~ 新しい時代を作るためのイノベーション ~
昨年から始まったコロナ禍は今年に入っても勢いが止まらず、変異株の蔓延が問題となっています。東京も再び日々感染者数の増加傾向になり、昨年の緊急事態宣言と同等かそれ以上のより厳しい措置が発動されつつあります。
思えば昨年世界ではロックダウンなどにより、経済活動がストップしました。その時皮肉にも「大気汚染が深刻なインドで数十年ぶりにヒマラヤが見えた」「イタリアのベネチアで緑色に濁っていた運河の水が透明になった」など、一時的に環境の改善が見られました。2019年9月23日にニューヨークで行われた国連気候行動サミットで、グレタ・トゥーンベリさんが「大絶滅を前にしているというのに、あなたたちはお金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」「私はあなたたちを絶対に許さない」と抜本的な改革を起こさない大人を痛烈に批判したことも、コロナ禍が始まり今や遠い過去のことのように感じられるかもしれません。しかし、コロナ後、人類が取り組む最大の問題は『気候変動』であると言われています。昨年菅首相は就任後、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする(2050年カーボンニュートラル)脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、バイデン新大統領となったアメリカは地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰したことを見ても、今や気候変動問題に取り組むことが国家戦略の重要な一つになっていることが分かります。
太陽光・風力・地熱・バイオマスなど様々なクリーンエネルギーが研究されています。ミドリムシ由来の油脂と使用済み食用油などでバイオディーゼル燃料を製造し、この4月からいすゞ自動車がシャトルバスで使用を開始するという事例もあります。中でも注目は水素燃料電池です。これは、「水素」と空気中の「酸素」を反応させて電気を起こす画期的な発電システムで、排出されるのは水だけです。原理は、簡単に言えば「水の電気分解」を逆にしたもの。水素の持つエネルギーの83%を理論的には電気エネルギーに変えることができる(ガソリンエンジンの最高効率が40%程度)、高いエネルギー効率をもつクリーンエネルギーです。最新の燃料電池車であるトヨタMIRAIは満タン状態で850kmを走ることができ、「水素ステーション」でタンクを満タンにするまで5分~10分程度で済むそうです。
しかし、水素ステーションはまだ全国で130カ所強しかありません。大量の水素を入手する必要があります。水素は宇宙に存在する元素の約70%を占めるほど豊富にある物質ですが、単体では自然界にほとんど存在せず、地球上では水や化石燃料、有機化合物などの形で存在するので、そこから水素を取り出す必要があります。そこで、川崎重工がオーストラリアの「褐炭」という石炭の一種に目を付けました。現在国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「褐炭水素プロジェクト」も推進されています。褐炭は、石炭と同程度の埋蔵量があるとされ世界に広く分布していますが、水分量が50~60%と多いうえ、乾燥すると自然発火するという少々扱いづらい資源なので、輸送が難しく、採掘地付近で発電に使う程度しか用途がありません。ただ、非常に安価に入手できるため、もっとも経済的な水素製造方法の1つと言えます。日本の発電電力量の約4分の1は石炭火力であり、2019年COP25の会期中2度も温暖化対策に消極的な国に与える不名誉な賞「化石賞」を小泉環境大臣に与えるなど、国際社会から批判されてきましたが、石炭から水素というクリーンエネルギーを取り出すとは!と大変驚きました。中でも日本の総発電量の240年分の褐炭が眠るとされるビクトリア州で、水素の採掘から製造、液化、輸送、そして、国がロードマップのフェーズ3で掲げるCCS(CO2の回収・貯留)までをトータルで行う『CO2フリー水素チェーン』を、現地政府と一緒に推進しているとのことです。2019年世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の命名・進水式を行いました。水素を液化して800分の1の体積にして零下253度で日本へ運ぶそうです。
やはり新しい社会を創り出すには「イノベーション(革新)」が必要です。革新的なものを生み出す能力のある人間に育つよう、多様なものの見方や考え方、創造力、問題解決力を育てるTruthの教育が資することができれば幸いです。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
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