2024年11月26日火曜日

【第196回】ノーベル化学賞もAI研究者に!

 ~ AIが生み出すブラックボックスの可能性~

10/9(水)スウェーデン王立科学アカデミーは、2024年のノーベル化学賞をワシントン大学のデイビッド・ベイカー教授と、グーグルのグループ会社で、ロンドンに本社のある「DeepMind」(ディープマインド)社のデミス・ハサビスCEO、研究チームのジョン・ジャンパー氏を合わせた3人に授与すると発表しました。たんぱく質の立体構造の高精度な予測や新たなたんぱく質を人工的に設計できるAI技術を開発し、生命科学の研究や創薬に革新をもたらした功績が評価されたとのことです。AIでヒトの体を構成するタンパク質の形を簡単に予測できるようになることで、その体に効果的に働く薬を見つけることがより簡単になります。がんや難病などに効く薬や、治療法のさらなる開発につながると期待されています。

これで、今年のノーベル賞は、物理学賞と化学賞の両賞がAI研究者に与えられたことになります。AI研究の第一人者である東大の松尾豊教授は、「2日連続のAI関連の授賞は、科学のパラダイム(規範)が変わりつつあるということかもしれない。従来の理論や実験科学から、データやAIを使って新しい領域を切り開く方向にシフトしなくてはいけないという意味合いも感じる」(日経新聞)「科学は今まで、人間が〈仮説〉を立て、〈実験〉をしてトライ&エラーを繰り返すことで〈結果〉を出してきた。それが、AIを使うことで“トライ&エラー”が無くなり、簡単に短時間で〈結果〉が出てくる。ただ、なぜその〈結果〉が出たのか、その部分はブラックボックスになってしまう。しかし、人間の理解を超えた“ブラックボックス”ができてしまうが、今後AIが発展していけば、より一層こうした傾向が強まる。ノーベル賞は“これも一つの科学の形だ”と示した」(テレビ朝日)と述べています。

前回予告しました、ホリエモンチャンネルで紹介された、千葉工業大学未来ロボット技術教育センター(fuRo)所長であるロボットクリエーター・古田貴之氏の「異世界転生」の技術も、このブラックボックスにつながります。fuRoでは、中国製の安価な四足歩行ロボットをトレーニングすることに取り組みました。物理的なロボットをトレーニングするのには時間とコストがかかるので、4096台のロボットが厳しいトレーニングを受け、何千世代にも渡って能力を進化させることができるデジタル空間に仮想環境「仮想世界」を作りました。なんと、2万世代のトレーニングがわずか5時間程度でできるそうです。しかし、問題は仮想世界で学んだスキル(AI)を現実の世界(物理的なロボット)に移行(転生)させるか?―その異世界転生をどうしたら可能となるか?両者では物理法則や摩擦などが異なるのでその違いを克服するため、仮想世界で訓練されたAIが現実世界に適応し、機能するための「ゲート」を編み出したそうです。

これが驚くべき成果を生みました。ロボットはどんな段差の階段を上り下りすることも倒されても起き上がることも自由にできて、どんな段差や障害物があっても自分で巧みに体を操って歩いて行けます。驚くべきは、カメラやセンサーを使用していないことです!ロボットは激しいトレーニングによって培われた「筋肉の記憶」や「反射神経」にのみ依存しているのです!さらに、屋外でも、行き先を指示さえすれば、自分の力でそこまで移動できるのです。屋外において自動操縦でまともに動く四足歩行ロボットは、世界初とのこと。これらは、仮想世界のブラックボックスでAIが自分で身に付けた成果なので、人間にはどのように学んだのかは分かりません。AI自身が見つけた最適解なのでしょう。

これまではセンサーやモーターなど様々な計算に基づいてプログラミングしていたのが、その必要がなくなってしまうのではないか?この「異世界転生」の技術は、ロボット開発の在り方そのものを変えてしまうように思えます。

ぜひ、動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=Nx82jnOQDU0&t=2s
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
異世界転生4足歩行ロボット

2024年10月26日土曜日

【第195回】AIの基礎を築いた2氏がノーベル物理学賞受賞!

~ 今では身近となったAI やAIロボット~


ノーベル賞発表写真
スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の8日午後7時前、今年のノーベル物理学賞の受賞者にアメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の2人を選んだと発表しました。2人は、現在のAI=人工知能の技術の中核を担う「機械学習」の基礎となる手法を開発し、その後「ディープ・ラーニング」など新たなモデルの確立につながったということです。

この受賞は多くの人工知能研究者に驚きをもって受け止められました。「コンピューターのアルゴリズムの研究はこれまでの常識から考えるとノーベル物理学賞の範ちゅうではない分野で、非常に驚いている」(東京大学・樺島祥介教授)、「ノーベル賞は情報分野が無いので、どうなるかなと思っていたが、物理で持ってきたのは意外だった」(人工知能学会会長・慶応大学・栗原聡教授)、「物理学賞はふつう、AIなどの情報系から遠い分野に贈られるので、すごくうれしい。社会的なインパクトが評価されているのだと思う」(東京大学・松尾豊特任教授)
人工ニューラルネットワーク(朝日新聞デジタルより)
NHKの報道によると、2人の研究は次のようなものだそうです。「ホップフィールド教授は人間の神経回路を模倣した『人工ニューラルネットワーク』を使って、物理学の理論から画像やパターンなどのデータを保存し、再構成できる『連想記憶』と呼ばれる手法を開発しました。この手法によって、不完全データから元のデータを再現できるようになりました。ヒントン教授はこの手法を統計物理学の理論などを使って発展させ、学習した画像などの大量のデータをもとに可能性の高さから未知のデータを導き出すアルゴリズムを開発しました」。また、ノーベル財団が公表した受賞した研究の説明資料には、現在ファジィシステム研究所の特別研究員である福島邦彦氏と東大名誉教授の甘利俊一氏の2人の日本人がこの分野に大きく貢献したことが記載されていたとのことです。

これらの研究のお陰で、現在ではChatGPTなどの生成AIやAIが搭載されたロボットなども身近になりました。AIロボットは、従来型のロボットと比べてより複雑なタスクを実行できることが特長です。各種センサーやカメラなどのハードウェアから入力された情報をもとにAIが学習を行い、動作を最適化できます。状況に応じた判断が必要な作業や、人間との言葉を通じたコミュニケーションなどがAIロボットの主な用途です。

工業や農業、接客業などの現場で活用されている業務用のAIロボットは、生産性を高めたり、人手不足を補ったりしてくれています。くら寿司がAIで解析した「魚の食欲」に応じて給餌するスマート給餌機を開発し、AIやIoTを活用したハマチのスマート養殖に日本で初めて成功したというニュースも記憶に新しいかと思います。家事をしてくれるロボット掃除機「ルンバ」や、人を癒すソニーの「aibo(アイボ)」やGROOVE Xの「LOVOT(ラボット)」、MIXIの「Romi(ロミィ)」などの家庭用のAIロボットも身近な存在になっています。

自動車部品サプライ―あの最大手のデンソーは、人とロボットの協働に向け生成AIを使った自律型ロボット制御技術を開発しているとのこと。人が自然言語を使って口頭で指示できるロボット制御技術の開発プロジェクトを2023年4月に立ち上げたそうです。日常の中で人間とロボットがコミュニケ―ションを取り、共同作業ができる社会が近づいていることは、とても楽しみです。

しかし、最近驚いたのは、ホリエモンこと堀江貴文氏の「ホリエモンチャンネル」で昨年8月に紹介された、ロボットクリエイターとして有名な古田貴之氏が所長を務める、千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター(fuRo)の「異世界転生」と呼ばれる技術です。次回、じっくり紹介しいたいと思います。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
アイボ
ラボット

2024年9月26日木曜日

【第194回】科学技術の進化と戦争

 ~ 戦争の在り方を変えたドローン ~

ウクライナでの戦争でドローンが戦争の在り方を変えたといわれています。戦地でドローンが果たす役割は、偵察や監視、攻撃まで実に幅広く、いま世界中の軍事シーンでドローンが大きな存在感を示しています。

 8/11放映TBS「つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争 1945⇒2024」では、ウクライナ軍の攻撃用ドローン工場(工場と言ってもどこかの地下室のようなところ)では3Dプリンターで部品を作り、1台7万円程度だそうです。今年6月にドローン専門部隊を作り、100万台の製造を目指すというが、現場の兵士たちはそれでも足りない、ドローンが多い方が戦争に勝つのだといっています。一方ロシアでもこの2年間でドローンの製造台数が17倍に増えたとのこと。
 
 そもそもドローン自体、もともと軍事利用を目的として開発が始まったものだそうです。「ドローン(Drone)」とは「雄の蜂」を意味しますが、これも一説によると、イギリスの無人飛行機「Queen Bee」に対抗して名付けられた名称だといわれています。1940年代アメリカが開発した爆弾を搭載したドローン「TDR-1」は機首にテレビカメラが付けられ、遠隔操作ができたそうですが、技術的な課題や費用対効果などから実用には至らなかったものの、その後もドローンの軍事開発は続きました。1970年代ごろからは偵察用途での開発が進み、1990年代には攻撃機が実戦に投入されます。2001年にはアルカイダの幹部に向け、無人攻撃機「プレデター」から対戦車ミサイル「ヘルファイア」を発射。これが世界初のドローンによる攻撃だといわれています。
無人攻撃機プレデター
同TBS「科学が変えた戦争」では、19歳で軍隊に入り、アメリカの基地で働く男性をインタビュー。彼の任務委は、スロットルレバーとジョイススティックで1万キロも離れたイラクやアフガニスタンに飛ばしているドローンを操縦し、カメラでとらえた映像を10台ほどのモニターで人物を監視し、命令があれば攻撃すること。彼は4年半の間、4325件の攻撃を行い、殺害した敵の数は1626人。その間徐々に心を病んでいき、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、自殺しかけたこともあるという。彼はモニター越しに攻撃した人間が負傷してのたうち回っている姿や、ある家を攻撃した際、その家に駆けこんできた子供が巻き込まれて死んだ姿を目の当たりにしていた。

 攻撃用ドローンには、爆弾を投下するだけはなく、爆弾を積んで対象物に突っ込む自爆型ドローンもあります。太平洋戦争末期、「特攻隊」では多くの日本の若者が海軍の戦闘機「零戦」に乗り、アメリカ軍の艦艇へと体当たりして死んでいきました。しかし、今やわずか6機のドローンでロシア軍艦を撃沈。しかも、ドローンが自爆した際にカメラの映像は途切れるため、敵が死ぬ瞬間を見ることもありません。TBS「科学が変えた戦争」で、ゲーム用ゴーグルを付け、コントローラーでドローンを操るウクライナのドローン部隊の隊長は、敵を殺すときの気持ちについて聞かれると「嬉しいとか悲しいとかという感情はない。強い感情がある訳ではない。ドローンがあれば、ほとんどの人は標的を攻撃することにためらいも感じないだろう」と話していました。

 現在は人間が最終的に攻撃の判断をしていますが、人の指示を受けることなく、人工知能(AI)を駆使して自ら標的を選択し、攻撃するロボット兵器のことを「自律型致死兵器システム(LAWS)」と呼びます。イスラエルが開発したAIドローン兵器は、相手機に敵意があるかどうかを判断して自ら攻撃するとのこと。2021年6月、リビアの内戦で軍用ドローンが、人間から制御されない状態で攻撃をした可能性があることが、国連の安全保障理事会の専門家パネルによる報告書で指摘されていたことが分かり、AIを用いて、自動的に相手を攻撃する兵器が戦場で用いられたとしたら、世界初のケースになるとみられています。

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ戦争、2023年10月に始まった2023年パレスチナ・イスラエル戦争、どちらも終わる気配が一向に見えません。また、人を殺すのが戦争であることも人類史上一向に変わってはいません。一体いつになったらこの地球上から戦争がなくなるのでしょうか?



戦争が起きてほしくない。
戦争は、自国、敵国の差なく、ただ若い兵士と無辜の民を傷つけ殺す。
なぜ戦争がなくならないのか。
なぜ戦争を起こそうとする人間がいるのか。
戦争で利益を得ることに倫理的に耐えられる人間がいるのか。
今も世界のあちらこちらで子供の上に爆弾が落とされている。
なぜ私たちは止められないのか。

坂本龍一
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
イスラエルが世界で初めて、戦闘でAI制御の自律型ドローン群を使用していた可能性
リビアで使用された自律型AI兵器

2024年8月26日月曜日

【第193回】新たな麻雀ブーム?②

 ~ IQも上がる麻雀の教育的効果とは? ~

Mリーガーの女子プロが松実高等学園健康麻雀部を訪問
埼玉県春日部市にあるフリースクール「松実高等学園」の部活動「健康麻雀部」が、新聞やテレビで取り上げられました。孤独感を抱える生徒たちのコミュニケーションツールとして好影響をもたらせているとこのこと。顧問の斎藤友昭氏は「麻雀は一人一人が他者とのつながりを深め、協調する力を身に付けることができるボードゲーム」と言っています。部員たちは地域のデーサービスなどにも出張し、高齢者の方々と麻雀交流会を行っており、部活から地域、地域からより社会へと飛び出していけるようになったそうです。また、この学校では今年度から健康麻雀を授業に取り入れたそうです。

 日本健康麻将協会事務局長・理事の戸構亮氏は「子どもがマージャンを打つことには大きく2つのメリットがある。1つは子どもの社会性が育つこと。麻雀は運の要素も大きく、どれだけ自分が頑張っても勝てないことがありますが、対局が終わるまでは打ち続けなくてはいけません。自分がどう振る舞うべきかといった社会マナーを学べます。2つ目は多世代間交流ができること。世の中にはさまざまなゲームや競技がありますが、年齢や性別の制限があるものも少なくありません。麻雀は小学生が大人に圧勝することもある特異な競技のため、多世代が同じ土俵で競い合えます」と述べます。

 横浜市立大学脳神経外科学教室に所属する医師であり、自身も麻雀のプロ競技者である東島威史氏は、ニューロンの子供麻雀教室に通う子供たちを対象にIQ検査や性格検査を行い、麻雀が脳に及ぼす影響について研究し、論文を発表しました。その論文によると、参加者の初回のIQ平均値は106.05でしたが、1年後には113.75に上昇。その他の言語理解指標(VCI)は100.6から106.75、処理速度指標(PSI)も108.05から119.05まで上がったとのこと。「実は言語理解は座学よりも生きたコミュニケーションで伸びるといわれています。その点、マージャンはさまざまな年齢層の他者とコミュニケーションを取りますから、上昇したと考えられます。また、処理速度は集中力の向上に加えて、目で情報をつかみ、手と思考を連動していく過程で強化されたと考えられます」と分析。

また、麻雀は将棋や囲碁・チェスと違って、牌のすべてが見えない「不完全情報ゲーム」であることを指摘しています。だから、「完全情報ゲームでは実力差のある人に勝つのは難しく、異なるレベルの者同士が真剣勝負をすることもできません。しかし、麻雀は運の要素も大きいため、知識と経験だけでは勝てないのです。そのため異なるレベルの者同士が楽しめ、小学生と大人、初心者とプロが真剣勝負できるのが麻雀であり、そういったコミュニケーションツールとしての有用さが言語能力の向上に役立ったと考えています」と。また、不完全情報ゲームだからこそ「常に相手がどんな牌を持っているのか、どんな役で上がろうとしているのか、想像力を働かせないと勝てませんこの過程が情報処理を非常に複雑にします。実は、私たちが生きている社会も多人数参加型の不完全情報ゲームそのもの。複雑で先が読めない社会で、最適な正解を見つけるのは非常に難解です。多人数参加型の不完全情報ゲームそのものである社会を生き抜く力も鍛えられると感じています」と述べています。

 麻雀の上達には、次のようなことが必要になります。①アガりの形(役:ヤク)を覚える ②役によって異なる点数(翻:ハン)を覚える ③形による点数(符:フ)を覚える ④翻と符とをかけわせた点数計算表を覚える ⑤確率と統計に基づき効率的にアガるための技術(牌効率)を学ぶ ⑥自分の捨てた牌で他者をアガらせてしまう(振り込む)ことを回避するために相手の手の内を想像したり、危険な牌と安全な牌の見分けたりする技術を学ぶ ⑦局面によって強気で勝負するのか、自分のアガりを諦めるのか?を判断する力をつける(局収支による押し引き)、さらに⑧人の癖や表情・仕草を読み取る「人読み」。これらを単に覚えたり学んだりするだけではなく、実践できるように練習しなければなりません。これが「麻雀は非常に奥が深い知的ゲーム」と言われる所以なのです。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
1年間の知能指数の変化

2024年7月27日土曜日

【第192回】新たな麻雀ブーム?①

 

 頭脳スポーツとしての麻雀 ~

なかよし麻雀セット
今年、講談社の少女漫画誌「なかよし」2月号で、カード型の麻雀セットが付録になったことが話題となりました。今年1/6~3/23にTBSで放映されたテレビアニメ「ぽんのみち」(全12話)に先駆け、同誌では昨年10月~今年4月までマンガ掲載をしていました。広島県尾道市の元雀荘を遊び場にする女子高生たちの日常を描いたものです。新たな麻雀ブームになっているようです。
なかよし_ぽんのみち
「レジャー白書2023」では、いわゆる雀荘に通う麻雀人口が、ピーク時(1982)2140万人の比べものにはなりませんが、2021年450万人から22年は500万人に増加したとのこと。コロナの影響で「天鳳」や「雀魂(じゃんたま)」などの麻雀アプリゲームが急速に流行り、天鳳の登録者数は現在700万人近く、雀魂は昨年6月1000万人を突破。その影響か、早稲田大や慶応大など首都圏17大学の麻雀部・サークルが競った新歓イベント「皐月祭」は250人が参加。コロナ前の100人ほどから大幅に増えたとのこと。各大学で部員が増え、東京都市大では部員がこの2年で5人から約120人に急増したそうです。

 これまで麻雀と言うと、紫煙が立ち込める雀荘で行う不健康・不健全な賭けマージャンのイメージでしたが、
最近では、「頭脳スポーツ」として人気が高まっているようです。 この新たな麻雀ブームの背景には、競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ「Mリーグ」の誕生があります。麻雀のプロスポーツ化を目的とし、2018年7月に発足。運営は一般社団法人Mリーグ機構。初代チェアマンにサイバーエージェント社長の藤田晋氏、最高顧問にJリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏が就任しました。2023-24シーズンに参加するチームは9チーム、「1チーム4名構成」「男女混合」がルール化されています。チームの優勝賞金は5000万円、準優勝2000万円、3位1000万円、個人賞もあります。Mリーグに参戦する選手を「Mリーガー」と呼ばれ、俳優の萩原聖人氏もその一人ですし、アイドル的な女流プロ雀士も誕生しています。このMリーガーが人気を博し、子供たちの憧れの的になっているようです。全試合の様子はインターネットテレビ局AbemaTVで配信されてます。その影響か、最近では一般の大人の麻雀も、「賭けない・飲まない・吸わない『健康マージャン』」が流行っており、Mリーグのルールを採用した競技系のノーレート(賭けない)麻雀店も若い人には人気のようです。

 最近では小中高生の間でも流行っており、このGWではいくつかのTV局のニュースなどで取り上げられたり、新聞や雑誌にも掲載されたりしました。また、昨年8月朝日新聞と子ども向け雑誌「コロコロコミック」などが協力した「コロコロカップ争奪!Mリーグ夏休み小学生麻雀大会」では、それぞれ32名の参加枠に対し、大阪大会にはおよそ100名、東京大会にはおよそ140名の応募があったとのこと。優勝は、東京は小3、大阪は小2、どちらも女子だったそうです。

私も教育的関心から、子供麻雀教室に行ってみました。「ニューロン麻雀スクール大井町校」で、イトーヨーカドー6階にあり、12卓もある教室です。代表理事で設立者の池谷雄一氏は、認定心理士の資格を持ち、全国に直営校15校、提携157校、内子供教室13校を展開。日本初の大学公認麻雀部・文教大学競技麻雀研究会に入会し、世界麻雀選手権2002個人三位の実績を持っています。池谷氏とお話し、教育論では同感するところが多々あり、1日ボランティアとして子供麻雀教室のお手伝いをしてみました。日曜日の10:30~15:00。開店前には行列が出来、回転同時に全席が小学生~高校生で埋まりました。中には5歳の子もいますし、男女比もほぼ半々。小さい子は自分の番になると「○〇ちゃんの番だよ」と声を掛けたり、質問に答えたりとなかなか手がかかりましたが、小学高学年以上になると大人顔負けの打ち方をします。やはりMリーガーを目指しているも子もいるようです。

 では、麻雀にどのような教育効果があるのでしょうか?次回考えてみたいと思います。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
Mリーグポスター
Mリーグ試合風景

2024年5月27日月曜日

【第191回】ロボカップジュニア関東ブロック20周年記念OB・OG会

 

~ 人生の転機となった思い出を大いに語り合った一日 ~

関東20周年OB会2024_全体写真
4/28(日)日本青年館ホテルにて、「ロボカップジュニア関東ブロック20周年記念OB・OG会」が開催され、ロボカップジュニアのOB・OG、関東ブロック運営の功労者、保護者など60余余が参加しました。

 私とロボカップジュニアの出会いは2002年に遡ります。日本科学未来館7階の小さな会議室で関東最初のサッカー競技会が行われ、Truth生の一人が参加、池田と私が関東初の審判を務めました。そして、04年3月日本科学未来館での関東ブロック大会の実行委員長の任命を受け、全体を統括運営。同年9月、現産技高専名誉教授の中西先生や井上先生の多大なご協力をいただき、「ロボカップジュ二アジャパン関東ブロック運営委員会」が組織され、「公平かつ公正な運営」「教育的観点を大切にする運営」をスローガンに初代委員長を拝命しました。05年5月には日本科学未来館でのロボカップジュ二ア日本大会を運営しました。

私が委員長を3年務めた後、産技高専の黒木教授を始め数名の方々が引き継いで下さり、近年は産技高専の富永教授が2011年~22年の長期にわたり、東東京ノード長と兼務しながら務めてくださいました。23年に産技高専OBでTruth講師も務めてくれた宮下さんが委員長に就任。20才代ならではの新しい発想で関東ブロックの未来の基礎を作ってくれています。その一環として、今回のOB・OG会を企画してくれたのです。この企画にはTruthのOBで講師も務めた名村さんや嶋本さんも加わり、皆社会人として忙しい日々の中奮闘してくれ、実現に至りました。

初期の頃からサッカーに参加していた「FC日吉」のメンバーや高専OBを始め、ジャパンオープンを共にしたり、ドイツ・ブレーメン(2006)やアメリカ・アトランタ(07)、シンガポール(10)、トルコ・イスタンブール(11)、メキシコ・メキシコシティ(12)、オランダ・アイントホーフェン(13)、ブラジル・ジョアソペッソア(14)などの世界大会、タイ・バンコク(17)、日本・愛知(21)のアジアパシフィックに共に参加した多くのOB・OGと再会し、楽しい思い出話をすることができました。世界大会で優勝した世界チャンピオンも何人も来てくれました。多くは社会人になり、自分の専門性を活かしてそれぞれの分野で活躍している様子で、その姿に頼もしさを感じました。まだ大学生や院生のOB・OGもいましたが、自分の進むべき進路を目指し研究に勤しんでいるようです。また、会の最中に第一子が誕生したとの知らせが入り、急遽病院に向かったOBもいました。
 
 企画としては、この20年間撮りためたノード大会・ブロック大会・ジャパンオープン・世界大会の写真をスクリーンに流したり、ジャパンオープンや世界大会の記念Tシャツを飾ったりしましたが、一番盛り上がったのは「ロボカップジュニア歴史テスト」。ジャパンオープンや世界大会にまつわる問題や競技ルールの歴史について問う10問が出題されました。それぞれがスマホで解答するので、即座に集計結果が発表されました。優勝は、2010年ダンスからスタートし、その後産技高専のロボカップ研究部部長を務め、レスキューで世界大会やアジアパシフィックで活躍した、Truth卒業生で講師も務めてくれた小林さんでした。ロボカップジュニアとTruthの生き字引の実力を発揮しての優勝でした。

 私はロボカップジュニアに参加することの意義として、「〇〇年のジャパンオープンに出たよ」「〇〇年の世界大会に出たよ」と言うだけで、その大会に参加した全員とつながることができる、すなわち、全国や世界に膨大な人脈を作ることができることを挙げています。まさに青春時代に、苦楽を共にしたり、お互い競い合ったりした同士であり、競技・ロボット・プログラミングといった共通の話題を有する同世代人や先輩後輩でもあります。これは他ではめったに得られない人生のおける貴重な財産ではないでしょうか。Truthに通う皆がこの素敵な世界に仲間入りできるよう、指導に邁進しなければと強く思い直す機会でもありました。


【参考】ロボカップジュニア初期について (写真のリンクが外れておりますがご容赦ください)
    https://truth-shisen.blogspot.com/2008/
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
関東20周年OB会2024_関東ブロックを立ち上げた産技高専・中西名誉教授の乾杯の音頭でスタート
関東20周年OB会_ロボカッパーならわかる!ロボカップジュニア歴史テスト
関東20周年OB会_現関東ブロック長が関東ブロック大会の歴史と現状を語る
関東20周年OB会2024_Truthで指導してくれたOBたちと
関東20周年OB会_二次会も大盛況!

2024年4月27日土曜日

【第190回】ボードゲームの教育的効果

~ 楽しいからこそ伸ばせる子供の能力 ~

協力ゲーム 「ゾンビキッズ」
リトル・ダヴィンチ理数教室では、様々な算数ゲームを取り入れていますが、「ロボットタートル」や「コリドール」などのボードゲームも行っています。練馬校のフリースクールi-schoolでも「インカの黄金」や「街コロ」「カタン」など、たくさんのボードゲームを用意しています。

戦略性や推理性などから大人もはまるボードゲームですが、コロナ禍の巣ごもりによってさらに人気が高まり、今、日本でちょっとしたブームになっています。10年前は1万人程度だったボードゲーム愛好家の数は、5年前に10万人、そして2022年には27万人にまで膨れ上がったと言われています。東京都でボードゲームを遊べるカフェやプレイスペースは現在確認できるだけ130点を超えているそうです。

 矢野経済研究所は、日本ではボードゲームはコロナ禍のステイホーム需要による伸びは+17%にとどまり、その後は微減傾向となっていると指摘していますが、市場調査会社SDKI Inc.(本社:渋谷区)は、昨年2024年と2036年の予測期間を対象とした世界規模の「ボードゲーム市場」に関する調査を実施し、ボードゲーム市場規模は 2023 年に約 93億米ドルと記録され、2036 年までに市場の収益は約228.9億米ドルに達すると予測しています。さらに、市場は予測期間中に最大 10.67% の CAGR (年平均成長率)で成長する態勢が整っているとしています。
 
 SDKI 市場調査分析によると、市場は教育的価値の増加により大幅に成長すると予想されています。多くのボードゲームは教育的であり、批判的思考、問題解決、戦略的スキルを促進する効果があるため、貴重な学習ツールであると考える親や教育者にとって魅力的であると。また、ボードゲームをプレイすることは、論理的思考の向上と言語作業記憶の向上に直接関係しており、言語スキルや感情スキルなどの社会スキルを向上させることが証明されていると分析しています。日本ボードゲーム教育協会は、「ボードゲームの活用が子どもの豊かな学びた、につながる」と考え、ボードゲームが持つ「学びの要素」について研究しています。その中で、子どもがボードゲームで遊ぶことによって身につく力には、「論理的思考力(システム思考・情報処理力等)」「コミュニケーション能力(リーダーシップ・共感力等)」「創造力(発想力・想像力等)」の3つがあると考えています。実際、最近では、勝敗を重視するのではなく、コミュニケーション型や協力型のゲームが増えてきています。

 ボードゲームやカードゲームなどコンピューターを使わずに、相手の顔を見ながら遊ぶゲームを総称して「アナログゲーム」と呼ばれています。私が師事しているアナログゲーム療育アドバイザーの松本太一氏(東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業)は、発達心理学者ジャン・ピアジェの「認知発達段階論」や心理学のモーツァルトと言われたレフ・ヴィゴツキーの「最近接発達領域」などの理論を基にゲームの選定や指導の方法を説いています。この二人の心理学者は、Truthの教育理念に深くかかわる心理学者です。

ピアジェの提唱する発達段階は、①0歳~2歳:感覚運動期(五感の刺激を求め認知の枠組みの同化・調節を繰り返す) ②2歳~7歳:前操作期(物事を自分のイメージを使って区別・認識できるようになる) ③7歳~11歳:具体的操作期(論理的思考が発達し、他者の立場に立って行動できるようになる) ④11歳~:形式的操作期‘(知識・経験を応用し、結果を予測して行動や発言ができるようになる)の4段階。小学生に当たる③では、「他者視点の獲得」を重視しており、現実の人間関係で他者視点を得るのは難しいが、確固たる枠組みのゲームの中で繰り返し成功体験を積み、他者と関わる自信につなげることの大切さを挙げています。

また、「最近接発達領域」とは、「子どもが自力で問題解決できる現時点での発達水準と、他者からの援助や協同により解決可能となる、より高度な潜在的発達水準のずれの範囲」を意味します。要するに、「一人ではできないけれど、誰かと一緒ならできること」です。この領域に当たる課題であれば、子供は意欲的に課題に取り組み、発達すると説きます。

 最近保護者の方から、ボードゲームをやらせたいけれども一人っ子なのでできない、兄弟姉妹と年齢が離れているのでできない、といった声を時々聞きます。アルゴ大会やトリンカ大会といった算数ゲームのイベントはあるのですが、他のボードゲームができる機会を作れればと思っています。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2024年3月24日日曜日

【第189回】AIとお友達になれるか?

 ~ 問われるAI時代の人間の尊厳 ~

人間が話すような自然な文章を生成できるChatGPTなどの進歩で、「AIと友達になる」という試みが始まっています。1月、来場者が人気コミック・アニメ「邪神ちゃんドロップキック」のキャラクターと、画面越しの会話を楽しむというNTTドコモの技術展がありました。「邪神ちゃんロイド」と名付けられた3Dモデルに話しかけると、音声認識AIで質問を読み込んだ対話型AIが、「まるで邪神ちゃんが言いそうなせりふ」を生成。アニメの音源で学習した音声合成AIを使って、せりふをしゃべる。邪神ちゃんロイドNは、早ければ3月までにドコモが手がけるメタバース「MetaMe(メタミー)」に登場するとのこと。国際電気通信基礎技術研究所の高橋英之・専任研究員は、映像を見た脳の働きを機能的磁気共鳴画像法で調べる実験を通して、「私たちが人間に対して感じる心と、AIやロボットに対して感じる心は、脳のレベルでは大きな差がないのかも知れません」と述べ、人間がAIと友達になれる可能性を示唆しています。一方、先端科学技術のガバナンスに詳しい川村仁子・立命館大教授は、今後は人間社会の仕組みを決めるプロセスにAIの影響が強まる可能性があるため、人間の尊厳に関わることも想定した議論を始めるべきだと警鐘を鳴らしています。人間がAIとどのような関係を結べばいいか?-いよいよ現実的な課題となってきたように感じます。
邪神ちゃんロイドN
「白熱教室」で日本でも有名になった、ハーバード大学政治学教授マイケル・サンデル氏は、「真の問題はAIによって、私たちが現実と仮想の区別を失うかどうかだ。手のひらの中の画面が人間関係やコミュニケーションの中心になっていると、人々のつながりは単にバーチャルなものだと思い込みがちだ。だが実際は、人間であることの意味は生身の現実の人間の存在にある。仮想の存在ではなく、今ここにいる人間と一緒にいて、相手を思いやり、コミュニケーションをとるということだ。実際の友人や祖父母とそのアバターの違いがわからなくなるとすれば、私には人間の真正性(本物であること)が失われるように思える。これは人間性の根幹にかかわる問題だ。だが私たちはこの区別を失うかもしれない。AIが突きつけるこの問いは、平等や民主主義といった価値観をめぐる議論よりも重要なテーマだ」と指摘します。

 最近では、まるで本物の人物と見まがうほどリアルな、生成AIを使ったフェイク動画が大きな問題となっています。政治的な目的で、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマなどの有名人を使ったフェイク動画が作られ、話題となりました。日本でも昨年11月、岸田総理のフェイク動画が拡散されました。一方で、日本の生成AI技術を手がけるスタートアップ企業「オルツ」では、本人の容姿や声だけでなく、答えの内容も似ている、米倉社長始め社員全員のデジタル・クローンを作り、クローンの労働にも賃金を支払っているとのこと。「僕らのクローンは、本人といかに一致しているかというところに焦点をあてています。より人間らしいクローンを作るためには、それが必要なのです」と述べます。デジタルの世界で、人間は永久に生き続け、死後も生きている時の本人と変わらぬ表情で、変わらぬ口調で、その人らしい言葉を発し続けていくことも、かなり現実味を帯びてきたように感じます。

その一方、米倉社長は「物事を決める権限を持っているのは人間で、クローンは一切の権限を持っていない。常に自分のために働くAIというものが何なのかを選別していくことが今後の人間に必要なことだと思います」とも語っています。サンデル教授も、「私たちが発明したはずの道具である技術が、私たち自身や人間であることの意味を変え始めたように感じられることがある。だが私たちの生活や未来は自分たち次第だということを忘れないでほしい。技術を制御できなくなるのは、我々が手放したときだけだ。人間の価値ある目的を達成するために技術をどのように使うべきか』という命題は、どんなに賢い機械も私たちに代わって決めてくれることはないだろう」と。

あくまで人間の主体性と責任が私たち人類の進んでいく方向を決めるのだということを、今生きている私たちが強く意識して、身の周りに急速に増えていくAIと付き合っていく必要があることを実感します。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2024年2月27日火曜日

【第188回】国際的学力調査PISA2022の結果

 ~ 日本はトップレベルに!しかし、その実態は…? ~

昨年12月初旬に、国際機関「経済協力開発機構」(OECD)が3年に1度行う「OECD生徒の学習到達度調査PISA(Programme for International Student Assessment)」の結果が発表されました。PISAは、世界各国の15歳を対象とし、単純に知識量を問うのではなく、学びと実生活を結びつけた思考力や読解力などを問うのが特徴。3分野に分かれています。

22 年調査では、数学的リテラシーと読解力において、生徒の解答結果に応じて出題内容が変わる「多段階適応型テスト(Multi Stage Adaptive Testing : MSAT)」手法が導入されました。これにより、生徒の能力をより高い精度で測ることができ、生徒の能力の高低差についての実態が把握しやすくなります。また、3分野以外にも、革新分野としてクリエイティブ・シンキング調査が新たに導入されました。25年にはデジタル社会での学習能力調査も行われる予定です。この革新分野について、日本では18年以降の参加を見送っています。

日本は「読解力」が前回の15位から3位、「数学的リテラシー」も6位から5位、「科学的リテラシー」も5位から2位へと浮上。3分野すべてが世界トップレベルでした。また、前回3分野ともトップだった北京・上海・江蘇省・浙江リージョンに代わり、シンガポールがすべてトップとなりました。
PISAは前々回15年調査からコンピューターで出題・解答する形式になり、前々回、前回と読解力の順位が落ち、要因の一つに端末操作に日本の生徒が不慣れだった点が指摘されました。その後、政府のGIGAスクール構想で端末が1人1台になり、文部科学省は、端末を使い慣れたことも順位を押し上げた要因の一つとみています。実際、授業でのICT機器の活用調査について、18年の時点で日本はOECD加盟国で最下位の利用率でしたが、22年調査ではOECD平均を上回り5位まで上昇しています。また、コロナによる休校期間が他国より短かったことも影響した可能性があると言われています。

一方、PISAでは毎回、3分野のうち1分野を重点調査しており、今回は数学的リテラシーが対象となりました。日本は「数学的思考力の育成」の指標値が、OECD加盟国の中で下から2番目。数学の授業で日常生活と絡めた指導を受けておらず、数学を用いて生活で直面する課題を解決する自信も低い傾向が浮かびました。

また、通信制高校は対象外。テスト日に不登校などで欠席した生徒も受けていません。通信制高校の生徒は近年増えており、23年度の学校基本調査の速報値では、高校の全生徒数の1割近くを占めるまでになっています。また、高校の不登校の生徒は22年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」では約6万人で、2年前と比べて4割も増えています。PISAが、「学校への所属感」で生徒のウェルビーイング(幸福度)を測っているだけに、これらの生徒を除外した調査は、日本の高校生全体の実態をふまえていると言えるかどうか疑問だと、指摘する人もいます。なお、小・中学校における不登校児童生徒数は299,048人であり、前年度から54,108人(22.1%)増加し、過去最多。認定NPO法人「カタリバ」は、中学生の約15%に、授業不参加や「形だけ登校」といった「不登校傾向」があるという調査結果を発表しました。

 Truthも不登校児の問題に取り組むため、昨年10月フリースクールを飯田橋校で開校する予定でしたが、諸般の事情で開校できず、今年2/6に練馬校でフリースクール「i-school」(https://ischool-ta.jp/)を開校いたしました。できるだけ多くの子供たちに学びを届けたいと思います。周囲に不登校でお困りの方がいらしたら、ご紹介いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

2024年1月27日土曜日

【第187回】新年のご挨拶

 ~ 混迷する時代に生きる ~

2022年2月から続いているロシアによるウクライナ侵攻は収束を見せることもなく未だ続き、市民の死者は少なくとも10,058人(国連12/11時点)、世界各地に滞在しているウクライナ難民は634万300人(UNHCR1/3現在)達しています。また昨年10/7、パレスチナのガザ地区を支配するハマスによるイスラエルへの攻撃によってガザ側の武装勢力とイスラエルの武力紛争が勃発。パレスチナ自治区ガザ地区の保健省は1/13時点でパレスチナ側の死者数が2万3843人、負傷者が6万317人に上ったと明らかにし、1/11国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は、約100日間の戦争で1万人以上の子どもが殺されたと伝えています。毎日悲惨な戦場の映像が流されているせいでしょうか、教室では毎回の授業の初めに、「今日のテーマ」という自己紹介の時間を設けていますが、「もし、タイムマシンがあったらどんな時代に行ってみたい?」というテーマに対して、「戦争のない時代に行ってみたい」と答える子が多く見受けられました。また、混迷を極める情勢を象徴するように、正月のテレビの特番や新聞の特集では、毎年行われている新年の展望についての座談会や討論会などがほとんど見られませんでした。

 そして、元旦に能登半島地震が発生。続いて1/2羽田空港で日本航空が着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突して炎上。2024年は予期せぬ大災害と大事故で幕開けました。未だ地震が絶え間なく続いている中、徐々に明らかになってきた能登半島の被害は想像を絶するものです。地震のメカニズムについても検証が行われ、北岸の広い範囲で地盤の「隆起」が確認され、能登半島では陸域がおよそ4.4平方キロメートル拡大しているとのこと。専門家は「4メートルもの隆起はめったにないことで数千年に1回の現象だ」と述べています。
私は、日本で起きた2つの災害と事故を見て、ある疑問を持ちました。

ロシア・ウクライナ戦争では、「ドローンは現代戦の形を変えた」と言われています。戦地でドローンが果たす役割は、偵察や監視、攻撃まで実に幅広く、両国が大量のドローンを使用していることが報じられました。最近ではAIを搭載したドローン兵器や多数の自律型ドローンを制御する技術も実現されています。しかし、災害後の能登半島は道路が分断され、孤立している集落もあり、物資が届けられていない状況で、「なぜもっとドローンが使えないのか?」。その理由は、通信インフラの障害もあるかもしれませんが、1/2に国土交通省が能登半島全域の陸地を緊急用務空域に指定し、ドローンやラジコンなど無人航空機の飛行を原則禁止にしたことだそうです。捜索、救難活動のヘリコプターなどが飛行する可能性があるためと説明しています。これは、まだ自律型ドローンに求められている安全性への信頼を得ていないことを意味するのではないでしょうか?

羽田空港での事故原因調査は長期化しそうですが、ヒューマンエラーを含む複数要因が重なった疑いが浮上しています。管制官は通常、管制塔から滑走路の状況を目視し、無線で指示を出して復唱してもらうアナログな手法で離着陸を管理しているとのこと。事故が起きた滑走路と誘導路の境には、赤色のランプを備えた停止線灯も導入されているそうですが、これも人間による目視に頼っています。「画像認識AIが、自動運転車、セキュリティシステム、医療画像解析、物体検出と追跡、顔認証、農業など幅広く活用しているこの時代に、大惨事が起こりかねない空港に、なぜ画像認識AIが使われていないか?」。南紀白浜エアポート(和歌山県白浜町)は1/11、富士フイルムとNEC、日立製作所と組んで画像認識AIを使って障害物を自動で検知するシステムの実証実験を始めると発表しました。滑走路の飛行機の運行状況をリアルタイムで画像認識AIを使って監視し、異常があれば知らせるというシステムができるのには、まだ時間がかかりそうです。
能登半島地震発生から1週間後、 災害直後にドローンでの物資輸送は全国初とい

世界経済フォーラムが1/10に発表した調査報告書によると、リスク専門家らは今後2年間に世界的な危機を引き起こす可能性が最も高い要素として「異常気象」と「誤情報」を挙げました。生成AIを使ったフェイクニュースがさらに大きな問題となりそうです。
グローバルリスク 2024年版
発達はしているもののまだ現実の問題を解決するに至っていない技術、発達することによって逆に社会に対して悪影響を及ぼすことに利用されてしまう技術・・・。混迷する時代に生きる今の子供たちには、日々進歩する知識や技術を身につけ、さらに自分たちが取り巻く世界に侵入してくる新しい技術の正しい利用方法を模索し、現実の問題を解決する新しい技術を生み出す力が求められます。混迷する21世紀を逞しく生きるには、「学習するスキル(Learning Skill)」が重要となります。教えられるのではなく、自らの活動を通して自分の力で知識を獲得し構築する力を育てる―それがトゥルースの教育理念です。

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳