進化するロボットと人間社会との関係①
~自律型飛行ロボット「クアッドコプター」~
今年1月にご紹介しましたが、テレビ番組「スーパープレゼンテーション」(NHK・Eテレ月曜夜11:00~)は世界が注目するアメリカのプレゼンイベント「TEDカンファレンス」の様子を放映しています。
2/11放映の「協力し合う飛行ロボット」で、インド生まれのロボット工学者・米ペンシルバニア大学工学応用科学研究科教授ヴィジェイ・クマールが見せた、ペンシルバニア大学ヴィージェイ・クーマー研究室で開発している飛行ロボットは圧巻でした。直径20㎝程で重さ50g、消費電力15Wのクワッドコプター(4個のモーターでプロペラを回転させる基本的なマルチコプター)は、とても小さく実に俊敏な動きをします。しかも、自律型のロボットです。小さいので自然災害で崩れた建物や核施設内にロボットを送り込んで状況の確認や放射能レベルのチェックができるようになります。GPSがないところでも、Kinectカメラ(自分のジェスチャーでゲームをするときに使うカメラ)とレーザーファインダーを搭載して、ロボットがどこにいて何を見ているかに基づいて座標を定義し、周辺環境の3次元地図を作れるとのことです。この機能により、見知らぬ建物の内部の地図を自律的に作成できるのです。
さらに驚くのは、20台のクワッドが編隊飛行を行うのですが、2次元でも3次元でも自由自在に編隊を組み、障害物があれば別の編隊に組み替えることもできることです。これは中央の1つのロボットが指令しているのではなく、お互いに他のロボットとの距離を監視し、この距離を許容範囲に保つというアルゴリズム(問題を解くための手順)を組み込み、分散的に行わせているのです。これは、アリが協力して餌を運ぶ時に明示的なコミュニケーションをしていないが、集団として暗黙の調整を行っていることにヒントを得たとのこと。
そればかりではなく協力した作業も行うことができます。このプレゼンテーションでは、2台のロボットが協力して物を運んだり、3台のロボットが3つの異なった構造物を同時に組み立てたりしていました。ロボットに設計図だけ渡せば、手順はロボットが自動的計算をして作業を行うそうです。また、9台のロボットが飛行しながら6種類の楽器を自動演奏するパフォーマンスも最後に披露しました。
教育者であるクマールは、「このようなロボットは小中高の教育を大きく変え得ると思います」と述べています。
今年6月、TEDGlobalのロボット・ラボで行われた、スイス連邦工科大教授ラファエロ・ダンドリーアの「クアッドコプターの驚くべき運動能力」にも目を見張りました。空中で静止したり、手で押すと跳ね返して来たり、重力を変えたかのような行動をしたりします。棒を立てたまま飛行したり、水の入ったワイングラスを乗せて水をこぼさずに飛行したり、投げたボールを正確に手元に跳ね返したりします。人間のスポーツと同じように、動きを反復練習させることによって、推測と制御のアルゴリズムを実行しているそうです。しかも、3台のロボットが協働して1つの網を持ち、ボールをキャッチして手元に跳ね返すという例を挙げ、協調行動ができることも証明しました。さらに、運動選手が怪我しても運動しているようにと、4つのプロペラのうち2つをはさみで切り、2つのプロペラで飛ぶことができるのには驚きました。最後に、Kinectカメラを使って複数のロボットを人間の動作と協調させて操るデモンストレーションも楽しむことができました。
ダンドリーアは最後にこう締めくくっています。「機械のスピードが私たちの生活にもたらす影響は何でしょう?
過去のあらゆる発明と創作と同様、それは人々の生活の改善にも使えるだろうし、誤った使い方もできるでしょう。私たちが直面しているのは、技術的ではなく、社会的な選択です。正しい選択をして未来の機械から最善のものを引き出しましょう。ちょうどスポーツが私たちの最善の部分を引き出すように」
トゥルース・アカデミー代表 中島 晃芳
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