2024年8月26日月曜日

【第193回】新たな麻雀ブーム?②

 ~ IQも上がる麻雀の教育的効果とは? ~

Mリーガーの女子プロが松実高等学園健康麻雀部を訪問
埼玉県春日部市にあるフリースクール「松実高等学園」の部活動「健康麻雀部」が、新聞やテレビで取り上げられました。孤独感を抱える生徒たちのコミュニケーションツールとして好影響をもたらせているとこのこと。顧問の斎藤友昭氏は「麻雀は一人一人が他者とのつながりを深め、協調する力を身に付けることができるボードゲーム」と言っています。部員たちは地域のデーサービスなどにも出張し、高齢者の方々と麻雀交流会を行っており、部活から地域、地域からより社会へと飛び出していけるようになったそうです。また、この学校では今年度から健康麻雀を授業に取り入れたそうです。

 日本健康麻将協会事務局長・理事の戸構亮氏は「子どもがマージャンを打つことには大きく2つのメリットがある。1つは子どもの社会性が育つこと。麻雀は運の要素も大きく、どれだけ自分が頑張っても勝てないことがありますが、対局が終わるまでは打ち続けなくてはいけません。自分がどう振る舞うべきかといった社会マナーを学べます。2つ目は多世代間交流ができること。世の中にはさまざまなゲームや競技がありますが、年齢や性別の制限があるものも少なくありません。麻雀は小学生が大人に圧勝することもある特異な競技のため、多世代が同じ土俵で競い合えます」と述べます。

 横浜市立大学脳神経外科学教室に所属する医師であり、自身も麻雀のプロ競技者である東島威史氏は、ニューロンの子供麻雀教室に通う子供たちを対象にIQ検査や性格検査を行い、麻雀が脳に及ぼす影響について研究し、論文を発表しました。その論文によると、参加者の初回のIQ平均値は106.05でしたが、1年後には113.75に上昇。その他の言語理解指標(VCI)は100.6から106.75、処理速度指標(PSI)も108.05から119.05まで上がったとのこと。「実は言語理解は座学よりも生きたコミュニケーションで伸びるといわれています。その点、マージャンはさまざまな年齢層の他者とコミュニケーションを取りますから、上昇したと考えられます。また、処理速度は集中力の向上に加えて、目で情報をつかみ、手と思考を連動していく過程で強化されたと考えられます」と分析。

また、麻雀は将棋や囲碁・チェスと違って、牌のすべてが見えない「不完全情報ゲーム」であることを指摘しています。だから、「完全情報ゲームでは実力差のある人に勝つのは難しく、異なるレベルの者同士が真剣勝負をすることもできません。しかし、麻雀は運の要素も大きいため、知識と経験だけでは勝てないのです。そのため異なるレベルの者同士が楽しめ、小学生と大人、初心者とプロが真剣勝負できるのが麻雀であり、そういったコミュニケーションツールとしての有用さが言語能力の向上に役立ったと考えています」と。また、不完全情報ゲームだからこそ「常に相手がどんな牌を持っているのか、どんな役で上がろうとしているのか、想像力を働かせないと勝てませんこの過程が情報処理を非常に複雑にします。実は、私たちが生きている社会も多人数参加型の不完全情報ゲームそのもの。複雑で先が読めない社会で、最適な正解を見つけるのは非常に難解です。多人数参加型の不完全情報ゲームそのものである社会を生き抜く力も鍛えられると感じています」と述べています。

 麻雀の上達には、次のようなことが必要になります。①アガりの形(役:ヤク)を覚える ②役によって異なる点数(翻:ハン)を覚える ③形による点数(符:フ)を覚える ④翻と符とをかけわせた点数計算表を覚える ⑤確率と統計に基づき効率的にアガるための技術(牌効率)を学ぶ ⑥自分の捨てた牌で他者をアガらせてしまう(振り込む)ことを回避するために相手の手の内を想像したり、危険な牌と安全な牌の見分けたりする技術を学ぶ ⑦局面によって強気で勝負するのか、自分のアガりを諦めるのか?を判断する力をつける(局収支による押し引き)、さらに⑧人の癖や表情・仕草を読み取る「人読み」。これらを単に覚えたり学んだりするだけではなく、実践できるように練習しなければなりません。これが「麻雀は非常に奥が深い知的ゲーム」と言われる所以なのです。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
1年間の知能指数の変化