2022年11月27日日曜日

【第174回】強いチームはプレゼンテーションポスターも優秀

 ~ 強いロボットの秘訣はプレゼンポスターにあり! ~

「ロボカップジュニアの大会は、価値ある技術および教育課程の開発を伴うものであり、大会開催後には参加者と情報を共有することが共通の理解となっている」「情報の共有は教育の主導者であるロボカップジュニアの重要な使命である」とルールに明記され、情報共有の大切さを説き、その一環としてプレゼンテーションポスター(以下、プレゼンポスター)の提出が求められます。

8月に行われたNESTロボコンのプレゼンポスターの審査では、ロボカップジュニア・ジャパンオープン2022で使用された基準を採用しました。Abstract(基本・要点)・Method and Theory(開発手法,理論,戦略)・Data/Result/Discussion(科学的探求)・Photos/Graphics(写真図表等視覚表現)・Layout/Design(論理的,効果的な配置)の5つの観点です。審査員を務めてくれたのはロボカップジュニアOB(多くはTruth講師OB)なので、自分の経験を踏まえて後輩にアドバイスをしてくれました。

まず、何を書くべきか?「まんべんなくロボットについて説明をしましょう。ロボットの構造、使っているセンサー、どのように得点を取るのか、そのためにどんなプログラムを作ったのか、どんなパフォーマンスをするのかを書きましょう」。次に、理由の必要性。「まず、使用しているコントローラやセンサー/モーター等の種類と個数、用途といったロボット構成の『基本情報』の提示が必要です。そのうえで、『工夫』した箇所をその『理由』とあわせて説明することが重要です」「『なぜ』その動きをさせたのか、『なぜ』その構造を採用したのかなど、理由まで深堀りできると読み手に理解してもらえるポスターになります」。加えて、データの提示。「値を決める時に実験をしていると思いますので、記録を付けてどのように決定したかが表やグラフで分ると説得力があります。その結果どの程度改善したかが分ると有効性を裏付けられるので、さらに良いです」「ロボットの開発を進めるうえでデータ分析はとても重要なので、その検討結果や検討に基づく改良の有効性などをポスターに示すことを求めています。そういった内容を1枚のポスターの中に含めることは大変ですが、情報を他の人に伝えるために整理することは、自分たちの今後の活動にも役立ちますし、他の参加者にとってもレベル向上の助けになるので、是非ポスター作成にも力を入れてほしいです」。そして、強いチームはプレゼンポスターも優れている。

 ある審査員(世界大会出場経験者)はこう語りました。「プレゼンポスターは、自分のロボットをアピールできる貴重な場だと思っています。自分のロボットを自分の頭で考えて作り、自分のロボットのことを自分で理解して、相手に説明できるくらい分かっていると、とてもいいポスターになります。自分のロボットが分かっているということは、その強さと弱点が理解できているので、本番の競技も強くなります。プレゼンポスターを作るということは、自分のロボットを強くできるチャンスなのです」と。自分が作ったロボットなのに、そのロボットがどういう場面で故障し、それに対してどう対処したらいいか、分からない参加者も多いので、とても貴重なアドバイスです。

 これはプレゼンポスターについてではありませんが、競技チーフを務めてくれたOB(世界大会優勝経験者)は次のような言葉を後輩に贈ってくれました。「レスキューは極めて難しい競技だと思っています。サッカーのように対戦相手がいないので、誰に勝てばいいのか分からないのです。結局、目の前のフィールドという課題に対して何%のパフォーマンスを自分が追求するか?という問いです。もちろん100%がいいのですが、100%を取るためには、その一歩手前の95%ができているときに、残り5%のできていない部分に対して、いかに臆病になれるか?そこで勝負が決まります」。この言葉には、最後の1%が不完全でも、その1%を潰して完全なものにしていこうとする、開発者としての自らに対する厳しさを感じます。

 これらの言葉は大人になったからこそ言えるものかもしれませんが、彼らが小学生や中学生、高校生と成長するか過程で、何年も取り組んでいたロボカップジュニアの活動から得たものであり、当時紛れもなく彼ら自身が実践していたことなのです。

大切なのは「勝ち負け」ではなく、この活動を通して「いかに多くのことを学んだか」ということである。
― ロボカップジュニアのルールより ―

―トゥルース・アカデミー

トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳