~ 個人の尊厳と自由を守るためには? ~
今回の新型コロナ感染症(COVID19)の対応は、感染拡大防止・経済活動・デジタル監視という3つの要素の中でどれを優先させるかによって、各国の対応が異なっているようです。ヨーロッパの国々やニュージーランドなどは早期にロックダウン(都市封鎖)を行い感染拡大防止を優先。アメリカやブラジル、スウェーデンなどは個人の自由を尊重し、経済活動はほぼ従来通り。中国や韓国、台湾などは、スマホ等を利用したITによる行動・健康状態監視により感染者を隔離し、必要に応じて移動規制。日本やオーストラリアは、緩い規制と啓発により、感染拡大防止と経済活動の両立を図ろうとしています。デジタル監視(ITを活用した感染者追跡)は、個人の権利、プライバシー保護という観点から慎重に考えなければならない問題です。
中国では、各自治体が行動履歴や家族構成などから感染リスクを割り出し、健康状態を緑・黄・赤の3段階の「健康コード」を付けます。「赤」「黄」判定となった人は、交通機関の利用や入店が制限され、自宅での自主隔離が求められます。健康コードは、国内で9億人のユーザーを持つ電子決済サービス「アリペイ」のミニアプリなどから閲覧できます。また、「感染者情報」を積極的に市民に共有させることで、感染を防ぐ手法を採っていますが、民主主義からすると個人の権利に対する考え方がずいぶん異なるように思われます。民主主義国家の韓国でも、クレジットカードなどの利用履歴を追跡することによる行動監視に加え、携帯電話の位置情報・監視カメラから各個人の行動履歴を追跡し、感染疑いのある人物の追跡・隔離を実施しています。
日本人はデジタル監視について、どのように感じているのでしょうか?
朝日新聞が6/1~16に「『安全』のため個人情報どこまで渡せる?」というアンケートを実施しました。<感染症予防や、私たちの安全のためなら個人情報が使われてもいいと思いますか>という問いに対して、52.7%が「共有したくない」、23.1%が「政府が使うならいいと思う」。<安心安全のためなら、あなたが政府に提供してもいいと思う個人情報はどれですか(三つまで選択可)>には、37.4%が「健康状態・病歴・通院歴」、36.9%が「すべて提供したくない」、34.3%が「氏名・住所・学歴」。情報提供により個人を特定されたり、情報が漏洩したりすることに不安を感じたり、自分の行動を監視されることに嫌悪感を覚える人が多いようです。
世界的ベストセラー「サピエンス全史」の著者、現代の知の巨人と呼ばれるユヴァル・ノア・ハラリ氏は、FINANCIAL TIMES誌で次のように述べています。「今日、人類史上初めて、テクノロジーを使ってあらゆる人を常時監視することが可能となった」「今回の感染症の大流行は監視の歴史における重大な分岐点になるかもしれない」「私たちは重大な選択に迫られている。全体主義的監視か、それとも国民の権利拡大か」と。そして、「監視政治体制を構築する代わりに、科学と公共機関とマスメディアに対する人々の信頼を復活させる時間はまだ残っている。新しいテクノロジーも絶対に活用すべきだが、それは国民の権利を拡大するものでなくてはならない」と訴え、「新型コロナ感染症の大流行は、公民権の一大試金石なのだ」「もし私たちが正しい選択をしそこなえば、自分たちの最も貴重な自由を放棄する羽目になりかねない」と警告します。
日本では今年6/19に厚生労働省が、「新型コロナウィルス接触確認アプリ(COCOA)をリリースしました。
COCOAは、ブルートゥースの無線通信を使って定期的に近くのデバイスに信号を送り、信号の強さからお互いの距離を推測します。そして、1m以内に15分以上接近したデバイスと接触符号を交換します。COCOAの利用開始に当たって個人情報を入力することはありませんし、位置情報も取得されません。プライバシーに最大限配慮したものになっています。感染者も自分で登録するので、あくまで「国民の善意」に基づいたシステムであることが否めません。そのため、9/10時点でも登録者1,665万人であり、政府が目標とする国民の6割には程遠い状況です。しかし、私たちの自由を脅かす不安はあまりないように思われます。9/16(水)~18(金)幕張メッセで「第11回教育ITソルーションEXPO」にTruthが所属するNPO法人科学技術教育ネットワークが出展し、学校の先生が動画でロボット・プログラミンの指導法を学べる無料eラーニングサイト「STEMing(ステミング)」を紹介します。そこでは関係者全員がCOCOAをインストールすることが入場の条件になっています。
一日も早くWithコロナの時代が収束し、皆が個人情報やプライバシーの監視を受けることもなく安心して暮らせる日が、そして子供たちがマスクを着けずにお互いに触れ合い楽しく過ごせる日が来ることを望んでやみません。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
http://truth-academy.co.jp/
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。