―デンマークと風車発電―
レゴが生まれた国デンマークは、世界一住みやすい国と言われ、食料の自給率は300%(日本39%)、国民一人当たりのGDP(国内総生産)は世界6位(日本15位)、1983年に底をついた出生率は回復傾向になり、少子化対策は終了したとの声も。また、第1次オイルショックの時(1972年)2%だったエネルギー自給率は、1997年には100%、2000年には137%に達しました(日本1973年23%・2003年4.3%)。
デンマークは、世界一のエコロジー先進国とも言われています。1985年原子力発電に依存しない公共エネルギー計画を議会が決議。70年代94%あった石油依存度は2005年40%(日本50%)になり、クリーンエネルギーは電力消費量の20%を担っています。デンマークのクリーンエネルギーの象徴は、風車による風力発電。世界の風力発電装置の45%はデンマーク製なのです。
世界最初に風車発電を実用化したのは、19世紀末デンマークのエジソンと言われた、ポール・ラ・クール。当時は電気が普及し始めた頃で、デンマークは風に恵まれているため、彼は風車発電こそ地域の電化に貢献すると考えました。効率の悪さとエネルギー貯蔵の問題から風車の元祖・オランダでは否定的に考えられていましたが、彼は風力の変動があっても出力に変動のない調速機能を備えた風車発電を開発し、水の電気分解により水素と酸素を発生させ貯蔵する方法を確立しました。風車自体も、従来型の4倍の効率に改善(最新の風車はさらにその2倍ですから彼の研究の素晴らしさが分かると思います)。1885年から1902年まで、彼の所属する学校では風車発電による照明が行われ一日も電力が不足することはなかったばかりか、1902年から1958年まで学校のある町すべてに電気を供給し続けたそうでです。
ポール・ラ・クールが教鞭をとっていた学校は、アスコウ・ホイスコーレ。160年前ほどから始まった、デンマーク独自の、他に比較するものがないほどユニークな学校「フォルケホイスコーレ」(1996年時点で約100校)の一つです。
「フォルケホイスコーレ」は、アンデルセンやキルケゴールと同時代人でありライバルでもあった、N.F.S.グルントヴィ(1783-1872)によって構想されました。詩人・牧師・思想家・歴史家・宗教改革者・政治家など多面的に活躍し、今日の民主的なデンマークの在り方を導いた「近代デンマーク精神の父」として国民からとても尊敬されています。また、教育者としては世界で初めて、社会教育・成人教育・解放教育を提唱した人でもあります。
次回から、フォルケホイスコーレとは、どんな学校なのか?紹介したいと思います。
【参考】『生のための学校』(清水満著:新評論)より
「ポール・ラ・クール―世界最初に風車発電を実用化した男」
(鹿児島大学理学部・橋爪健郎)
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教育用レゴブロックや算数ブロック、ロボットなどの教材で学ぶ科学教室トゥルース・アカデミー代表の中島晃芳です。 このブログは、当アカデミーが月に1回発行しているお知らせ「Truth通信」に、2004年より掲載している「トゥルースの視線」をまとめたものです。 科学教育や算数教育、ICT教育、ロボット教育、ロボカップジュニアなどについて私の雑感を書き記しています。ぜひご一読いただければ幸いです。