2008年2月1日金曜日

【第32回】生のための学校 「フォルケホイスコーレ」④


― グルントヴィの思想―

フォルケホイスコーレは、国民的詩人であり近代デンマーク精神の父であるグルントヴィ(1783-1872)により構想され、今日のデンマークを築く原動力となっています。彼はどんな思想の持ち主だったのでしょう?

牧師の四人兄弟の末っ子として生まれたグルントヴィは、豊かな自然と母親の愛情、土地の人々に囲まれ情操豊かに育ちました。特に、母や人々が語る伝説や昔話は彼の生涯に決定的な影響を与えたようです。北欧神話や歴史の研究に没頭した青年時代でしたが、父親の跡を継ぎ牧師になると、聖書中心主義に立ち既成の儀礼化したキリスト教会を批判し、その職を奪われます。しかし、真理は聖書ではなく、教会に集まる会衆の中にあると考えるようになりました。農村区の教区を支配し、文句も言わずに真面目に働かないと来世の幸福はないと脅す保守的・権威的な僧正に対して、キリスト教は地方の小さな教会に集まり、祈り、語り合う貧しき信徒の中にあるのだ、「初めに人間があり、そして次にキリストである」、逆ではないと説くグルントヴィ考えが社会改革を目指す民衆の心をとらえ、彼が書いた生涯1400を越える賛美歌と共に、既成の権威と戦う人々の精神的な支柱となっていきます。グルントヴィは、「真のデンマーク人」とは、「あらゆる人間の自由と独立、高貴な自負、名誉、尊敬を破壊するような言動の暴力者・学者・傲慢の高みにいる者たちと戦う者」と自由主義を唱えています。

また、「違いを違いと認め、その上で互いに作用し合い、差異を取り込む共同体」を目指し、よきデンマークをつくるにふさわしい民衆が育成されなければ民主制は衆愚政治に陥ると考えました。デモクラシーを支える学校が必要であると考えたのです。そして1838年、国王に乞われて『生のための学校』という冊子を書くのです。
彼の思想は以下の4つに集約されます。

①生きた言葉と死んだ言葉
②相互作用と対話
③歴史的―詩的
④試験の廃止と生の啓発



次回は、これらについてご紹介します。

【参考】『生のための学校』(清水満著:新評論)


To be continue・・・