方が幼児の活動の核となっているものです。 ガードナーは、この教育の持つRich Class Environmentとして、以下の点を挙げています。 ・ 学校内が美しく装飾されていること ・ 芸術的な環境が整っていること ・ 授業が教師主体ではなく生徒主体であること ・ 学ぶ姿勢が教室外でも見受けられる教授方法があること ・ 教師が教授法を政府の政策で打ち出されたものに従うのではなく、自ら考えていること ・ ハンズオン・アクティビティが中心となっていること やはり、ここでもハンズオンの重要性を指摘しています。子供の成長に伴い、まず身体・運動的知能が、次に空間的知能、そして音楽的知能という順で発達すると言われています。ですから、特に幼い頃はハンズオン・ラーニングが欠かせないのです。 レッジョ実践を理論的に支えた故ロリス・マラグッチの詩の一節 子どもは100の言葉を持っている。 (その100倍もその100倍もそのまた100倍も) けれども、その99は奪われている。(中略) 学校の文化は子どもに教える。 仕事と遊び・現実とファンタジー 科学と想像・空と大地・理性と夢とは ともにあることができないんだよ。 こうして学校の文化は 100のものはないと子どもに教える。 子どもは言う。冗談じゃない、100のものはここにある。 (佐藤学訳) 【参考】「Progettazione とは何か」中坪史典氏 |
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教育用レゴブロックや算数ブロック、ロボットなどの教材で学ぶ科学教室トゥルース・アカデミー代表の中島晃芳です。 このブログは、当アカデミーが月に1回発行しているお知らせ「Truth通信」に、2004年より掲載している「トゥルースの視線」をまとめたものです。 科学教育や算数教育、ICT教育、ロボット教育、ロボカップジュニアなどについて私の雑感を書き記しています。ぜひご一読いただければ幸いです。