2023年4月27日木曜日

【第180回】14年ぶりに日本人宇宙飛行士誕生へ!①

 ~ 宇宙飛行士に求められる資質とは?  ~

皆様のご存じの通り、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が昨年13年ぶりに宇宙飛行士を募集し、1年近くの選抜を重ねて、世界銀行上級防災専門官の諏訪理さん(46歳)と日本赤十字社医療センター外科医師の米田あゆさん(28歳)が候補者に決まりました。2000倍以上の倍率を勝ち抜いた2人です。諏訪さんは最年長、米田さんは宇宙飛行士になれば日本人女性で3人目、最年少ということで話題になりました。今後、基礎訓練を経て宇宙飛行士に認定されますが、米国主導で進める有人月探査「アルテミス計画」(視線177回参照:https://truth-academy.co.jp/blog/article.html?page=37)で、日本人で初めて月面に降り立つ宇宙飛行士になるかもしれません。
諏訪さんと米田さん

今回の募集では、幅広い人材を募るため、これまで自然科学系の大学の卒業者に限ってきたが学歴を不問とし、応募は前回の4.3倍の4127人。書類選抜で2266人に。第0次選抜では英語能力に加え理系の知識などが試され205人に。第1次選抜では、プレゼンテーション試験・運用技量試験・資質特性検査が行われ、50名に。プレゼンテーション試験が加えられたことが話題になりましたが、運用技量試験では2×4ポッチのレゴブロックを6個使った問題が出題されました。図形認識力・構成力を問われるかなりの難問です。第2次選抜では、面接試験(英語、資質特性、プレゼンテーション)が行われ、10名に絞られました。最終選考となる第3次選抜は約3週間の資質特性検査・運用技量試験と約2日の面接試験(総合、英語、プレゼンテーション)が行われ、最終的に2名が決定しました。この選抜で過酷なのが「閉鎖環境施設」を使った試験です。この試験では受験者が、ISSの実験棟を模した窓のない閉鎖施設で約1週間生活します。施設内には5台のモニターカメラが設置され、別室の審査員から24時間、一挙手一投足を監視されます。その環境下で受験者は、様々なミッションに挑まなければなりません。加えて、夜はきちんと眠れているかを腕時計型のモニターでチェックされます。

では、JAXAは宇宙飛行士にどんな資質を求めているのでしょうか?JAXAは次のように述べています。「宇宙飛行士は各国から集まった多国籍のメンバーと共同で活動を行っていきます。JAXAの宇宙飛行士は日本人としての誇りを持ち、メンバーシップの多様性を尊重しながら、協調してチームをミッション成功へと導いていくことが大切。そのための自己管理能力やコミュニケーション能力が求められます。また、これからスタートしていく宇宙探査ミッションは人類にとって未知の領域です。その環境に適応し、極限状況である宇宙でも柔軟かつ的確な判断や行動ができるかも、宇宙飛行士として重要な資質となります。さらに、宇宙飛行士の役割はミッションを完遂するだけではありません。宇宙飛行士はいわば人類の代表。そこで得た経験を世界中の人々に伝える表現力や発信力を発揮して、人類の発展に貢献することが求められます」と。

 そして、8つの求められる特性を以下のように示しています。①目的意識・達成意欲 ②任務・訓練に耐えうる健康状態 ③STEM分野の知識・論理的思考力・英語力・専門性 ④ミッション遂行力(自己管理、コミュニケーション、リーダーシップ等)・緊急事態対処能力 ⑤進歩/変化に対応するための心身両面の適応性や強靭性 ⑥日本人としての誇り・広範な素養と知識・国際チーム員としての態度 ⑦外部に伝える表現力・発信力 ⑧高いコンプライアンス意識。特に今回話題となったのは、「表現力・発信力」という新たに加わったことです。月探査に参加できる人間は限られています。その稀有な経験や成果をわかりやすく伝え、世界中の人々と共有できる能力は、現代の宇宙飛行士に欠かせないものです。この能力を見極めるために、第1次~第3次選抜では毎回プレゼンテーション試験が課されることになったのです。

 NHKは、3/30「選ばれるのは誰だ?密着!宇宙飛行士選抜試験」という番組で、第3次選抜の様子を放映しました。次回この様子をお知らせし、宇宙飛行士に求められる資質を具体的に考えてみたいと思います。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳