― 批判的思考(critical thinking) ―
先月ご紹介したEnnisは30年以上に渡って批判的思考に関わってきた代表的な研究者です。彼は、批判的思考を、「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で省察的な思考」と定義しました。そして、仮説の形成・問題を別の視点から見ること・質問すること・別の解を考えること・計画を立てることなど創造的な思考も含まれるとし、以下のように、14の傾性(態度)と12の能力からなる詳細な「批判的思考/推論カリキュラムの目標」が掲げられています。
【態度】<1>命題や問題を探す<2>理由を探す<3>情報を集めようとする<4>信頼できる情報源を使う<5>全体の状況を考慮に入れる<6>中心点から離れない<7>基本的な関心を忘れない<8>他の選択肢を探す<9>オープンマインドでいる<10>証拠と理由が十分であれば、その立場に立つ<11>題が許す限りの正確さを求める<12>複雑な全体を秩序だって扱う<13>自分が持っている批判的思考技能を使う<14>他人の感性・知識レベル・洗練さの程度に敏感である 【能力】<最初に明らかにすること>①問題に焦点を当てる②議論を分析する③明らかにするための、または挑戦するための質問をし、答える<基本的サポート>④情報源の信頼性を評価する⑤観察し、その結果を判断する<推論>⑥演繹的推論を行い、判断する⑦帰納的推論を行い、判断する⑧価値判断を行い、判断する<更に明確化する>⑨用語を定義し、定義を判断する⑩仮定を明らかにする<戦略>⑪行動を決める⑫他人と相互作用する また、彼は入門書において、FRISCOアプローチを提案しています。これはFocus, Reasons, Inference, Situation, Clarity, Overviewの頭文字を取ったもので、これらの点を押さえることにより遺漏なく批判的思考を行えるようにするチェックリストとなっています。 <F>現在の問題が何であるか、焦点を当てて明確化すること(議論を分析することとも言える) <R>情報を集め、理由を明らかにすること(ここでは情報源の信頼性などが検討される) <I>手持ちの情報から決定にいたる推論のステップを検討すること(演繹や帰納など論理学的な知識を使用。特に仮定を同定し他の選択肢を探すことが重要) <S>状況を理解すること(状況は理的環境も社会的環境も含む。状況には、人・歴史・知識・感情・偏見・集団・興味などがある) <C>使われている言葉の意味を明確にすること <O>概観することであり、これまでの意志決定プロセス(FRISC)を繰り返し行うこと もともと、この批判的思考は、1930年代にアメリカの教育界で社会科と国語科で主張され、60年代に教育の現代化というスローガンと共に脚光を浴びたものの、70年代には基礎学力重視の声にかき消され、80年代に入って基礎学力の中に位置づけれられて再登場したという経緯があります。しかし、今日では子供のみならず大人も、民主的な社会の責任ある市民の教育のために不可欠なツールとして教育・経済・医療・政治などあらゆる分野で求められています。 現在の日本では、未だに基礎学力=読み書き・計算といった捉え方が基本にあり、基礎学力重視・受験型知識偏重主義が日増しに声を大きくしています。教師や大人の教えたことを鵜呑みにする教育がどこまで続いていくのでしょう?そして、子供たちは、いつ、どこで、批判的思考を身に付けたらよいのでしょうか? 【参考】批判的思考の諸概念 ~人はそれを何だと考えているか?~(道田泰司) http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/%7Emichita/works/kiyo0109/kiyo0109.html |
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教育用レゴブロックや算数ブロック、ロボットなどの教材で学ぶ科学教室トゥルース・アカデミー代表の中島晃芳です。 このブログは、当アカデミーが月に1回発行しているお知らせ「Truth通信」に、2004年より掲載している「トゥルースの視線」をまとめたものです。 科学教育や算数教育、ICT教育、ロボット教育、ロボカップジュニアなどについて私の雑感を書き記しています。ぜひご一読いただければ幸いです。