2022年12月27日火曜日

【第176回】なぜレゴは世界一、超天才的なおもちゃなのか?

 ~ レゴと空間認識能力  ~

2000年にトゥルース・アカデミーがレゴとロボットの教室というSTEM教育を始めて間もない頃、ベッドで哲学ファンタジー小説『ソフィーの世界』を読んでいた時、「なぜレゴは世界一、超天才的なおもちゃなのか?」という一文を目にした瞬間にベッドから飛び起きた思い出があります。

古代ギリシャの自然哲学者デモクリトスの原子論を紹介した一節です。「デモクリトスは、『すべては目に見えないほど小さなブロックが組み合わさってできていて、そのブロックの一つひとつは永遠に変わらない』と考え、その小さなブロックを『原子(アトム)』と名づけました。『自然界には無限に多様な原子がある』、『原子はすべて永遠で、変化せず、分けられない』と彼は考えます。レゴについての問いがあったのは、デモクリトスが考えた原子について理解するのにレゴがぴったりだったからです」と。

2018年と少し古いデータになりますが、レゴジャパンが東京六大学出身者を対象とした「レゴと知育の関連性に関する調査」を実施しました。レゴで遊んだことがある人の割合は、東大67.8%・早稲田60.9%・慶応66.7%・立教69.1%・明治67%・法政67.9%。遊んだことがあると回答した東大生に対し、「レゴが良い影響があったと思う能力」を調査したところ、「集中力」57.6%・「空間構成力・イメージ力」51.5%・「アイデアを膨らませる創造力」51.5%・「目的達成力」48.3%、「柔軟な思考」「論理的思考力」「豊かな表現力」「ひらめきを得る想像力」がおよそ2~3割。ちなみに、「東大に入るための必要な要素は?」という問いには、1位が「集中力」74.7%・2位「論理的思考力」50.6%だったとのこと。

 東大レゴ部の創設者で現役大学院生の時に、日本人初で世界13人目のレゴ認定プロビルダーとなった三井淳平氏は、その著書『空間的思考法―世界が認めた、現役東京大学大学院生の頭の中!』の中で、「算数の平面図形と立体図形は一番得意だったが、図形問題を見るとレゴブロックで試行錯誤したことが多く、図形問題を見ても慌てることはなかった。算数は一つ一つ論理的につめていくパズルのように解いていく点でブロックと似ており、一つ一つのステップを踏んでコツコツ問題を解くということを楽しめた」「立体的な形、いわゆる3Dで考える癖がつき、見たものを頭の中でひっくり返してみたり、自由に動かしてみたりしながら全体像を予測する習慣がついた」と述べています。
 

算数・数学思考力検定で図形問題、特に立体図形が弱い子が見受けられます。小学校では立体図形を学ぶのは高学年になってからです。かつて受験指導をしていた頃、小学高学年になってから空間認識力をペーパーの問題で鍛えようとすることには限界があることを痛感していました。その後、「リトル・ダヴィンチ理数教室」で数量・平面図形・立体図形を各ステップで学ぶこと、数量と図形を融合することを一つのテーマにしてカリキュラムを構築してきましたが、毎回立体図形を扱うことはできません。ブロック・サイエンスでは、レゴブロックの組み立てなので、毎回空間認識力を磨くことができます。
 
 先のレゴジャパンの調査では、レゴ経験者のうちでも、特に「説明書等がなく、ゼロから作るシリーズ」で遊んでいた人の割合は、東大93.9%・慶応92.3%・法政92.1%に達しています。ブロック・サイエンスは年長クラスから組立図を使用します。組立図を見てそっくり作る(平面で描かれた図から立体を構成する)ことで新しい知識を学ぶ、遊んで実験する(正しい実験と観察の習慣をつける)ことでその良さや特長を知る、問題解決学習というテーマに沿ったオリジナル作品を作る(立体を構成する)ことで学んだことをアウトプットする(想像力や創造力を発揮する)というカリキュラム構成になっています。

 LEGOはデンマーク語のレゴLeg Godt(よく遊べ)。手の巧緻性や空間認識力、集中力、論理的思考力、想像力、創造力、問題解決力、比例・反比例や関数などの数学的な知識、力学や物理法則、そしてプログラミングによる制御やデータロギング…楽しく遊びながら身につけていきましょう!
 
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年12月15日木曜日

【第175回】コロナ禍が子供たちにもたらした影響

 ~ 不登校・いじめの増加・学力低下 ~


緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置も発出されず、規制のない生活を取り戻しつつあります。しかし、子供の命と健康に配慮し、ロボットコンテストではまだフルスペックでオンサイト開催を行うまでには至っていません。新型コロナ感染症が広がった当初、学校休業やオンライン授業、その後の学級・学校閉鎖の結果が今出始めているようです。

 10/28朝日新聞は「2021年度に30日以上登校せず『不登校』とされた小中学生は、前年度から24.9%(4万8813人)増え、過去最多の24万4940人だったことが文部科学省の全国調査で分かった。初めて20万人を超え、増え幅も過去最大となった。小中高校などのいじめの認知件数も過去最多を更新。文科省は、長引くコロナ禍に起因する心身の不調やストレスが影響していると分析している。不登校の小学生は前年度比1万8148人増の8万1498人、中学生は同3万665人増の16万3442人。不登校の小中学生の増加は9年連続で、1991年度の調査開始以降で最多になった。要因別では「無気力、不安」が最も多く、49.7%(前年度比2.8ポイント増)を占めた」と報じています。低年齢ほどコロナ禍の影響が大きいことが分かります。

 学力の面でもその影響は出始めています。7/28に文部科学省は小6生と中3生を対象にした今年度の全国学力調査の結果を公表しました。4年ぶりに行われた理科で、中3の平均正答率が約17ポイント悪化。学習指導要領の改訂で重視された「探究学習」に関する問題の一部で正答率が低く、指導要領の求める内容に十分対応できていない状況であることが明らかになりました。コロナ禍で、観察や実験の授業が減っていることも明らかになり、同時に実施された学校へのアンケートでは前年度、観察・実験を「週1回以上行った」とする中学校は45.8%で、前回から18.8ポイント減ったとのこと。文科省の担当者は、今回の調査は探究学習を踏まえた出題とし、「教科書にない設定で生徒が対応しきれなかった面がある。先生の指導も生徒に主体的に探究させるところまで踏み込めているかといえば道半ばだ」と分析しています。理科教育に詳しい横浜国立大の森本信也・名誉教授は「実験や観察に伴って仮説を立て、結果を分析することが科学的な探究学習そのもの。機会が減れば、探究の力を問う問題の正答率が低くなるのもおかしくない」と話し、「政府は理系人材の育成を進めるが、実験が減ることでその土台が揺らぎかねない」と危惧しています。

 約40年にわたり小中高の授業の研究を行ってきた秋田大学大学院の阿部昇・名誉教授は、国語、算数・数学、理科に共通する大きな課題として、「記述式設問の正答率から見えてくる『説明力』の弱さ」と「自らの考えを持てない『批判的思考力』の弱さ」を指摘しています。

 算数では、求め方を説明させる問題で、「『どのように求めたのかがわかるように』『求め方を式や言葉』を使って説明することができていない。説明をさせても、その説明にはどういう要素が必要なのか、逆にその説明のどこに不十分さがあるかを子どもたちに意識させる授業はまだ少ない。とくに理科の実験を説明する際に、数値がない述べ方では説明になりえていないという指導が、普段の授業で十分にされていない」と説明力不足の原因を指摘。「普段の授業でさまざまな対象・事象について問題点や不十分な点を発見したり指摘したりしながら、その改善の方法を多面的に見つけ出すという学習が弱いことと関連し、これからは批判的な考察・読解の授業を各教科で積極的に取り入れていく必要がある」と述べています。

では、このような課題を克服するには同氏らいいのでしょう?文科省と国立教育政策研究所が今回の調査についてまとめた「全国学力・学習状況調査報告書」には、質問紙の結果と正答率のクロス分析が載っていますが、それを見ると「課題解決型授業」「対話型の授業」を受けている子どものほうが全体として正答率が高いが分かります。阿部教授は、「対話型・探究型授業では質の高い思考力が育っていく。『説明力』『批判的思考力』さらには『多面的な考察力』『メタ認知力』を育てることが可能となるのはそのためである。これからの授業では、こうした課題解決を軸とする対話型・探究型が主流となることは間違いない」とその重要性を説いています。

 Truthの授業はすべて対話型であり、問題解決学習やロボットコンテストは正に課題解決型です。通う生徒たちが皆生き生きとし、長年通った生徒たちの多くはロボコンでも実績を挙げ、進学でも就職でも自らの人生を切り拓いていく力を身につけていると確信しています。今後さらに、教育理論「コンストラクショニズム」に基づいた教育の普及を図り、コロナ禍の呪縛から子供たちが解放される一助にならなければ、という使命感を改めて強く感じます。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年11月27日日曜日

【第174回】強いチームはプレゼンテーションポスターも優秀

 ~ 強いロボットの秘訣はプレゼンポスターにあり! ~

「ロボカップジュニアの大会は、価値ある技術および教育課程の開発を伴うものであり、大会開催後には参加者と情報を共有することが共通の理解となっている」「情報の共有は教育の主導者であるロボカップジュニアの重要な使命である」とルールに明記され、情報共有の大切さを説き、その一環としてプレゼンテーションポスター(以下、プレゼンポスター)の提出が求められます。

8月に行われたNESTロボコンのプレゼンポスターの審査では、ロボカップジュニア・ジャパンオープン2022で使用された基準を採用しました。Abstract(基本・要点)・Method and Theory(開発手法,理論,戦略)・Data/Result/Discussion(科学的探求)・Photos/Graphics(写真図表等視覚表現)・Layout/Design(論理的,効果的な配置)の5つの観点です。審査員を務めてくれたのはロボカップジュニアOB(多くはTruth講師OB)なので、自分の経験を踏まえて後輩にアドバイスをしてくれました。

まず、何を書くべきか?「まんべんなくロボットについて説明をしましょう。ロボットの構造、使っているセンサー、どのように得点を取るのか、そのためにどんなプログラムを作ったのか、どんなパフォーマンスをするのかを書きましょう」。次に、理由の必要性。「まず、使用しているコントローラやセンサー/モーター等の種類と個数、用途といったロボット構成の『基本情報』の提示が必要です。そのうえで、『工夫』した箇所をその『理由』とあわせて説明することが重要です」「『なぜ』その動きをさせたのか、『なぜ』その構造を採用したのかなど、理由まで深堀りできると読み手に理解してもらえるポスターになります」。加えて、データの提示。「値を決める時に実験をしていると思いますので、記録を付けてどのように決定したかが表やグラフで分ると説得力があります。その結果どの程度改善したかが分ると有効性を裏付けられるので、さらに良いです」「ロボットの開発を進めるうえでデータ分析はとても重要なので、その検討結果や検討に基づく改良の有効性などをポスターに示すことを求めています。そういった内容を1枚のポスターの中に含めることは大変ですが、情報を他の人に伝えるために整理することは、自分たちの今後の活動にも役立ちますし、他の参加者にとってもレベル向上の助けになるので、是非ポスター作成にも力を入れてほしいです」。そして、強いチームはプレゼンポスターも優れている。

 ある審査員(世界大会出場経験者)はこう語りました。「プレゼンポスターは、自分のロボットをアピールできる貴重な場だと思っています。自分のロボットを自分の頭で考えて作り、自分のロボットのことを自分で理解して、相手に説明できるくらい分かっていると、とてもいいポスターになります。自分のロボットが分かっているということは、その強さと弱点が理解できているので、本番の競技も強くなります。プレゼンポスターを作るということは、自分のロボットを強くできるチャンスなのです」と。自分が作ったロボットなのに、そのロボットがどういう場面で故障し、それに対してどう対処したらいいか、分からない参加者も多いので、とても貴重なアドバイスです。

 これはプレゼンポスターについてではありませんが、競技チーフを務めてくれたOB(世界大会優勝経験者)は次のような言葉を後輩に贈ってくれました。「レスキューは極めて難しい競技だと思っています。サッカーのように対戦相手がいないので、誰に勝てばいいのか分からないのです。結局、目の前のフィールドという課題に対して何%のパフォーマンスを自分が追求するか?という問いです。もちろん100%がいいのですが、100%を取るためには、その一歩手前の95%ができているときに、残り5%のできていない部分に対して、いかに臆病になれるか?そこで勝負が決まります」。この言葉には、最後の1%が不完全でも、その1%を潰して完全なものにしていこうとする、開発者としての自らに対する厳しさを感じます。

 これらの言葉は大人になったからこそ言えるものかもしれませんが、彼らが小学生や中学生、高校生と成長するか過程で、何年も取り組んでいたロボカップジュニアの活動から得たものであり、当時紛れもなく彼ら自身が実践していたことなのです。

大切なのは「勝ち負け」ではなく、この活動を通して「いかに多くのことを学んだか」ということである。
― ロボカップジュニアのルールより ―

―トゥルース・アカデミー

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年9月27日火曜日

【第173回】高き目標を掲げよ!

~ Truthがロボットコンテストに参加する意味~

最近の体験授業の際に、ごくたまに「Truthのロボット・サイエンスに入ったら、ロボコンに出なければならないのですか?」というご質問をいただきます。Truthの授業が専門的すぎると思われる方や、「勝敗を決めるコンテストに参加するよりも、楽に楽しくロボット製作やプログラミングを学ばせたい」と思われる方がいらっしゃるようです。Truthの生徒たちは現在、世界的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」や「ロボレーブ」、国内大会の「宇宙エレベーターロボット競技会」、NPO法人科学技術教育ネットワークが主催する「NESTロボコン」に出場しています。特に「ロボカップジュニア」では、地区予選(ノード大会)から始まって、関東ブロック大会、ジャパンオープン、世界大会と長期にわたる活動になる場合もあります。では、なぜ私たちは、時には苦しい思いをするかもしれないロボットコンテストに参加しているのでしょうか?


 ロボットコンテストにはそれぞれの競技のルールがあり、ルールを順守しながら課題を達成しなければなりません。ルールは世界の子供たちに向けての共通問題であり、各自がその問題に対して自分なりの回答を示す必要があります。その過程で様々なことを学び、自分の頭で考え、試行錯誤する、真の学習の在り方を身につけられます。また、ロボットコンテストは2名以上のチームで参加しなければならないので、自分だけが良ければいいというのではなく、チームメンバーと密にコミュニケーションを取ってチームワークを形成し、「チームのために自分は何ができるか? 何をすべきか?」を考えて行動しなければなりません。科学技術やプログラミング以外にも、社会に出てから必要とされる資質を身につけられると確信しています。


 ロボカップジュニアの開会式でもこれまで何度も述べてきましたが、「ロボットコンテストは、これまでの学習の成果を発表する場であり、教室の外で同じ志を持つ仲間との交流を通じての学びの場である」と、私は考えています。競技やコミュニケーション、他チームの作成したプレゼンテーション・ポスターを読むことを通じて、学びを深化させ発展させていく場です。教室から始まって、東京、関東・日本・世界と学習の場が広がっていきます。それだけでなく、子供たちが将来大人になって社会に出たとき、○○年のジャパンオープンに出たよ、○○年の世界大会に出たよ、というだけで、日本中に世界中に人的ネットワークを手にすることができるのです。


 ロボカップジュニアのルールには、「行動規範」の「精神」の項目に、『大切なのは「勝ち負け」ではなく、ロボカップジュニアの活動や経験を通して「どれだけ多くのことを学ぶか」である』と記されています。その通りです。しかし一方で、元プロ野球選手の松井秀喜氏が言っているように、「負けることよりも勝つことの方が多くのことを学べる」というのも真実です。最初から「負けてもいいや」と諦めて臨むより、「絶対に勝つんだ!」という思いで臨んだ方が、学ぶことが多いに決まっています。子供たちには、高い目標を掲げ、自己の可能性が無限であることを認識し、その目標に向かって自らが責任を持ち誠実な努力を行うことを体得してもらいたい、と願っています。


 このような考えから、ロボット・サイエンスでは、ロボットコンテストに参加することを前提としたカリキュラム編成になっています。「分からないから何でも先生に聞けばいい」という安易に答えを求めるのではなく、主体的にどんな問題でも取り組み、先生からヒントやアドバイスをもらったり、自分でいろいろ調べたりして、自力で問題を解決できるように育って欲しいと思っています。Truthのロボット・サイエンスの講師は皆、小~高校生時代にロボット・コンテストに参加し、活躍していた先輩ばかりですので、競技やロボット開発、プログラミングに精通しています。また、開発の楽しみや苦しさも分かっています。競技で勝った時の喜びも負けた時の悔しさも分かっています。彼らが次の世代を育てるために後輩指導に当たってくれ、技術的なことだけではなく、哲学や思想、問題解決の手法なども伝えてくれます。これが、Truthの代々伝わる文化、伝統となっているのです。


高き目標を掲げよ! 学習とは自らとの闘いであり、学力とは自らが生きてきた軌跡である。

―トゥルース・アカデミー

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年7月27日水曜日

【第172回】ここが違う!TruthのSTEM教育④

 ~ 理論・カリキュラム・実践の三位一体による高い実績 ~

当アカデミーは、2000年から教育用レゴブロックを教材とした科学技術教育、2001年からロボットを教材としたロボット製作・プログラミング教育、2008年からScratchなどを使用したプログラミング教育を行ってきたパイオニアとして知られています。いわゆる今はやりの「STEM教育(科学・技術・工学・数学の教育分野の総称)」の先駆けです。当時はロボット製作やプログラミングの教室はほとんど皆無であり、世間からはまだまだ玩具、お遊び程度に思われていた時代です。

 しかし、昨今はロボット教室やプログラミング教室が全盛の時代。そんな中、今年のロボットサイエンス体験会で初めて次のようなご質問を受けました。「ロボット教室はたくさんありますが、この教室は他と何が違うのですか?」と。改めて何が違うのかをまとめてみました。

1)根底として、プログラミング教育・ロボット教育の元祖、マサチューセッツ工科大学メディアラボのシーモア・パパート元名誉教授が唱える「コンストラクショニズム」という教育理論に基づく教育を実践。教育関係者からは「理論と実践が完璧に一致している」と高い評価を受けています。

2)実践に基づいたオリジナルのカリキュラム・授業案に対する信頼が高いこと。教師用の指導書として出版され、学校の先生を始め多くの指導者が活用していたり、科学館や行政機関、学校での授業提供もコロナ禍となるまで20年近く継続して行ったりしています。国立教育政策研究所の論文でも、私共の指導書に基づいた実践事例が紹介されています。

3) 初心者から上級者まで学習できる豊富なカリキュラムを提供。ブロックサイエンスでは小2~3年生からレゴ社WeDoを使用してプログラムを学びます。ロボットサイエンスではレゴマインドストームEV3から始まり、ロボットの自作・センサー製作、C言語やPythonによるプログラミング、Arduinoを使ったロボット製作やプログラミング等、小学生から高校生まで学べる内容を用意しています。

4)教室の授業での指導は、当アカデミーの卒業生を中心に、国際的なロボットコンテスト「ロボカップジュニア」でジャパンオープン(全国大会)に何度も出場したり世界大会に出場したりして、現役時代(19歳以下)に活躍したOBが担当しています。彼らのロボット製作やプログラミングの思想や技術、考え方の文化が伝承される環境を用意しています。

5)ロボットコンテストを「これまでの学習の発表の場、広い地域からの人々との交流による学びの場」と捉え、積極的に参加しています。ロボカップジュニアでは、2004年からほぼ毎年日本代表として世界大会に参加し世界チャンピオンも輩出している、最も実績ある団体です。米国発祥の国際的なロボコン「RoboRAVE」では、当アカデミーも属するNPO法人科学技術教育ネットワーク(NEST)が東京大会の運営を依頼され、東京を中心とした関東一円での普及を図っています。また、NESTロボコンや宇宙エレベーターロボット競技会にも参加しています。

 また、NESTでは、現在世界的に科学教育に必要とされる「制御」と「データロギング」をテーマに、「NESTロボコン」や「ロボットの鉄人」「ICTサイエンスキャンプ」などを毎年行い、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」で3年連続CEC奨励賞を受賞。21世紀の教育で求められる「社会的構成主義」の実践が認められ、その教育の質の高さが評価されています。

 この22年間パイオニアとして日本のSTEM教育をリードしてきましたが、時代が私たちに追いついた今、さらなる魅力ある先進的な教育を提供していきたいと存じます。Truthの新たなチャレンジをご期待下さい。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年6月27日月曜日

【第171回】ここが違う!TruthのSTEM教育③

 ~ 数学者のように、科学者のように考える ~

2000年からレゴ(R)エデュケーションのブロック教材やロボット教材を使ったSTEM教育を実践して来ましたが、当時はほとんど理解を得られないという状況でもあり、この教育の根底にある教育理論「コンストラクショニズム」(視線169回:https://truth-academy.co.jp/blog/article.html?page=5参照)を教科の学習に活かせないか?と考え、2005年より「ハンズオン算数くらぶ」を開講。翌2006年に「リトル・ダヴィンチ」と名称を変え、現在の「リトル・ダヴィンチ理数教室」へと受け継がれています。

国際的な学力調査OECD生徒の学習到達度調査(PISA)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)では、最近は少しずつ改善されてきていますが、「算数・数学、理科が楽しい」という日本の小中学生の割合が、国際平均を大きく下回っていることが長らく指摘されてきました。私共もそれまで進学塾を運営し子供たちの受験を応援してきましたが、算数・数学や理科の学習において公式を教え込み、出された問題にそれをいかに適用していくかを訓練していることに違和感を覚え、「なぜ?」という疑問に焦点が当てられる教育ができないかと模索を始めました。

そこで出合ったのが、坪田耕三氏(青山学院大学教育人間科学部教授/元筑波大学附属小学校教諭)が提唱し実践している「ハンズオン・マス」(手を使った体験的な算数活動)、滝川洋二氏(東海大学教育開発研究所教授・理科教育カリキュラム研究者)が理事長を務める「ガリレオ工房」や左巻健男氏(法政大学教職課程センター教授・新理科教育フォーラム代表・雑誌『理科の探検』編集長)を始めとする新しい理科実験の提案、カリフォルニア大学バークレー校ローレンスホール科学研究所で開発されている幼稚園から高校生を対象とした科学・数学領域の参加体験型プログラムGEMS(ジェムズ:Great Explorationsin Mathand Science)」、アメリカの環境教育プログラム「Project Wild」などの直接体験型の理数教育でした。

その後さまざまな教材を研究し、厳選した教材と受験指導の経験とを加味して、できる限り効果的な算数・科学活動が実践できるようにオリジナルのカリキュラムを積み上げてきたのが、リトル・ダヴィンチ理数教室なのです。学校の算数では小学校低学年は数量が中心になりますが、リトル・ダヴィンチ理数教室では数量と平面図形、立体図形の3分野を扱い、数量と図形の融合も図ります。規則性あるものを美しく感じる心をはぐくみ、数学者が行ったような探求を通して、自ら公式を生み出せる力を養成することを主眼としています。また、科学も観察する習慣を身につけることから始まり、電気回路やデータロギング(実験データの収集と分析)などを通して、科学する態度を育てていきます。

「教師中心の授業」から「学習者中心の学び」へと教育に求めるものが転換している現在、教育には「何を教えるか」ではなく、「何をどのように学ぶのか?そして、何ができるようになるのか?」が求められているのです。また、現在大人気のプログラミング学習環境「Scratch(スクラッチ)」も2008年より算数の授業に、micro:bitは2018年より科学に取り入れており、現在ではダヴィンチ・キッズ(年長対象)からのすべてのステップでプログラミング学習を行っています。

ICT技術の発達により、教育ツールも大きな変革期を迎えています。リトル・ダヴィンチ理数教室のカリキュラムは、子供たちの知的好奇心と探求心を刺激する、新しい教育ツールを導入しながら進化を続けていくつもりです。今後もご期待ください。

ふしぎだと思うこと これが科学の芽です
よく観察してたしかめ そして考えること
これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
これが科学の花です
-朝永振一郎-

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年5月27日金曜日

【第170回】ここが違う!TruthのSTEM教育②

 ~ 教材が持つ可能性を最大限に引き出す授業 ~

ブロック・サイエンスでは、レゴエデュケーション®の教材を使用しています。2000年10月から日本における第1期のレゴ教室としてSTEM教育をスタートし、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのカリキュラムをベースに、今の日本の子供たちに必要な教育とは何か?を日々模索しながら独自カリキュラムを開発してきました。その結果、ブロック・サイエンスには、3つの大きな特徴が挙げられるようになりました。

特徴の1つは「問題解決学習」。具体的には、「困っている人・動物がいるので、その人・動物の問題を解決するための物を各ステップで使用しているブロック教材で作ろう」という課題です。①提示された絵の中にどのような問題があるかを発見する②解決策を考える(解決のための推論を立てる)③問題解決のためのオリジナルの作品を作る(試行錯誤しながらの創作活動)④なぜそれを作ったのか、どのような工夫をしたのかを発表する(プレゼンテーション)⑤実験によって問題が解決したかを検証する(作品の評価)、という流れ。これは、ブロックビルダーⅠ(年少)から導入を図り、ブロックビルダーⅡ(年中)では野生動物園を舞台に様々な動物が抱える問題を解決。ブロックビルダーⅢ(年長)以降では、「基礎理論のための実験→それを利用した現実社会に存在するモデルの研究→問題解決学習」という流れで行います。問題解決学習では調べ学習も行いますので、それまで学んだ知識や技術と、調べた情報とを基に問題を解決する、という正にPISAのいう「リテラシー」(知識や情報の活用力)を育成するのには極めて有効と考えています。

2つ目の特徴は、キッズクリエーター(小1・2)以降、ステップが上がるにつれて「物理」が明確なテーマになっていくことです。様々なモデル研究を通して、機械力学の基礎の基礎をハンズオン学習で直接体験しながら学んでいきます。ジュニアエンジニア(小3~小6)やジュニアインベンター(小5~中1)では、中学理科で扱う「仕事とエネルギー」の概念を常に意識しながら学習を進めます。特にジュニアインベンターでは、空気圧や太陽光や風力エネルギーと仕事の関係を扱っています。だんだん研究室のような雰囲気になってきます。とある公立高校で同教材を使用したところ、これまでペーパーでしか学んでこなかった高校生たちは、「あ、こういうことか!」と大喜びしていました。Truthに通う子供たちは、理論に先立ち、楽しい思い出と共に実体験の引き出しをいっぱい作っているので、成長して理論を学んだ時にどこからでも引き出すことができます。各種ロボットコンテストで高い実績を挙げ、一流大学理系に進む卒業生が多いのは、この幼い頃からの実体験のためでしょう。

3つ目は、「デジタルとの融合」。今はプログラミング教育全盛時代となりましたが、21世紀の理科教育に必要なものは「制御(プログラミング)」と「データロギング(実験データを取ること)」であると、ここ数年言われています。キッズクリエータⅡ(小2・3)からプログラミングによる制御が始まりますが、ジュニアエンジニアで
は各単元の最後にマインドストーム®を用いて、センサーを使った自動制御やデータロギングを行っています。自動ドアやコインの選別機を作ったり、振り子の等時性を調べたりといった活動です。さらに、ジュニアインベンターでは、プログラミングによる制御とデータロギングを同時に行い、データによってプログラミングを修正するといった活動も行います。例えば、ソーラーパネルの動きを制御し、効率よく発電するにはどのような動きをプログラムすればいいのか?発電量の変化をグラフで読み取って、効率が悪いところはどう修正すればいいか?など。

コイン選別機の授業の様子↓


教育力の圧倒的な差が、生徒たちが長く通ってくれて、対外的にも大きな実績を残し、卒業しても末永く付き合いが続く、大きな一因になっていると確信しています。Truthの教育に共感し信頼して下さっている子供たちや保護者の皆様の期待に、どこまでも応え続けたいと思っております。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

指導理念 → https://truth-academy.co.jp/philosophy.html

2022年5月12日木曜日

【第169回】ここが違う!TruthのSTEM教育①

 ~ 社会的構成主義を実現する独自カリキュラムと指導 ~

2020年から小学校でプログラミングが必修になることを受け、雨後の筍のように同種の教室が増えてきています。そのような状況の中、2000年からSTEM教育(科学・技術・工学・数学教育)を実践している当アカデミーが依然として他の教室と一線を画す特長はたくさんあります。

 その中で最も重要なのは、「社会的構成主義」という教育理論を実現している点です。現在世界の子供たちが求められている学力は、OECDが実施する国際的な学習到達度調査(PISA=ProgrammeforInternationalStudentAssessment)が求める学力、いわゆる「PISA型学力」であることは周知の事実となっています。その育成に最も有効とされる教育が、PISAにおいて学力世界一を誇ったフィンランドの教育です。そして、フィンランド教育を世界一に導いたのが「社会的構成主義」と言われます。一言で言うと、「知識は固定的に教え込まれるべきものではなく、他者との協働の中で構成されていくと考える教育哲学」です。

 砕いてお話すると、「構成主義」とは、教師が一方的に知識を与えるのではなく、「学習者としての子供たちが自らの活動を通して自分自身で知識を構築し獲得できるようなものでなければならない」とする考え方です。これに「Leaning by Making(作ることで学ぶ)」という主張を加えたのが、マサチューセッツ工科大学メディアラボの創設者の一人、人工知能の研究者としても広く知られるシーモア・パパートが唱える教育理論「コンストラクショニズム」。パパートは、「デバグの効用」や「推論・実験・検証という正しい学びのサイクル」を唱え、プログラミング教育・ロボット教育の元祖であり、プログラミングソフトScratchの源やLEGOMindstorms®のアイデアを生み出しました。「社会的構成主義」とは、これを分断された個人が行うのではなく「他者との関わりで学ぶ」、すなわち、他の学習者と意見を交換したり刺激し合ったりしながら、その協働の中で知恵や知識を高め、自らの力で目標を達成させる、という考え方なのです。ここでは、教育者の役割はteacher(ティーチャー)やinstructor(インストラクター)として知識を与えることではなく、facilitator(ファシリテーター・促進者)やmentor(メンター・良き助言者)として学習者たちの活動を目標に向かって正しく進めるように導くことになります。

 「21世紀型スキル」を育成するには、プログラミング教育やロボット教育は不可欠です。しかし、ICTスキルの育成にだけ軸足を置いては、単なる教科の学習と何ら変わりはありません。創造力・イノベーション・批判的思考・問題解決・意思決定・学びの学習・メタ認知(認知プロセスに関する知識)・コミュニケーション・コラボレーション(チームワーク)・地域と国際社会での市民性等を含む「21世型スキル」やPISA型学力をも育成するには、「社会的構成主義」が避けては通れないと確信しています。そのため、既存のカリキュラムでは実現できないので、パイオニアとして、全カリキュラムと授業案、ワークシートをオリジナルで作成し、他にない指導を20年以上にわたって実践し続けているのです。

 お蔭様で、Truthの授業を見学したり指導者養成講座を受講したりした学校の先生や教育関係者からは、「理論と実践が完璧に一致している」と評価をいただいています。また、教室での活動を拡大して行うNPO法人科学技術教育ネットワーク(略称NEST)では、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」でも、「ICTを活用して社会的構成主義を実現する活動」として認められ、3年連続CEC奨励賞を受賞しています。

 Truthには、21世紀に求められる新しい教育があります。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

https://truth-academy.co.jp/philosophy.html

2022年4月21日木曜日

【第169回】ここが違う!TruthのSTEM教育①

~ 社会的構成主義を実現する独自カリキュラムと指導 ~


2020年から小学校でプログラミングが必修になることを受け、雨後の筍のように同種の教室が増えてきています。そのような状況の中、2000年からSTEM教育(科学・技術・工学・数学教育)を実践している当アカデミーが依然として他の教室と一線を画す特長はたくさんあります。

 

 その中で最も重要なのは、「社会的構成主義」という教育理論を実現している点です。現在世界の子供たちが求められている学力は、OECDが実施する国際的な学習到達度調査(PISA=ProgrammeforInternationalStudentAssessment)が求める学力、いわゆる「PISA型学力」であることは周知の事実となっています。その育成に最も有効とされる教育が、PISAにおいて学力世界一を誇ったフィンランドの教育です。そして、フィンランド教育を世界一に導いたのが「社会的構成主義」と言われます。一言で言うと、「知識は固定的に教え込まれるべきものではなく、他者との協働の中で構成されていくと考える教育哲学」です。

 

 砕いてお話すると、「構成主義」とは、教師が一方的に知識を与えるのではなく、「学習者としての子供たちが自らの活動を通して自分自身で知識を構築し獲得できるようなものでなければならない」とする考え方です。これに「Leaning by Making(作ることで学ぶ)」という主張を加えたのが、マサチューセッツ工科大学メディアラボの創設者の一人、人工知能の研究者としても広く知られるシーモア・パパートが唱える教育理論「コンストラクショニズム」。パパートは、「デバグの効用」や「推論・実験・検証という正しい学びのサイクル」を唱え、プログラミング教育・ロボット教育の元祖であり、プログラミングソフトScratchの源やLEGOMindstorms®のアイデアを生み出しました。「社会的構成主義」とは、これを分断された個人が行うのではなく「他者との関わりで学ぶ」、すなわち、他の学習者と意見を交換したり刺激し合ったりしながら、その協働の中で知恵や知識を高め、自らの力で目標を達成させる、という考え方なのです。ここでは、教育者の役割はteacher(ティーチャー)instructor(インストラクター)として知識を与えることではなく、facilitator(ファシリテーター・促進者)mentor(メンター・良き助言者)として学習者たちの活動を目標に向かって正しく進めるように導くことになります。

 

 「21世紀型スキル」を育成するには、プログラミング教育やロボット教育は不可欠です。しかし、ICTスキルの育成にだけ軸足を置いては、単なる教科の学習と何ら変わりはありません。創造力・イノベーション・批判的思考・問題解決・意思決定・学びの学習・メタ認知(認知プロセスに関する知識)・コミュニケーション・コラボレーション(チームワーク)・地域と国際社会での市民性等を含む「21世型スキル」やPISA型学力をも育成するには、「社会的構成主義」が避けては通れないと確信しています。そのため、既存のカリキュラムでは実現できないので、パイオニアとして、全カリキュラムと授業案、ワークシートをオリジナルで作成し、他にない指導を20年以上にわたって実践し続けているのです。

 

 お蔭様で、Truthの授業を見学したり指導者養成講座を受講したりした学校の先生や教育関係者からは、「理論と実践が完璧に一致している」と評価をいただいています。また、教室での活動を拡大して行うNPO法人科学技術教育ネットワーク(略称NEST)では、ICTを活用した教育実践事例のコンテスト「ICT夢コンテスト」でも、「ICTを活用して社会的構成主義を実現する活動」として認められ、3年連続CEC奨励賞を受賞しています。

 

 Truthには、21世紀に求められる新しい教育があります。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年3月28日月曜日

【第168回】加熱する中学受験

~ コロナ禍が浮き彫りにした公私の差? ~

 3回にわたってご紹介した練馬区地域おこしプロジェクトですが、残念ながら最終選考で選に漏れてしまいました。おそらくその理由は、国際的ロボットコンテストは練馬区でしかできないことだろうか?ということだと思います。確かにどこでも開催できます。新宿区でも文京区でも渋谷区でもできるでしょう。しかし、練馬区で開催しない理由も考えられないと思っています。  現在のオミクロン株による第6波では児童の感染者も増え、幼稚園・保育園・学校が学級閉鎖や学年閉鎖など、その影響を受けています。練馬区の公立学校では、GIGAスクール構想によって生徒全員にパソコンやタブレットなどの端末が行き渡ってい ますが、オンライン授業は行わない、端末は勝手に使ってはならず学校と家庭との連絡用としてのみ、といった話が生徒から聞かれます。この現状に一石を投じ、改革する機会を失ったのはとても残念なことです。一方、私立学校ではオンライン授業への対応が速く、2020年の段階で、双方向(先生と生徒がやり取りできる)型オンライン授業については、公立中学が10%に対して私立中学は72%。動画配信などを加えたオンライン学習となると、私立中では90%以上が実施していました。

科学教育については、海城中高がサイエンスセンターを新設し校舎自体を教材とする試みを始め、約90年前から太陽の黒 点観測を続けるなどサイエンス教育で知られる武蔵中高(写真 は同校にある天体望遠鏡)は新校舎「理科・特別教室棟」を新築、創立150周年の開成中高も7月に完成した高校新校舎A棟 と23年に完成予定のB棟をつなぎ最上階を理科専用フロアに、 桜蔭学園も創立100周年事業として、23年度までに新設する校 舎に理科専用フロアやデジタル機器を活用できるコーナーを設置、芝浦工大付は来年の100周年を前に「STEAM教育」を前面 に打ち出す校舎を完成――と、サイエンス教育に力を注ぎ始めています。この波は、山脇学園・恵泉女学園・富士見中高・昭和女子大付・普連土学園・女子美術大付といった首都圏の伝統ある私立女子中高にも見られ、 理科探究やデータサイエンス教育 の重視に乗りだし、人気を集めてい るそうです。「文理問わずサイエン ティストの力を」と改革に取り組む女 性校長たちも出てきているとのこと。 

武蔵高等学校中学校にある天体望遠鏡

これらの背景もあり、2022年度都圏中学入試は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けたにもかかわらず、受験者数は6 万2,400人と前年度より700人増加、2009年につぐ過去2番目の高水準となったとのこと。また、特長的な教育活動等、偏差 値や大学合格実績という数字に表れる成果以外の視点で学 校を選択するという行動様式が近年定着してきているようです。入試問題も、知識の量を問うだけでなく、麻布中では難民問題、開成中はジェンダー問題、女子学院では表現の自由と人権問題など、公立の学校であれば「偏向教育」と攻撃されかね ない社会問題を批判的に考える力を問う問題が見られるよう になってきました。また、首都圏ではプログラミング入試を実施している学校も現れています。

民間のみならず学校教育でも私立を中心にロボット教育・プ ログラミング教育が浸透しつつある昨今ですが、入試のための学習、教科の学習に堕すことなく、ロボット教育・プログラミング 教育が持つ力を発揮できる教育の在り方を死守しなければな らないと思っております。それは、実証的な精神に基づいて、「 推論・実験・検証」という正しい学びのサイクルを繰り返すこと によって、論理的思考力や正しい洞察力、批判的思考、問題 解決力を自らの体験として獲得していく教育です。トゥルースには、3つのコースがありますが、「遊びと学びの融合」をテーマに楽しく実践できるよう綿密なカリキュラムを提供しています 。中学・高校・大学と進んでいく中で、大きな財産となることを期待しています。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年2月9日水曜日

【第167回】練馬区地域おこしプロジェクト③

 

~ STEM教育の在り方に対する危惧 ~

NPO法人科学技術教育ネットワークとして、令和4年度『練馬区地域おこしプロジェクト』事業企画募集に『練馬発・国際ロボット教育 ― つながろう!教育の輪で』という事業を応募し、「国際的ロボットコンテストを練馬で開催しよう!」という提案をいたしました。1次書類審査が通ったという連絡が年明けにあり、先日10名ほどの専門家の審査員を前に2次審査のプレゼンおよび質疑応答を行ってまいりました。

 

1次審査書類審査に先立ち、練馬区在住の保護者の方々にアンケートをお願いし、通信165回(https://truth-academy.jp/truth-shisen/501)でSTEM教育を望む声をご紹介いたしましたが、一方でその在り方に危惧を抱く方もいらっしゃいました。その危惧にお答えしたいと存じます。

■一般論として、区のプロジェクトに採用された場合に、レベルに高低差のある子供たち相手に、短期で目に見える成果を上げることを求められる(~が出来るようになる、など)と、とにかく詰め込み教育になりがちかなと思います。
■いま国で検討されている内容が、他の教科と同じような詰め込み型の学習になってしまうと、むしろ数学、理科嫌いを助長させてしまうのではないかと、不安。課題解決のツールとして身につけ、活かせるような教育になってほしい。自分たちで手を動かして、課題解決に導く、そんなカリキュラムだと、いいと思う。失敗から学べることも多いことも、身を持って感じられるような…。

 

トゥルースは中学校や高校では毎週1回1年間の授業を行ってきましたが、一方この20年間日本科学館は杉並区科学館等、いろいろな科学館や区との協働事業で、1クラス20~30名の1日~3日の短期講座を行ってきました。私共の使命は、『社会的構成主義』という教育理論(視線128回参照:http://truth-shisen.blogspot.com/2018/04/128.html)の実践と普及にあります。学校の先生始め教育関係者からは「理論と実践が完璧に一致しいている」との評価をいただいており、「問題解決学習とは、こういうことなのか!」というお声もいただいております。指導者向けの著書や雑誌の連載、NESTが運営する指導者向けe-learningサイト「STEMing」でも、その手法を紹介しています。そのため、詰め込み教育に陥ることなく、「Activity Based Learning(子供たちの活動をベースにした学習)」「Project Based Learning(プロジェクト型学習・問題解決型授業) 」「Future oriented Education(未来志向の教育)」を実践するノウハウ、経験は十分にあると自負しております。

■STEM教育に興味を持つ保護者は、教育熱心だと思います。そこで考えられるのが、中学受験との兼ね合いかと。可処分時間を考えて、中学受験の塾よりもSTEM教育を選択してもらうには、STEM教育の結果を見せるのが大切かと思います。中学受験は、学歴という短期の利益を得ることができるのに対し、STEM教育は短期的利益はあまり見込めません。長期的目線でどのような利益があるのかを訴えないと、保護者はお金と時間をかけないと思います。

 

もっともなご意見だと思います。しかし、受験とSTEM教育は両立できないものなのでしょうか?長く通っている生徒しか合格校は分かりませんが、トゥルースに通いながら受験勉強もして、御三家・早慶・国公立を始め優秀な学校に入学している生徒が多いようです。高校や大学の推薦状を依頼されることもあります。ご本人のロボットコンテストでの実績や活躍をしたためた私の推薦状がどれだけの効果があったのかは分かりませんが、全員から志望校に合格したという報告をいただいております。そして、ほぼ100%が理系に進学しています。また、生徒から講師になり、10年~20年トゥルースに関わってきた学生たちは、ロボット・ゲーム・機械・電気・制御関連の専門性を活かした職に就いています。21世紀の三種の神器が「機械・電気・AI」と言われる中、STEM教育を通じて『21世紀型スキル』(視線95回参照:http://truth-shisen.blogspot.com/2015/02/)を身につけた成果であると感じております。また、ロボットコンテストから得られる成果の一つとして、子供たちが将来大人になって社会に出たとき、○○年のジャパンオープンに出たよ、○○年の世界大会に出たよ、というだけで、日本中に世界中に人的ネットワークを手にすることができるということが挙げられます。かけがえのない人生の財産を手にすることができる場でもあるのです。

 

 

ロボカップ2012世界大会 優勝チーム「Amalgam」

 

令和4年度『練馬区地域おこしプロジェクト』の採択事業は2つのみ。難関ですが、練馬を起点としてSTEM教育の輪が全国に広がり、海外との交流も実現できればと願っています。

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2022年1月8日土曜日

【第166回】新年のご挨拶

 

~ 高まるデータサイエンス教育の必要性 ~ 

 

2022年の東京は、北風が強く吹く晴天の元旦を迎えました。コロナ禍が発生してから早2年、一見落ち着きを見せていましたが、オミクロン株が猛威を振るう前の、束の間の嵐の静けさに過ぎなかったのかもしれません。ウィルスと人間の科学との戦いはまだ続きそうです。

昨年6/28スロバキアのクライン・ビジョン社が開発した「空飛ぶ車」が35分間の飛行テストに成功しました。「エア・カー」と名付けられた自動車兼飛行機です。スロバキアのニトラ国際空港からブラチスラバ国際空港までの70㎞を35分間で飛行に成功。着陸後、ボタンを押すとエア・カーは3分でスポーツカーに変身し、そのまま空港から市内へ移動しました。テストでは最高で高度2500メートルまで上昇し、速度も時速190キロまで出たということです。その映像は、まるでSF映画を見ているようです。

↓エア・カー飛行の様子


https://www.youtube.com/watch?v=a2tDOYkFCYo

「空飛ぶ車」の定義は様々ですが、経済産業省は、①電動②自動(操縦)③垂直離着陸を条件としています。

経産省の工程表では、2023年に離島の荷物輸送・観光地の遊覧飛行、25年頃に山間部や都市部の荷物輸送・旅客輸送、30年代に自動無人飛行・自家用を目指すとしており、2025年の大阪万博では、会場の遊覧飛行や会場と関西国際空港などを結ぶエアタクシーサービスを計画しています。

今後さらにAI(人工知能)やロボットの技術が進化し、それに携わる人材も当然必要となります。

昨年、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」という文部科学省の認定制度が始まりました。数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行うものを文部科学大臣が認定及び選定して奨励するというものです。昨年は大学・短期大学・高等専門学校から78件の応募があり、11件が認定されました。その中には、ロボカップジュニアにもご協力くださり、Truthの卒業生も通う金沢工業大学の「KIT数理データサイエンス教育プログラム」、長岡工業高等専門学校の「AIR Techエンジニア育成プログラム」も入っています。

データサイエンス」という言葉を最近よく聞きますが、これはデータを用いて新たな科学的および社会に有益な知見を引き出そうとするアプローチのことで、数学・統計学・情報工学・機械学習など多岐に渡る分野と横断的に関係しています。このところ、経営戦略や販売促進にビッグデータや統計学が活用されるようになり、ビジネスシーンでも数学・統計学の必要性が高まっているようです。数学独習法の著者・富島佑允氏(大手外資系生保で資産運用部門に勤務)は、代数・幾何学・微積分学・統計学を「数学四天王」と呼び、その全体像をざっくりつかみ、俯瞰できるようになることの大切さを説いています。

また、教育の分野でも、欧米を中心に30年程前から統計教育の重要性が説かれ、データに基づく実践的な統計的問題解決力、思考力の育成を国家戦略として位置付けています。日本でも、平成20・21年度の学習指導要領では、小中高ともに統計教育が充実し、特に高校の数学や新教科の情報、大学入学共通テストではデータの活用内容に重点が置かれています。こども統計学 なぜ統計学が必要なのかがわかる本の監修者である渡辺美智子氏(理学博士/立正大学データサイエンス学部教授)は、「統計データを『調べる力』、そこから何かを『読み取る力』、その結果から『身の回りの問題を解決し改善する力』など、総合的な探求力が養える統計学では、すべての人に役立つ、生きる上で強力な武器になるのです」とその意義を説き、「日常の些細な事柄においても感情や思い込みではなく、エビデンスに基づき判断する」「統計リテラシーを育てるには、子どものうちからいろいろな文脈でデータを集め、データに基づいた判断を下す練習をしなければなりません」と、幼いころからの教育の重要性を訴えています。

コロナ禍において、様々なデータや統計、シミュレーションが報道されています。しかし、正しく統計を読む力、統計で考える力を持たなければ、正しい理解も正しい判断もできないのです。算数・プログラミングを扱っているリトル・ダヴィンチ理数教室でもデータサイエンス教育の導入を検討したいと考えています。

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

― データは21世紀の刀、データ分析ができる人は21世紀のサムライ ―

Google元CEOエリック・シュミット

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳